トップページ > レポート > 「しんかい6500」研究航海 YK13-08

「しんかい6500」研究航海 YK13-08 レポート

<<レポート一覧へ戻る

南部マリアナ前弧の調査

2013/09/10 - 09/15

マーカーブイ、海底を捜索中これを見つけると一安心です影
潜航調査中、「よこすか」の前部マストに掲げられる国際信号旗
レーダーに映る雨雲の様子、オレンジ色の部分が雨が降っている場所です
雨中の潜水船揚収作業
潜水船の着水作業中の後部操舵室の様子
アプラ港のアウターハーバーに入港
アプラ港の航路から見たインナーハーバー
【航海情報】
9月10日
「しんかい6500」潜航調査(第1363回)
事前調査及びMBES広域地形調査
9月11日
「しんかい6500」潜航調査(第1364回)
MBES広域地形調査
9月12日
「しんかい6500」潜航調査(第1365回)
MBES広域地形調査
9月13日
「しんかい6500」潜航調査(第1366回)
グアム島向け回航開始
9月14日
グアム島向け回航
船長主催の打ち上げパーティ
9月15日
グアム島アプラ港入港
研究者下船、燃料油・清水補給

『南部マリアナ前弧での潜航調査』
フィリピン海南部、九州パラオ海嶺での調査終了後、グアム島の南西約150海里にある南部マリアナ前弧へ調査海域を移動しました。この場所は世界で一番深いマリアナ海溝チャレンジャー海淵の北東側にあたり2010年9月、「しんかい6500」の潜航調査で、水深5,000mを超える場所で化学合成生態系が発見されました。今回の調査は、この化学合成生態系の詳細な調査をすることが目的です。
潜航調査では海底で特異点を発見した場合に水深と位置を記録し反射シールを貼り付けたマーカーブイと呼ばれる目印を設置します。潜水船の視程は良く見えても15m程度、ライト届かない場所は真っ暗です。肉眼で海底を確認するには弱すぎる光でもマーカーブイはその光を反射して暗闇に明るく輝き、遠くからその存在を確認できます。今回も1回目の潜航調査で化学合成生態系に設置されたマーカーブイを目標に捜索を開始し、海水の透明度も高かったこともあり目標の50m以上離れた場所からマーカーブイを視認しすることができました。3年前に発見された化学合成生態系への再訪を果たし、その後の4回の潜航調査を行う際の基点とすることが出来ました。

『グアム島アプラ港、入港』
9月15日、グアム島アプラ港に入港しました。この港は調査航海では度々、利用する港です。アプラ港内はとても広くアウターハーバーとインナーハーバーがあります。「よこすか」はアウターハーバーの岸壁を利用しますが、その航路の外側では水中観光のグラスボートやダイビングツアーが行われています。またインナーハーバーは米海軍の基地となっていて一般船舶は使用できません。着岸中に研究者、乗組員の交代、清水、燃料の補給、食料品の積み込みを行い次の航海に備えます。

    9月10日 No.1363DIVE
  • 潜航海域:南部マリアナ前弧
  • 観察者:小原 泰彦(JAMSTEC)
  • 船長:植木 博文
  • 船長補佐:齊藤 文誉
    9月11日 No.1364DIVE
  • 潜航海域:南部マリアナ前弧
  • 観察者:石井 輝秋(深田地質研究所)
  • 船長:飯嶋 一樹
  • 船長補佐:大西 琢磨
    9月12日 No.1365DIVE
  • 潜航海域:南部マリアナ前弧
  • 観察者:今野 祐多(JAMSTEC)
  • 船長:佐々木 義高
  • 船長補佐:池田 瞳
    9月13日 No.1366DIVE
  • 潜航海域:南部マリアナ前弧
  • 観察者:Sherman Bloomer(オレゴン州立大学)
  • 船長:齊藤 文誉
  • 船長補佐:田山 雄大

フィリピン海南部・九州パラオ海嶺の調査

2013/09/03 - 09/09

「よこすか」を作業艇から撮影
海水の透明度が高く、海も穏やかなため水中の船体部分も良く見えます
作業艇の上からスイマーが水中の潜水船を撮影
メインバラストタンクのベント弁を開けて空気を放出し、潜航開始
メインバラストタンクの空気も全て放出し、海底へ向かう
潜水船の覗窓から「よこすか」のプロペラがはっきり見えます
作業艇に戻るスイマー
【航海情報】
9月3日
「しんかい6500」潜航調査(第1358回)
夜間、MBES広域地形調査
9月4日
「しんかい6500」潜航調査(第1359回)
潜航終了後、九州パラオ海嶺向け回航開始
9月5日
九州パラオ海嶺調査海域到着
事前調査及びMBES広域地形調査
9月6日
「しんかい6500」潜航調査(第1360回)
夜間、MBES広域地形調査
9月7日
「しんかい6500」潜航調査(第1361回)
潜航終了後、マリアナ海溝向け回航開始
9月8日
マリアナ海溝向け回航(ヤップ島北東沖通過)
9月9日
マリアナ海溝海域到着、事前調査
「しんかい6500」潜航調査(第1362回)

