トップページ > プレスリリース > 詳細

プレスリリース

2015年 7月 24日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第356次研究航海の開始について
~過去5百万年間のインドネシア通過流と気候変動の歴史の解明~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「過去5百万年間のインドネシア通過流と気候変動の歴史の解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が8月1日から開始されます。

本研究航海では、オーストラリア西岸沖の6地点を掘削し、コア試料の回収・分析を行うことで過去5百万年間のインドネシア通過流の歴史とその気候変動との関連性を明らかにするため、日本から4名が参加するほか、米国、欧州、中国、オーストラリア、ブラジルからも含め、計29名の研究者が参加する予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、日本、米国、欧州(18ヶ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

過去5百万年間のインドネシア通過流と気候変動の歴史の解明

1.日程(現地時間)

平成27年8月1日
フリーマントル(オーストラリア)にて乗船(数日の準備の後出港)
オーストラリア西岸沖にて掘削
平成27年9月30日
ダーウィン(オーストラリア)に入港

なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当研究分野
石輪健樹 東京大学大気海洋研究所/大学院生(博士課程) 地質物理特性
岩谷北斗 香港大学/ポスドク研究員 堆積学
高柳栄子 東北大学大学院理学研究科/助教 無機地球化学
Resti Samyati Jatiningrum 秋田大学/大学院生(博士課程) 微古生物学(石灰質ナンノ化石)

3.研究の背景・目的

太平洋からインド洋へインドネシアの島々の間を流れる海流であるインドネシア通過流は、地球規模で起こる海洋循環の一部、すなわち赤道太平洋域からインド洋への熱輸送を担っており、インド洋はもとより世界的な気候の変動に影響を与えています(図1)。本研究航海では、インドネシア通過流の過去5百万年間の記録を得るため、オーストラリア西岸沖大陸棚の6つのサイトを掘削し、堆積物コア試料の採取を行います(図2表1)。

本研究航海の主な科学目的は、約5百万年前以降のインドネシア通過流やインド洋・太平洋暖気溜塊、そしてオーストラリア大陸西岸に沿って南方に流れるルーウィン海流の変動史を復元し、それらの変動に伴う熱帯〜亜熱帯域の気候及び海洋環境の変遷史を軌道周期スケールで明らかにすることです。これにより、東アジアモンスーンの形成に関連すると考えられているオーストラリアモンスーンの形成と発達史、オーストラリア大陸北西部における乾燥気候の始まりと発達史、及びオーストラリア西岸に分布するサンゴ礁の形成と発達史の解明が期待されます。また、過去の水深の変化などからオーストラリア北西部大陸棚海底の沈降パターンを読み取ることで、オーストラリアプレートの運動とマントル対流の関連性を明らかにすることも目的の一つです。

図1
図1 西太平洋地域における海流の分布。赤の矢印が暖流、青の矢印が寒流を示す。星印は本研究航海の掘削サイト。(IODP第356次研究航海科学計画書より一部改編)
図2
図2 本航海の掘削予定地点(赤丸)
表1 掘削予定地点の概要(掘削順)
掘削サイト 水深 掘削予定深度 掘削作業日数
NWS-6A 152m 330m 5
NWS-5A 214m 366m 6
NWS-4A 126m 1,055m 16
NWS-3A 88m 855m 13
NWS-2A 141m 530m 7
NWS-1A 146m 370m 5
国立研究開発法人海洋研究開発機構
(報道担当)
広報部 報道課長 松井 宏泰
お問い合わせフォーム