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プレスリリース

2015年 3月 27日
独立行政法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第355次研究航海の開始について
~ヒマラヤ造山運動と南アジアにおけるモンスーンの相互作用の理解~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「ヒマラヤ造山運動と南アジアにおけるモンスーンの相互作用の理解」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が4月1日から開始されます。

本研究航海では、インド洋北部に位置するアラビア海北東部の3地点を掘削し、コア試料の回収・分析を行うことでヒマラヤ造山運動とアジアモンスーン発達の関連性を明らかにするため、日本から2名が参加するほか、米国、欧州、中国、韓国、オーストラリア、インド、ブラジルからも含め、計31名の研究者が参加する予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、日本、米国、欧州(18ヶ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

ヒマラヤ造山運動と南アジアにおけるモンスーンの相互作用の理解

1.日程(現地時間)

平成27年4月1日
コロンボ(スリランカ)にて乗船(数日の準備の後出港)
アラビア海にて掘削
平成27年5月31日
ムンバイ(インド)に入港

なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当研究分野
岩井雅夫 高知大学/教授 古生物学(珪藻化石)
鈴木健太 北海道大学/大学院生(修士課程) 堆積学者

3.研究の背景・目的

ヒマラヤ山脈の造山運動により発達してきたアジアモンスーンは、世界の人口のおよそ6割が居住するアジア全域にその影響を及ぼし、これらの地域の水循環を支配しているほか、グローバルな気候へも影響を及ぼします。そのため、アジアモンスーンの発達とそのメカニズムをより良く理解することは今後起こりうる気候現象の予測や理解につながります。国際深海科学掘削計画(IODP)では、これまでインド洋北部においてアジアモンスーンの発達をテーマとしていくつかの研究航海を行ってきました。本研究航海では、アラビア海北東部において3つのサイトを掘削し、コア試料の採取を行います。アラビア海全域には、ヒマラヤ山脈の発達・浸食に伴いインダス川から大量の土砂が供給され、乱泥流によって広域的に堆積することで世界有数の大規模な海底扇状地であるインダス海底扇状地が発達しています。

本研究航海の主な科学目標は、1)2300万年前以降に開始したヒマラヤ山脈の浸食がモンスーン増大のタイミングと対比できるかどうかを検証すること。2)およそ800万年前に起こった環境変化の規模と傾向を明らかにすること。そして、3)インダス海底扇状地堆積物の始まりの年代を決定することによりインド亜大陸のアジア大陸への衝突の時期を特定することです。また、この掘削航海で得られた結果を、先に行われた掘削航海(第346次研究航海:2013年7月 26日既報、第353次研究航海:2014年11月 25日既報、第354次研究航海:2015年1月23日既報)の結果と統合・比較することにより、アジアモンスーンの発達過程とそのメカニズムをより高精度で明らかにすることが期待されます。

図1
図1 本航海の掘削予定地点(赤丸)
表1 掘削予定地点の概要(掘削順)
掘削サイト 水深 掘削予定深度 掘削作業日数
IND-03C 3,630m 1,570m 29
IND-04A 3,622m 950m 14
IND-01A 3,461m 690m 9
独立行政法人海洋研究開発機構
(研究航海について)
研究推進部 研究推進第1課 梅津 慶太
(報道担当)
広報部 報道課長 菊地 一成
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