沖縄トラフ熱水活動域「ちきゅう」掘削孔を利用した潜航調査計画 in NT10-17

航海レポート

2010年9月14日

「ちきゅう」接近!

川口 慎介(JAMSTEC・プレカンブリアンエコシステムラボ)

なつしま」は伊平屋凹地において、NT10-17行動の潜航調査を開始しました。伊平屋凹地ではこれまでに、低温熱水の染み出しとシロウリガイなどの生物群集が確認されています。しかし、熱水域の花形である300℃に及ぶ高温熱水が噴出していないせいか、いまいち魅力が不足しており、数ある沖縄トラフの熱水サイトの中でも1,2を争う不人気調査熱水域(?)で、今回の調査も数年ぶりの探訪という状況です。

14日14時頃、「ちきゅう」の首席である高井さんから「なつしま」に無線が入りました。ここまでの「ちきゅう」による掘削の進行状況について、得意の滋賀弁でまくしたてるように報告してくれました。久々に話す高井さんは大変ご満悦の様子で、その声を聞くだけで今後の調査に大きな希望を持つことができました。
ちょうどその頃、「伊平屋北」熱水域を所用で離れた「ちきゅう」が、伊平屋凹地にいる「なつしま」に接近しており、勇壮なヤグラを顕示する姿をくっきりと見ることができました。実は、ボクにとってこれが初めての「ちきゅう」との遭遇で、噂には聞いていましたが、その巨大さには驚かされました。


「なつしま」に接近してきた「ちきゅう」(写真提供:宮崎 淳一)

「1人というにはあまりにも巨大すぎ、2人と数えては人口統計の辻褄が合わない!」アンドレ・ザ・ジャイアントの巨大さをこの名実況で表し、古舘伊知郎はスポーツ中継史にその名を刻みました。われわれNT10-17行動乗船研究者一同は、「ちきゅう」の数分の一の大きさしかない「なつしま」を活用して、「ちきゅう」に負けず劣らずの素晴らしい成果を得ることで、海底科学研究史にその名を刻まんと意気込んでいます。