沖縄トラフ熱水活動域「ちきゅう」掘削孔を利用した潜航調査計画 in NT10-17

航海レポート

2010年9月15日

聖地巡礼

川口 慎介(JAMSTEC・プレカンブリアンエコシステムラボ)

NT10-17行動の3日目となる9/15は、伊是名海穴JADE熱水サイトで潜航調査を行いました。日本初の熱水域であるJADEサイトは、日本熱水研究者にとってはまさに「聖地」であり、一生のうちに一度は訪れておきたい熱水域ランキング第二位でした。ちなみに、現在のランキング第一位は「スケーリーフット」と「ハイパースライム」で有名な「かいれいフィールド」です。

ハイパードルフィン」が着底した地点は、泥にまみれた普通の海底でしたが、少し進んだところには、層状に重なった「硫黄クラスト」の大平原が広がっていました。海底面に露出しているだけでも白い大平原のようでしたから、その海底下での厚みや、沈降粒子に覆われた海底面部分までの広がりを考慮すると、硫黄クラストの規模は競技用50mプールに匹敵するほどではないかと推定されます。続いて斜面を登り、ブラックスモーカーベントで、316℃に達する高温熱水を採取しました。そびえ立つチムニーから熱水が噴出する様子は、沖縄トラフの熱水域の中でも随一の勇ましさでした。

「ボールが止まって見えた」
打撃の神様・川上哲治は、激しい練習の末にそんな境地に達したと言われています。熱水を採取する際には、チムニーなどの構造物が視界を遮るため噴出口の位置を特定することが困難なのですが、「ハイパードルフィン」の運航チームは、まるで熱水が止まって見えているかのように、ピンポイントで高温熱水の噴出口を探り当て、海水の混入しない純粋な熱水試料を見事に採取してくれています。「なつしま船員」「ハイパードルフィン運航チーム」「研究者」の三者、つまりは走・攻・守の三拍子が揃うからこそ、良い研究成果が出せるのです。


聖地に沈む夕陽(提供:寺沢 亮)