北海道大学低温科学研究所の三寺史夫教授らの研究グループは,水深約5,500mの深海におけるわずかな海底起伏が,実は海の表面の海流や水温前線をコントロールしている,という新たな海流形成メカニズムを発見しました。
2000年代になって,北海道の東方1,000㎞の沖合に黒潮を源とする海流(通称・磯口ジェット)が見出されました。温かい黒潮水を運ぶ磯口ジェットは,親潮による亜寒帯海水との間に強い水温前線を作るため,その周辺海域は好漁場となっています。またその変動は,北半球規模の気候変動を引き起こす要因であることも最近の研究でわかってきました。しかし,磯口ジェットがなぜ岸から1,000㎞も離れた海域に安定して存在するのか,その形成メカニズムは謎のままでした。
本研究では,従来見過ごされてきた,水深約5,500mの深海底における500m程度の低い緩やかな海底地形(北海道海膨(かいぼう))が,渦-地形相互作用を通して海洋表層の磯口ジェットと海面水温前線を驚くほど効率的に生み出すという,新たなメカニズムを発見しました。背の低い緩やかな海底地形は世界中の海のいたるところにあるため,中高緯度の様々な海で,今回発見した海流形成メカニズムが働いていることが予想されます。本研究を基礎にした海洋学,水産学,気候学の進展が期待されます。
なお,本研究成果は,2018年3月22日(木)公開の Nature Communications に掲載されました。
詳細は北海道大学のサイトをご覧下さい。