沖縄トラフ熱水活動域「ちきゅう」掘削孔を利用した潜航調査計画 in NT10-17

航海レポート

2010年9月20日

「ちきゅう」掘削孔探訪

川口 慎介(JAMSTEC・プレカンブリアンエコシステムラボ)

9月20日、ついに「ちきゅう」が掘削した伊平屋北熱水域で潜航を行いました。午前中に実施した潜航では、通常の熱水域を調査するのと同じ道具を持って行き、掘削孔を見学しました。まずはじめに「ちきゅう」が掘削した裸孔を発見し、直径1m近い大穴から「モハー」という音が聞こえそうな感じで揺らぎながら水が湧出していました。穴が大きすぎて中央部に近づくことは出来ませんでしたが、遠目からハイパードルフィンの手で温度計をかざしただけでも、周辺海水温度(4度)を上回る11度が計測されたため、中心部ではかなり高温の熱水が噴出していることが予想されました。世界初の人工熱水噴出孔の潜航観測を行った満足感に浸り、つづいてケーシングパイプを設置した掘削孔へとむかいました。

9/16に「ちきゅう」から送られてきた情報によると、ケーシングパイプからは「レーザービーム」のように熱水が噴出しているということでした。しかし、ハイパードルフィンが見たケーシングパイプからは、以前の姿が思い出せない元気の無さで、熱水を噴出してはいませんでした。とはいえ、掘削孔自体からはモヤモヤと黒煙が上がっていましたから、おそらく海底奥深くのケーシングパイプ奥部は海底下熱水で満たされていることが予想されました。そこで、ケーシングパイプ奥深くの熱水を採取するため、午後の潜航では「カンダタシステム」をハイパードルフィンに搭載しました。海底面での作業では様々なトラブルが生じましたが、ハイパードルフィン運航チームの巧みな繰機により、採水器は無事掘削孔奥部へと吊り下げられ、採水を実施し、そして吊り上げられました。一連の動作は淀みが無く流れるようで、女学生たちは運航チームのテクニックに胸キュン状態でした。たぶん。


カンダタシステムを搭載したハイパードルフィン

「はいあがろう。『負けたことがある』というのが、いつか、大きな財産になる」
堂本監督の言葉です。なぜこの言葉をここで引用しているかについては、あまり多くを語ることができません。今夜はこの言葉を噛みしめ、筆をおかせていただきます。