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プレスリリース

2014年 11月 25日
独立行政法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第353次研究航海の開始について
~インド洋ベンガル湾掘削によるインドモンスーンのメカニズムの解明~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「インド洋ベンガル湾掘削によるインドモンスーンのメカニズムの解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が11月29日から開始されます。

本研究航海では、インド洋ベンガル湾において6地点を掘削し、コア試料の回収・分析を行うことでインドモンスーン発達の歴史を明らかにするため、日本から4名が参加するほか、米国、欧州、中国、韓国、オーストラリア、インドからも含め、計26名の研究者が参加する予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧州(18カ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

インド洋ベンガル湾掘削によるインドモンスーンのメカニズムの解明

1.日程(現地時間)

平成26年11月29日
シンガポールにて乗船(準備ができ次第出港)
ベンガル湾にて掘削
平成27年1月29日
シンガポールに入港

なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当研究分野
安藤卓人 北海道大学/大学院生(博士課程) 堆積学
臼井洋一 海洋研究開発機構/研究員 古地磁気学
浦本豪一郎 海洋研究開発機構/日本学術振興会特別研究員 堆積学
山本正伸 北海道大学/准教授 有機地球化学

3.研究の背景

モンスーンとは、日射量の季節変動が原因で、隣接する海と陸の温度コントラストが季節により変化し、それに伴って卓越風の風向が夏と冬で逆転する現象を指します。モンスーンは、各大陸に固有な地域的気象現象ですが、アジアモンスーンはその中でも最大規模のもので、世界の人口のおよそ6割が居住するアジア全域にその影響を及ぼし、これらの地域の水循環を支配しているほか、グローバルな気候へも影響を及ぼします。夏季モンスーンに伴う降水は、これらの地域の人々に恵みの雨をもたらしますが、その勢いが強すぎれば洪水を引き起こし、弱すぎれば干ばつを引き起こします。従って、アジアモンスーンをより良く理解することは、地球温暖化に伴う気候変動を予測し、洪水や干ばつに備える上でも重要と考えられます。

4.研究の概要・目的

本研究航海では、南アジアの降水に影響をもたらす南西季節風(インド夏季モンスーン)の発達の歴史を明らかにするため、インド洋の北東部に位置するベンガル湾において6つのサイト(図1)を掘削し、コア試料の採取を行います。ベンガル湾はインド夏季モンスーンによる降水の影響の中核地域であり、降水に伴う陸域の浸食、流出、そしてその結果生じる海洋環境の変化が海底堆積物に記録されています。本研究航海では、これらの堆積物を採取し分析することで、モンスーン変動の根本にある物理学的メカニズムを明らかにすることを目的としています。

これまでベンガル湾の南部ではいくつかのサイトにおいて科学掘削が行われていますが、インド夏季モンスーンによる降水の影響の中核地域であるベンガル湾北部での本格的な科学掘削は初めてとなります。

図1
図1 本航海の掘削予定地点。赤丸が優先掘削サイト、黄色が代替掘削サイト。
独立行政法人海洋研究開発機構
(報道担当)
広報部 報道課長 菊地 一成
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