更新日:2023/04/27

観測

冬季日本海

2023年1月19日-1月31日に実施
耕洋丸第102次航海 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)集中観測

耕洋丸第102次航海が行われました。船は2023年1月19日に下関港を出港し,日本海での高頻度な大気海洋観測を行った後,津軽海峡を抜けて1月31日に横浜港へ入港しました。

今回の観測は2022年1月に行われた日本海観測の第2弾であり,まずは観測期間中にJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)に遭遇できるのか!?が重要なポイントでした。非常に幸運なことに,また陸上支援部隊から送られる予測情報により,今回は2度のJPCZ観測の機会(日本時間の20日16時~21日03時と23日21時~25日9時)に恵まれ,1時間毎の高頻度なラジオゾンデ及びXCTD観測を実施しました。特に後半のJPCZは2023年1月24日~25日にかけて日本各地に豪雪被害をもたらした最強寒波の下,最大瞬間風速が35m/s,有義波高が5mを越えるなど,終始船が大きく揺れる中での観測でした。真冬の日本海の凄まじさとJPCZの激しさを痛感するとともに,厳しい状況下での大気・海洋のきわめて貴重なデータを取得することができました。

JPCZ観測終了直後には珍しい光景も見られました。温かい対馬暖流上にJPCZ通過に伴う強い寒気が流れ込んだことで,なんと海洋から温泉のように湯気が出ていたのです!何度も乗船経験はありますが,これまでに見たことのない美しく不思議な光景でした。

また,津軽海峡へ向かう途中,水温が南北で大きく変化する“極前線”を通過する際にも,1時間毎の大気海洋観測を実施しました。極前線の南北で大気の構造もガラリと変わっており,興味深いデータが取得できました。これらの観測データの解析が鋭意進められています。どのような新たな発見があるのか,とても楽しみです。

今回の観測にはテレビ朝日の方も乗船し,観測の様子が報道ステーションで紹介されました(こちら)。また,観測に参加した学生たち(阿部さん山中さん)のレポートもぜひご覧ください。

耕洋丸第102次航海航路図

下関港に停泊中の耕洋丸(水産大学校)

船が大きく傾いている様子,伝わるでしょうか…

ときには波が壁のようになって目の前に迫ってきました

ラジオゾンデ観測の様子。風が強く船の揺れも大きいので,慎重にバルーンを抑えています。耕洋丸の乗組員や水産大学校の学生の多大なご協力無くしては,今回の厳しい状況下での観測は成功しませんでした。本当に,感謝してもしきれません。

JPCZ通過前の1月24日7時のラジオゾンデ放球。このときは雪ではなく激しい雨が降っていました。放球直後にバルーンが横にものすごい勢いで流されていく様子や風の音から,JPCZ付近の激しさが伝わります。この後,JPCZ中心近傍ではさらに風が強く船の揺れも大きくなったため,耕洋丸の乗組員の方々のみでの放球をしていただきました。

2回目のJPCZ観測終了直後の不思議な光景。温かい対馬暖流上にJPCZ通過に伴う寒気が吹き,モクモクと湯気が!

下関名物の瓦そばが食べられたりと,ごはんが毎日美味しくて嬉しいです

東京湾にて乗船者たちの記念撮影

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西川はつみ(東京大学大気海洋研究所)