「しんかい6500」世界一周航海「QUELLE2013」南太平洋 YK13-10
レポート
トンガ海溝での潜航調査
2013/10/13 - 21
【航海情報】
『トンガ海溝の潜航調査』
トンガ海溝ではホライゾン海淵の陸側斜面、海側斜面、トンガ海溝中部陸側斜面で1回ずつ3回の潜航調査を実施しました。
陸側斜面では、水深6,500m近くから水深6,000m付近まで海底の岩相分布・微地形・断層地形・断層の分布等の観察を行いながら斜面を登り、岩相マッピングに必要な岩石採取を行いました。2回の潜航で様々な種類の岩石が採取され、海底から持ち帰った岩石の重さは全部で132kgになります。採取された岩石は母船上で切断、分類され日本に持ち帰ってから詳細な分析が行われます。
海側斜面ではウルトラ・ディープ・ランダーを設置した海底の観察と生物や泥等の試料採取を行いました。特にこの潜航では、航海前半で採取された巨大ヨコエビの映像と標本を採取するため特製生物トラップの設置を行いました。生物トラップを海底に設置し、一旦その場所を離れて約1時間半後、回収に戻ったのですが巨大ヨコエビが集まる姿は確認されませんでした。しかし、餌に誘われてきた巨大ヨコエビの小さい個体を1匹だけ採取することが出来たので、この付近に生息することは確かなようです。
『ヌクアロファ港(トンガ)に入港』
10月21日、トンガ王国のヌクアロファ港に入港。「よこすか」は初めての入港地となります。トンガ王国は大小169の島で構成されていますが首都ヌクアロファがあるトンガタプ島が一番大きな島となります。この島には大きな船舶が着岸可能な岸壁は一か所しかなく「よこすか」はそのブナふ頭(New Vuna Wharf)に着岸しました。この岸壁はトンガ国王の王宮の目の前に位置するため、眺望が大変良く市街地にも近い便利な所です。ただし、岸壁には街灯が無いので夜は警備のため発電機付き工事用ライトで岸壁を照らしています。
この着岸中にはトンガ王国、在トンガ日本大使館関係者や地元高校生への特別公開を行ないます。
- 10月13日
- 10,000m級フリーフォールカメラ回収
「しんかい6500」潜航調査(第1369回)
ウルトラ・ディープ・ランダー設置(4回目) - 10月14日
- ウルトラ・ディープ・ランダー回収
夜間、MBES広域地形調査 - 10月15日
- 「しんかい6500」潜航調査(第1370回)
夜間、MBES広域地形調査 - 10月16日
- 海域移動、MBES広域地形調査
- 10月17日
- 「しんかい6500」潜航調査(第1371回)
MBES広域地形調査 - 10月18日
- 海況不良の為、潜航中止
MBES広域地形調査 - 10月19日
- 海況不良の為、潜航中止
海域移動、MBES広域地形調査 - 10月20日
- 海況不良の為、潜航中止
ヌクアロファ港(トンガ)向け回航開始 - 10月21日
- ヌクアロファ港(トンガ)入港
『トンガ海溝の潜航調査』
トンガ海溝ではホライゾン海淵の陸側斜面、海側斜面、トンガ海溝中部陸側斜面で1回ずつ3回の潜航調査を実施しました。
陸側斜面では、水深6,500m近くから水深6,000m付近まで海底の岩相分布・微地形・断層地形・断層の分布等の観察を行いながら斜面を登り、岩相マッピングに必要な岩石採取を行いました。2回の潜航で様々な種類の岩石が採取され、海底から持ち帰った岩石の重さは全部で132kgになります。採取された岩石は母船上で切断、分類され日本に持ち帰ってから詳細な分析が行われます。
海側斜面ではウルトラ・ディープ・ランダーを設置した海底の観察と生物や泥等の試料採取を行いました。特にこの潜航では、航海前半で採取された巨大ヨコエビの映像と標本を採取するため特製生物トラップの設置を行いました。生物トラップを海底に設置し、一旦その場所を離れて約1時間半後、回収に戻ったのですが巨大ヨコエビが集まる姿は確認されませんでした。しかし、餌に誘われてきた巨大ヨコエビの小さい個体を1匹だけ採取することが出来たので、この付近に生息することは確かなようです。
『ヌクアロファ港(トンガ)に入港』
10月21日、トンガ王国のヌクアロファ港に入港。「よこすか」は初めての入港地となります。トンガ王国は大小169の島で構成されていますが首都ヌクアロファがあるトンガタプ島が一番大きな島となります。この島には大きな船舶が着岸可能な岸壁は一か所しかなく「よこすか」はそのブナふ頭(New Vuna Wharf)に着岸しました。この岸壁はトンガ国王の王宮の目の前に位置するため、眺望が大変良く市街地にも近い便利な所です。ただし、岸壁には街灯が無いので夜は警備のため発電機付き工事用ライトで岸壁を照らしています。
