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プレスリリース

2014年 9月16日
独立行政法人海洋研究開発機構

「地震・津波観測監視システム(DONET)」により得られる観測情報の
提供による実証実験の開始について
~地方自治体及び民間企業との共同研究による防災・減災に向けた取り組み~

1.概要

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」)は、和歌山県(知事 仁坂 吉伸)並びに三重県尾鷲市(市長 岩田 昭人)及び中部電力株式会社(代表取締役社長 社長執行役員 水野 明久)との間でそれぞれ協定を締結し(※1)、「地震・津波観測監視システム(DONET)」(※2)(以下「DONET」)により得られる観測情報の社会実装の可能性を探るパイロットプロジェクトを実施していますが、この度「DONET情報伝送システム」の初期版が完成し、DONETにより得られる観測情報を初めて地方自治体及び民間企業に提供する実証実験を開始しましたのでお知らせします。

この実証実験は、和歌山県並びに尾鷲市危機管理室及び中部電力株式会社それぞれにおいてDONET観測情報をリアルタイムでモニターし、その情報をもとに津波高さ及び津波到達時間などに関する情報を適切に活用することについて、共同で研究を進めるものです。

2.今後の予定

実証試験では、平成28年3月までの期間でDONETデータによる津波計算結果の精度を検証するとともに、さらなる性能の向上を進めていく予定です。

今後も引き続き、これらパイロットプロジェクトでの検討を積み重ね、和歌山県では和歌山県内での早期津波対策への活用が、また、三重県尾鷲市では地域住民の早期避難誘導への活用が、中部電力株式会社では管内発電所の安全対策の強化が進められる予定です。

JAMSTECではこれらプロジェクトによる成果等も活用し、他の自治体や企業等とも連携を進め、防災・減災への貢献の観点からDONETにより得られる観測情報の幅広い活用を目指す予定です。

<参考>期待される効果

南海トラフなど沖合で発生する地震については、DONETにより得られる観測情報を適切に活用することにより、従来に比べ地震・津波情報を早期に検知できる可能性があります。また、事前に多くの津波シミュレーションを実施しておき、DONETの連続データと比較することにより短時間での影響評価を行うことが可能となりました。実際に津波が到達するまでの間の迅速な防災・減災対策に有効であると考えます。

※1「地震・津波観測監視システム(DONET)」により得られる観測情報の利活用に関する和歌山県との協定(平成25年9月5日付締結)、「地震・津波観測監視システム(DONET)」により得られる観測情報の活用に関する三重県尾鷲市及び中部電力株式会社との協定(平成25年10月10日付締結)

※2「地震・津波観測監視システム(DONET:ドゥネット)」

三重県尾鷲市古江町の陸上局から、紀伊半島の沖合約125km先まで、総延長約250kmに渡る基幹ケーブルをループ状に敷設し、途中5箇所の拡張用分岐装置に、それぞれ4つの観測点が接続された稠密な地震・津波観測システム。各観測点は、地震計や津波を検知する水圧計等で構成された観測装置ユニットで、水深約1,900mから4,300mの深海底に設置されている。(現在、四国沖に同様のシステムを構築中。) 観測装置には海底ケーブルを介して陸上から電力が供給され、観測装置からは海底の地震動、水圧変動等のデータがケーブル内の光ファイバーを通じてリアルタイムで陸上局へ送られており、従来の観測システムではなし得なかった深海底における多点同時かつリアルタイムの観測を行っている。観測装置からのリアルタイムデータは、陸上局から専用回線を通じて海洋研究開発機構横浜研究所や防災科学技術研究所、気象庁に配信されている。

なお、DONET1については5月30日に障害が発生し、現在は5台のうち4台の拡張用分岐装置(16観測点)での観測を実施している。

図1

図1. 「DONET情報伝送システム」の全体構成

図2

図2. DONETの設置場所

独立行政法人海洋研究開発機構
(本研究について)
地震津波海域観測研究開発センター 企画調整グループ
 グループリーダー 満澤 巨彦
(報道担当)
広報部 報道課長 菊地 一成
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