JAMSTEC > 地球環境部門 > 海洋生物環境影響研究センター > 活動報告 > 多様な調査方法で深海洞窟を紐解く D-ARKの調査風景その2

活動報告

活動報告

Report vol.4多様な調査方法で深海洞窟を紐解く D-ARKの調査風景その2

D-ARKメンバーと南大東島

Report vol.2では、本プロジェクトで開発中の「深海内視鏡」と「Mini ROV」について紹介しました。引き続き、初航海の様子をご紹介します。

ベイトカメラによる観察

投入前のベイトカメラ

大東諸島周辺の捕食者(プレデター)、腐肉食者(スカベンジャー)の多様性や生物量を明らかにするために、ベイトカメラによる観察を実施しました。
ベイトカメラ(Baited camera)とは、深海生物をおびき寄せるためのえさ(ベイト)がセットされた海底設置型のカメラです。ベイトカメラには高感度カメラや暗闇を照らすLEDライトのほかに、水温や水流など環境を測定するための各種センサーを搭載しています。

ベイトカメラに映るチヒロエビの一種

多くのプレデターは体が大きく、運動能力が高いので、うるさくてまぶしい無人探査機が近づく前に逃げてしまい、なかなか観察することができません。また、日中は寝床に潜り込み、夜になると獲物を探しに外に出てくるプレデターもいます。
そこでベイトカメラの登場です。ベイトカメラは海底で静かに撮影できて、美味しそうな餌も取り付けてあるので、付近のプレデターやスカベンジャーがどんどん集まってきます。
このベイトカメラを海底へ設置し、昼と夜のカメラキャストを組み合わせることで、調査地点にどのようなプレデターやスカベンジャーが暮らしているのかを明らかにすることができます。
今回の大東諸島周辺の海底はほとんどが急斜面だったので設置場所の選定には苦労しましたが、約90時間の撮影に成功しました。

CTD多連採水装置による環境解析

CTD多連採水装置

CTD多連採水装置を用いて、環境DNA試料の採取と海洋環境の観測を行いました。
CTDはConductivity,Temperature,Depthの頭文字から来ており、海水の塩分、水温、深度を測る観測装置です。船上の制御用パソコンにリアルタイムに表示されるデータを確認しながら観測することができます。また、筒状の採水器を用いて希望する深さで海水を採取します。

ろ過中の海水

採取した大量の海水を船上でろ過し、ろ過物は試薬で固定して冷凍保管します。持ち帰った冷凍試料を用いて「環境DNA解析」を行い、採水した場所にどのような生物が生息していたのかを生物が水の中に残したDNAの痕跡から探ります。

生物サンプルの採集

スラープガンを装備したMini ROV(画面中央下部の透明なホースは吸入口)

深海生物を採集するために、無人探査機に搭載した吸引式生物採集装置(スラープガン)やマジックハンド(マニピュレータ)を用いたり、母船からの釣りを行ったりしました。
今回の調査ではキハダやバラムツといった大物から、Report.3でもご紹介した小型のモノまで多種多様な生き物を採集することができました…追ってこのHPでご紹介していきます!

サンプルを観察中

採集した個体はそれぞれ注意深く選別し、洗浄、解剖した後、船上で固定して標本となります。下船後、サンプルごとに詳細に分析を行い、文献や博物館の標本などと比較して、分類学的特徴を明らかにします。
これまで報告されているどの種とも一致しないことが判明した場合は、新種として記載します。貴重なサンプルについては、博物館や研究機関などに寄贈することもあります。

プロジェクトキーメンバーである新江ノ島水族館では、現在採集した一部の生物を生きた状態で展示しています。
https://www.enosui.com/animalsentry.php?eid=00577
※短期間の展示となる可能性があります。詳細は水族館へお問い合わせください。

この生物たちが、D-ARKプロジェクトの取り組みや大東諸島の生物多様性を伝えるメッセンジャーとなってくれることでしょう!

現在、大東諸島で取ってきたサンプルを分析しています。
どんな新しい発見があるか楽しみですね。