プログラム・講演要旨

13:00~13:20 開会挨拶・趣旨説明-講演会の聴きどころ-
河宮 未知生
海洋研究開発機構 地球環境部門 環境変動予測研究センター

13:20~13:50 Emissions from human activities caused rise in greenhouse gases
同時通訳付き
Prabir K. Patra
海洋研究開発機構 地球環境部門 地球表層システム研究センター グループリーダー代理

The IPCC AR6 has concluded that strong, rapid, and sustained reductions in carbon dioxide (CO2), methane (CH4), and other greenhouse gases are necessary to limit global warming below 1.5℃ or 2℃. In the period 1850-1900 and 2010-2019, concentration of CO2 increased from 290 to 399 ppm (38%), CH4 from 860 to 1830 ppb (113%) and N2O from 276 to 328 ppb (19%). The rate of increase for each of these 3 major species is the fastest ever in the past 800 thousand years. We show details of emissions and sinks from different activity sectors and regional distributions, which are relevant for policymaking towards emission reduction and periodic evaluation of the progress of nationally determined contributions under the Paris Agreement. Overall, this talk will discuss (1) how we conclude that the rise in their concentrations is linked to human activities, (2) define the present state of CO2-climate feedback and projection to the future, and (3) some effects of rising CO2 in seawater affecting marine ecosystems.
13:50~14:20 炭素排出と気温上昇:温度目標達成のためにはCO2排出量をどの程度に抑えなければならないか
立入 郁
海洋研究開発機構 地球環境部門 環境変動予測研究センター 
グループリーダー

第6次評価報告書では、「1.5℃特別報告書」などで用いられた方法を踏襲し、今後排出できるCO2量(カーボンバジェット)が計算されています。温度目標をCO2排出量に結びつけた一連の推定は、2050年カーボンニュートラルを掲げた国の方針にも影響を与えたと考えられます。本講演では、報告書で示されたカーボンバジェットの値を紹介するとともに、それがどのように計算されたかを説明します。合わせて、この計算にも貢献した地球システムモデル、それを用いた我々の貢献、今後なすべき課題、なども紹介できればと考えています。
14:20~14:30 休憩
14:30~15:00 新型コロナ世界不況で温暖化は鈍ったか―CO2と大気汚染の話
金谷 有剛
海洋研究開発機構 地球環境部門 地球表層システム研究センター

新型コロナ感染症の広がりを抑えるため、世の中の活動は昨年から大きく制限されるようになりました。こうした世界的な経済活動の低下はCO2濃度の増加や温暖化を鈍らせるほどだったのか、今後、2050年のカーボンニュートラル目標達成で求められる社会変容の度合を、私たちの経験した出来事と比べて考えます。人間活動はCO2だけでなく大気汚染の量も同時に変化させています。大気汚染物質が気候変動にもたらす影響はどの程度か、報告書から最新の知見を読み解きます。太陽の光を反射させることで温暖化を和らげてきた「エアロゾル微粒子」は、PM2.5としての健康問題優先で減少方向となるが、逆に温暖化を加速させてしまうのか、温室効果を持つメタンを減らすと、オゾンも一緒に減ってくれるボーナス効果が得られるか―CO2とCO2以外の効果を合わせて、私たちの今後の対策へのヒントを見つけましょう。
15:00~15:30 地球をめぐる温室効果ガス:カーボンニュートラルで気候は安定化するか?
三枝 信子
国立環境研究所 地球システム領域長

地球温暖化の進行を抑えるため、人間が出す温室効果ガス、特に二酸化炭素(CO2)の排出を減らす必要があります。「パリ協定」は21世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指す国際的協定ですが、この目標への道のりを確認するには、いま地球のどこにどれだけの人為または自然の排出源・吸収源があり、それが将来どう変化するかを把握しなければなりません。

CO2は、人間活動の盛んな大都市や発電所、大規模な森林火災などから大量に排出されます。一方、地球表面の約7割を占める海は、CO2の溶解度や植物プランクトンの活動に応じて大気からCO2を吸収します。世界の陸地の約3割を占める森林も、光合成によりCO2を吸収します。本講演では地球規模の観測データや統計データから地球上のCO2収支を推定する研究の最近の成果を紹介します。
15:30~16:00 ゼロカーボンの暮らし方とは?~地域の先行事例を知って考える
木場 和義
全国地球温暖化防止活動推進センター(一般社団法人地球温暖化防止全国ネット) 事務局次長

近年、世界や日本各地で起こる災害は、地球温暖化と関係が深いと言われています。この地球温暖化(気候変動)の問題に対して、世界中の国や企業が対応に動き、日本政府も「2050年に脱炭素社会(ゼロカーボン)の実現を目指す」ことが宣言されました。私たちの今の暮らし方や自然環境を後の世代に残すためには、すぐに温室効果ガスの排出を減らす必要があります。二酸化炭素等の温室効果ガスの排出に、私たちの暮らし方がどう関わっているかを改めて知り、我慢ではないゼロカーボンの暮らし方を実現するために何ができるのか、暮らしやすい社会の実現を市民として考えていくためのヒントをお話ししたいと思います。
16:00~16:25 ディスカッションコーナー
講演者
16:25~16:30 講演会のまとめ
海洋研究開発機構 地球環境部門 環境変動予測研究センター長 河宮 未知生