『フィリピン海南部・九州パラオ海嶺で崖登り』
今回は調査海域内のフィリピン、ミンダナオ島の東側部分で2回とパラオ島の北側部分で2回、合計4回の潜水船による潜航調査を行いました。
各潜航では海底に着底した後、急斜面や崖に沿って地形観察や岩石の採取を行いながら移動距離で1,500mから2,000m、高低差で約1,000mの範囲の調査をしました。
急斜面や崖での操船は潮流の方向によっては船体が斜面に押しつけられたり、作業中に巻き上げた海底の堆積物の濁りにより視界が無くなるので流れの方向には常に注意が必要です。また、岩石試料は露頭(岩石や地層が直接地表に現われている所)や転石(岩盤からはがれた石)を船体の前部にある2本のマニピュレータ(ロボットアーム)を使って採取しますが、固い岩石や厚いマンガンに覆われた岩石は掴む場所が難しく何度試しても小さな破片すら捥ぎ取れずに研究者と相談して作業を断念することもあります。

『鏡のような海面』
前回のレポートでは、「海域は非常に平穏で潜航調査には最高のコンディションです」と報告しましたが、予報通りの良い海況が続き連日、水面が鏡のようでした。あまりに静かな海面だったので作業艇や潜水船から普段の調査ではなかなか出来ない撮影を試みました。
結果は左の写真をご参照ください。

    9月3日 No.1358DIVE
  • 潜航海域:フィリピン海南部
  • 観察者:石塚 治(JAMSTEC)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:池田 瞳
    9月4日 No.1359DIVE
  • 潜航海域:フィリピン海南部
  • 観察者:草野 有紀(金沢大学)
  • 船長:植木 博文
  • 船長補佐:齊藤 文誉
    9月6日 No.1360DIVE
  • 潜航海域:九州パラオ海嶺
  • 観察者:針金 由美子(産業技術総合研究所)
  • 船長:飯嶋 一樹
  • 船長補佐:田山 雄大
    9月7日 No.1361DIVE
  • 潜航海域:九州パラオ海嶺
  • 観察者:石塚 治(JAMSTEC)
  • 船長:佐々木 義高
  • 船長補佐:鈴木 啓吾
    9月9日 No.1362DIVE
  • 潜航海域:南部マリアナ前弧
  • 観察者:渡部 裕美(JAMSTEC)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:大西 琢磨

大航海、後半戦スタート

2013/08/27 - 09/02

後部甲板での出港作業
同期ピンガの交換作業
潜水船の着水揚収に使用する吊揚げ索も交換したので金具と擦れる部分を保護します
XBTによる海水温度の計測
曳航式プロトン磁力計の観測準備
この海域は、風もうねりも無く、空を流れる雲が海面に写りこむくらい平穏
【航海情報】
8月27日
横須賀港、出港
フィリピン海南部向け、回航開始
8月28日
フィリピン海南部向け回航(鳥島西方通過)
研究者打合せ
8月29日
フィリピン海南部向け回航(硫黄島西方通過)
8月30日
フィリピン海南部向け回航(沖ノ鳥島東方通過)
8月31日
フィリピン海南部向け回航(沖ノ鳥島南方通過)
9月1日
フィリピン海南部調査海域到着
MBES広域地形調査
9月2日
事前調査及びMBES広域地形調査

『フィリピン海南部調査海域へ到着、調査開始』
日本に戻り新電池への換装を終えた「しんかい6500」は、8月27日に母船「よこすか」と大航海後半戦の最初の調査海域、九州から南に約1400海里のフィリピン海南部海域と、その東側に位置するマリアナ海溝での調査に向けて横須賀港を出港しました。この航海はフィリピン海南部では岩石試料の採取、マリアナ海溝では化学合成生態系の調査を主な目的としています。
調査海域までの回航中に研究者と調査に関する打合せを行い、必要なペイロードの準備、取り付け、作動確認等の潜航調査に必要な準備を実施しました。
調査海域には9月1日の朝に到着、MBES広域地形調査を開始し翌9月2日には潜航のための事前調査を実施しました。
この海域は現在、風、うねりも無く、鏡のように平穏な海面となっており潜航調査には最高のコンディションです。この状況がしばらく続く予報となっています。