CO2センサー開発と観測基盤構築 ENGLISH
背景 開発実施計画 二酸化炭素センサー測定原理 二酸化炭素センサー 生物付着防止対策 計測データなど データ標準化法・観測基盤構築集
生物付着防止対策
現在開発中の二酸化炭素センサーでは、トリブチルスズを用いず、長期間安定して生物付着を防止する方法の検討を行っています。
開発するセンサーは、海洋表層を漂流しながら長期間観測を行うため、生物が浮体やセンサー部に付着します。生物付着が進行すると、海水中のCO2濃度が付着生物の光合成や呼吸によって変化してしまい、正確な測定が出来なくなります。これまで、生物付着防止対策として、トリブチルスズが主剤の塗料が広く利用されてきました。しかし、近年、トリブチルスズによるムラサキイガイの成長阻害やイボニシの生殖異常などの環境ホルモン的効果が報告され、トリブチルスズが海洋生態系に悪影響を与えることが指摘されています。そこで、現在開発中の二酸化炭素センサーでは、トリブチルスズを用いず、長期間安定して生物付着を防止する方法の検討を行っています。
生物付着防止方法の条件は、次の4点です。
1. 二酸化炭素センサーの測定自体に影響を及ぼさないこと
2. センサーがバッテリーで動作するので、省電力の必要があること
3. 海洋表層で長期間安定してその効果が得られること
4. 毒性が少ないこと
これらの条件を満足する材料として、センサー部周辺には銅を利用することを検討しています。銅は海水中で腐食する時に酸化銅を溶出します。この酸化銅は生物の細胞膜上の酵素に作用し、細胞分裂を阻害するので、有効に作用するものと期待されます。

また、浮体部には生物付着防止塗料を用いることを検討しています。強化プラスチック板に数種類の塗料を塗り、関根浜港岸壁に2ヶ月吊した結果、シリコン樹脂系の薬品が有力であると現時点では考えています。さらに長期データを取得するため、沖ノ鳥島において強化プラスチック板を現在水中に設置しています。
関根浜港岸壁に2ヶ月間吊した実験材。強化プラスチック板に各種塗料を付し、生物付着状況を観察しました。多くの板は、生物の付着によって塗料の元来の色から変色します。
現在、沖ノ鳥島において海中に設置している実験部材。南の海における長期(1年間)の生物付着の状態を観察しています。また、塗料の剥げ具合もチェックできるものと期待しています。