知ろう!記者に発表した最新研究

2009年10月09日発表
地球深部探査船「ちきゅう」の研究航海の報告!
(航海期間:2009年9月-10月)

地球深部探査船「ちきゅう」の研究航海の結果のお知らせです!今回は、今年(2009年)の9月から10月にかけて行われた航海についてです。「ちきゅう」は和歌山県紀伊半島沖の海底にある盆地ぼんち・四国海盆かいぼんの一部をり進めました。

今回得られた大きな成果は、次の3つです。
(1)砂や石が別の場所から四国海盆に運ばれてきていたことがわかりました。
(2)海底下を流れる2種類の地下水を発見しました。
(3)基盤きばんの岩石のサンプル回収かいしゅうに成功しました。

「ちきゅう」のかつやくによって、巨大きょだい地震じしんを引き起こす場所の研究がぐんぐん進みます!

和歌山県紀伊半島沖のどこを掘ったの? 海洋プレートが大陸プレートの下にしずみこむ直前の場所を掘り進めました

地球の表面は何枚ものかたい岩の板におおわれています。これらはプレートと呼ばれます。プレートには2種類あって、人々がくらしている陸上のプレートを大陸プレート、海の下のプレートを海洋プレートといいます。これらのプレートはぶつかりあうと、海洋プレートが大陸プレートの下にしずみこみます。(参考:2009年5月29日の発表(ジュニア向け))プレートの境目さかいめでは巨大地震が起きる(震源しんげん)ため、研究者は目がはなせません。

今回の和歌山県紀伊半島沖でも、海洋プレートが大陸プレートの下にしずみこんでいます。この海洋プレートは現在もしずみ続け、そのスピードは1年で4cmくらいです。「ちきゅう」は、この海域にある海底の盆地・四国海盆の一部を掘り進めました(図1)。


図1:「ちきゅう」が掘った場所

掘った場所は、まさに海洋プレートが大陸プレートの下にしずみこむ直前です(図2)。つまり、ここを調べれば、大陸プレートから巨大な圧力あつりょくがかかる前の海洋プレートの状態じょうたいがわかります。これこそが、今回の航海の目的です。しずみこむ前の海洋プレートを知るために、世界中から26名の研究者が「ちきゅう」に乗りこみました。


図2:プレートの境目を横から見た図と「ちきゅう」が掘った場所

どんなことがわかったの? 砂や石が別の場所から四国海盆に運ばれていたことがわかったり、2種類の地下水を発見したりしました

図3:四国海盆に運ばれてきた砂や石

(1)四国海盆で火山性の砂や石が見つかりました。くわしく調べたところ、これらはおよそ800万年前に伊豆いず小笠原火山帯おがさわらかざんたいから運ばれてきたものだとわかりました(図3(a))。これは研究者にとって予想外の発見でした。実は、200kmもはなれた場所からこのような砂や石が運びこまれるとは思っていなかったのです。また、およそ1,400万年前には、日本列島(西南日本外帯せいなんにほんがいたい)からも砂や石が運ばれてきていたことがわかりました(図3(b))。



図4:異なる起源の地下水

(2)私たちが住む陸の下に地下水があるように、海底下の地層ちそうでも地下水が流れます。海底下の地層のサンプルを分析ぶんせきしたところ、古い地層と新しい地層で地下水を発見しました(図4)。さらに、この2カ所では地下水の成分がちがうことも明らかになりました。この発見は、海洋プレートといっしょにしずみこんで震源へと運ばれる地下水、逆にしずみこみによっておしだされる地下水の動きや特性などを知る手がかりとなります。



図5:地層のサンプル

(3)今回の海域の基盤きばんの岩石とその上の地層の境目を見つけ、サンプルの回収に成功しました(図5)。この基盤の岩石は玄武岩げんぶがんといって、海底の火山から流れ出した溶岩ようがんが冷えて固まることで作られます。実は、この玄武岩は研究者がこの航海で一番ほしかったものです。特に今回は、境目の部分をきれいに回収できました。境目の部分をきれいに回収することはむずかしいので、このサンプルはとてもきちょうです。

将来、これらの岩石は震源に運ばれて地震を引き起こす可能性があります。岩石が破壊はかいされて地震を起こすメカニズムの理解が期待されます。


これからはどうするの? 研究者は、分析を続けます<br />「ちきゅう」は、機器の取りつけ工事などをしてから、訓練にでます

今年度(2009年度)の「ちきゅう」の研究航海は終了しました。研究者は、得られたデータをくわしく分析して報告書ほうこくしょにまとめます。一方、「ちきゅう」は造船所ぞうせんじょという大きな工場で工事と点検を受けます。11月からはまた海で掘削くっさくの訓練をします。次の研究航海ではさらに深く掘り進めて、大きな地震が起こる場所に達する予定です!

まめ知識 【ロゴマーク】

研究航海ごとにミッションロゴマークがデザインされます。ロゴはコンテストをへて決められるのが伝統でんとうです。「ちきゅう」の船の上で、乗船者がもちこんだTシャツにプリントすることもあります。ロゴは、「ちきゅう」乗船者にとってとてもほこらしく、思い入れのあるものになります。これまでのロゴは記念写真といっしょに船内の通路にかざられていて、通る人の興味きょうみをひいています。

今回のロゴはこちらです。左上は、海底下を掘り進める部品・ドリルビットをななめ下から見た様子です。「ちきゅう」のパワフルさが伝わってくる迫力はくりょくです!


2009年9月-10月に行われた研究航海のロゴ

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