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2019年 1月18日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第379次研究航海の開始について
~アムンゼン海の氷床縁辺掘削で探る西南極氷床ダイナミクス~

国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「アムンゼン海における西南極氷床史-アムンゼン海湾入域掘削記録による西南極氷床の温暖化応答性の検証」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が1月18日から開始されます。

本研究航海では、南極の中で現在最も顕著な氷河の減少が見られる西南極氷床の縁辺部、アムンゼン海湾入域(図1)の大陸棚や大陸棚近傍海洋底を掘削します。西南極氷床の拡大・縮小によって形成された陸棚堆積物や不整合面の形成年代を明確にし、氷床縁辺海洋環境を復元することで、過去の温暖時期における気候・海洋状態と西南極氷床の消長との関連を解明することを目的としています。

この研究航海には日本、アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランド、中国、インド、韓国から計29名の研究者が乗船し、うち日本からは3名が参加予定です。

※1
国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)
平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。
※2
ジョイデス・レゾリューション号
IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。日本が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。
JOIDES Resolution©IODP

別紙

アムンゼン海における西南極氷床史
-アムンゼン海湾入域掘削記録による西南極氷床の温暖化応答性の検証-

Amundsen Sea West Antarctic Ice Sheet History:
Development and sensitivity of the West Antarctic Ice Sheet tested from drill
records of the Amundsen Sea Embayment

1.日程(現地時間)

 第379次研究航海

2019年 1月 18日
研究航海開始(首席研究者が乗船)
2019年 1月 19日
日本からの研究者がチリのプンタアレナスにて乗船(数日の準備の後出港)
アムンゼン海湾入域の大陸棚や大陸棚近傍海洋底において掘削
2019年 3月 20日
チリのプンタアレナスに入港

なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者(氏名50音順)

  • 名前
  • 所属/役職
  • 担当専門分野
  • 名前岩井 雅夫
  • 所属/役職高知大学/教授
  • 担当専門分野微古生物学(珪藻)
  • 名前堀川 恵司
  • 所属/役職富山大学/准教授
  • 担当専門分野堆積学
  • 名前山根 雅子
  • 所属/役職名古屋大学/研究機関研究員
  • 担当専門分野岩石物理特性

3.研究の背景・目的

西南極氷床は気候・海洋変動に極めて敏感で、過去に何度も崩壊した可能性が指摘されています。西南極氷床の氷が解けると世界中の海水準を4mほど押し上げる量に相当すると言われていますが、現在の科学的知見では西南極氷床がどうなっていくのか予測することはできません。近未来の温暖化とよく似た状況を地球は過去何度も経験していますが、その時西南極氷床に何が起きていたのか、実はそれもほとんど分かっていません。

本研究航海では、現在南極の中で最も顕著に氷河の減少が見られる西南極氷床の辺縁部、アムンゼン海湾入域をターゲットに掘削を行い、以下の課題に取り組み、過去2000万年間における西南極氷床の拡大・縮小過程と気候・海洋変動との関連性を明らかにします;

1) 二酸化炭素濃度が400ppmを超えた過去の温暖な時代の西南極氷床の応答は?
2) アムンゼン海湾入域の氷床変動は、全球氷床量や気温・海水温とどう対応するのか?
3) 温暖な周極深層水の大陸棚への流入と、氷床安定性との関係は?
4) 中期中新世以降の西南極氷床の大規模拡大時期や機構の他地域との差異は?
5) 本地域に氷床が初めて形成された時期は地殻変動と関係があるのか?

アムンゼン海湾入域において大陸棚を横断する測線で掘削が成功すれば、本地域における西南極氷床の拡大・縮小過程の詳細が明らかになり、隣接するロス海などとの比較により西南極氷床全体の様相・挙動が復元できると期待されます。また大陸棚斜面下の掘削では、氷床縁海洋環境を連続的に記録した堆積物から、大気・海洋と氷床の相互作用の解明が期待されます。

これまでも南極半島、ロス海、ウィルクスランド沖などの研究航海に日本人研究者が乗船し、調査を行ってきました。それら調査の結果を踏まえて、南極固有のオーバーディープした大陸棚地形(大陸棚外縁より大陸側の水深が深くなる大陸棚)が氷床の盛衰に寄与したとする「オーバーディープニング仮説」も提唱されており、本航海の結果に基づいて高精度年代モデルの構築や複数環境指標が適用され、同仮説の検証が進むことも期待されます。

図1

図1 本研究航海の掘削サイトの位置(赤丸)

表1 本研究航海の掘削サイト・孔の一覧(掘削順)
サイト・孔名 水深 目標掘削深度
ASSE-02C 576m 900m
ASSE-01C 612m 900m
ASSE-03B 578m 850m
ASSE-11A 585m 700m
ASRE-05B 3,720m 1,200m

(航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって掘削サイトを変更する場合があります。)

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
地球深部探査センター 科学支援部長 江口 暢久 
(報道担当)
広報部 報道課長 野口 剛
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