2017年 2月 7日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「南シナ海における大陸分裂モデルの検証」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が2月7日から開始されます。
日本列島や、台湾とフィリピン諸島の間に連なるルソン島弧は、大陸分裂によって形成され、大陸との間には日本海や南シナ海といった縁海が広がっています。こういった大陸分裂がなぜ、どのようにして起きるのかは、まだ明らかになっていません。この分裂プロセスの記録は、縁海の海底に残されています。この航海では南シナ海の地層を掘削して、論争中の2つの大陸分裂モデルのどちらが妥当であるかを検証します。
この研究航海には日本から3名が参加するほか、米国、中国、欧州、オーストラリア、韓国、インド、ブラジルから計64名の研究者が参加する予定です。
※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)
平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。平成15年(2003年)10月から平成25年まで実施された統合国際深海掘削計画(IODP:Integrated Ocean Drilling Program)の後継にあたるプロジェクト。
※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)
IODPの掘削に米国が提供するノンライザー掘削船。日本が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。
別紙
~南シナ海における大陸分裂モデルの検証~
1.日程(現地時間)
第367次研究航海
第368次研究航海
なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。
2.日本から参加する研究者(氏名50音順)
第367次研究航海
氏名 | 所属/役職 | 担当研究分野 |
---|---|---|
Kan-Hsi Hsiung | 海洋研究開発機構/研究員 | 堆積学 |
古澤 明輝 | 島根大学/大学院生(博士課程) | 古生物学(有孔虫) |
第368次研究航海
氏名 | 所属/役職 | 担当研究分野 |
---|---|---|
大園 宣明 | 山口大学/大学院生(修士課程) | 物理特性計測 |
3.研究の背景・目的
南シナ海はルソン島弧が約3200万年前に大陸から分裂してできた海盆が拡大していくことで形成された海です。日本海も日本列島が大陸から分裂することで形成されたものであり、大陸の分裂がなぜ、どのようなメカニズムで起こるのかを明らかにすることは、日本海と日本列島の形成史を理解するうえでも重要です。このような大陸分裂モデルとしては(1)地球深部からの高温マントルの上昇、(2)大陸地殻の薄化、の2つが提案されています。本研究航海では、南シナ海の大陸下部斜面から海盆域(図1)において、堆積層から基盤岩までを掘削採取します。もしも前者のモデルなら基盤岩として蛇紋岩(マントルが熱水変質した岩石)が、後者なら大陸地殻の岩石が採取されるはずです。それらの岩石の化学組成や年代などから大陸分裂プロセスやメカニズムが詳細に描かれることが期待されます。
(なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって掘削サイトを変更する場合があります。)
表1 本研究航海の掘削サイトの一覧(掘削順)
研究航海番号 | サイト名 | 水深 | 目標掘削深度 | 掘削作業予定日数 |
第367次 | SCSII-11A | 3,770m | 1,382m | 26.4 |
SCSII-8B | 3,811m | 1,566m | 26.3 | |
第368次 | SCSII-41A | 2,870m | 882m | 15.0 |
SCSII-9B | 3,880m | 1,670m | 27.2 |
*図1は下記より引用したものを改変