この着岸中にはトンガ王国、在トンガ日本大使館関係者や地元高校生への特別公開を行ないます。
-
10月13日 No.1369DIVE
- 潜航海域:トンガ海溝 Horizon Deep 陸側斜面
- 観察者:谷 健一郎(JAMSTEC)
- 船長:松本 恵太
- 船長補佐:池田 瞳
-
10月15日 No.1370DIVE
- 潜航海域:トンガ海溝 Horizon Deep 海側斜面
- 観察者:北里 洋(JAMSTEC)
- 船長: 佐々木 義高
- 船長補佐:鈴木 啓吾
-
10月17日 No.1371DIVE
- 潜航海域:トンガ海溝 中部
- 観察者:岡本 敦(東北大学)
- 船長:千葉 和宏
- 船長補佐:石川 暁久
スバ出港、トンガ海溝調査開始
2013/10/06 - 12
【航海情報】
『スバ港を出港、トンガ海溝調査開始』
10月6日にフィジーのスバ港を出港しました。調査海域はフィジーから南東方向へ約500海里、トンガタプ島の東側に位置するトンガ海溝です。この海溝は北北東から南南西方向へ約1,200kmの長さがあり最深部は世界で2番目に深いホライゾン海淵(水深10,850m)です。ここは太平洋プレートがオーストラリアプレートの下に沈み込む場所でその速度は年間約24cm、日本海溝で太平洋プレートがユーラシアプレートに沈み込む速度は年間約9cmですから2倍以上の速さです。現在も海底火山や地震等の活発な活動が観測されていて、海溝北東側のトンガタプ島付近では2009年3月に海底火山の噴火、今年の5月にもM7.4の海底地震がありました。また、調査海域へ移動中にも小さな軽石が海面を漂っていたりするのですが研究者の説明では海底火山噴火の際に放出されたものだそうです。(舷側から網ですくって試料?にしていました。)
今回の調査はこのトンガ海溝の広域的な地質学的調査及びホライゾン海淵とその周辺の超深海生態系調査を行う事を目的としています。調査海域では詳細な海底地形図が無いため、到着後は調査の中心となるホライゾン海淵の最深部を探す所から調査を開始しました。
『水深10,000mを超えるホライゾン海淵の調査』
ホライゾン海淵での超深海生態系調査ですが調査の前半は2種類の観測装置、「ウルトラ・ディープ・ランダー」と「10,000m級フリーフォールカメラシステム」を使用して調査を行います。「ウルトラ・ディープ・ランダー」はデンマークの研究者が持ち込んだ調査機器で酸素電極を用いて海底の現場酸素測定を行い、堆積物生物呼吸量を計測する装置です。「10,000m級フリーフォールカメラシステム」はハイビジョンTVカメラ、アシュラ型採泥装置、CTD記録装置、ニスキン採水器が装備されています。どちらの観測装置も「よこすか」より自由落下方式で海中に投入され、海底に到着すると予め設定されているプログラムにより自動で観測や撮影を行います。また、どちらの装置にも生物用トラップが取り付けられていて海底に設置されている間、餌に寄ってくる生物の採取を行います。今回の調査では「ウルトラ・ディープ・ランダー」はホライゾン海淵とその東側(海側)斜面で水深6,200m地点の2ヶ所に「10,000m級フリーフォールカメラシステム」は「しんかい6500」での調査が出来ないホライゾン海淵へ一定時間設置後、回収しました。回収された観測装置からは水深10,000mの海底の映像や試料が得られています。
特にホライゾン海淵東側斜面で生物用トラップにより採取されたヨコエビの仲間はとても大きく、イメージ的にはダイオウグソクムシのヨコエビ版と言った感じです。研究者の説明によるとトンガ海溝付近では過去にもこのエビが採取されており最大記録は全長35cmだそうです。
調査の後半は「しんかい6500」による潜航調査です。研究者チームでは調査前半で得られた海底地形データや試料から今後の潜航計画について連日、ミーティングが行われています。
- 10月6日
- スバ港(フィジー)出港
トンガ海溝向け回航開始 - 10月7日
- トンガ海溝向け回航
夜間、船内時計1時間前進(日本時間 +4時間) - 10月8日
- トンガ海溝海域到着
広域地形調査、ウルトラ・ディープ・ランダー設置 - 10月9日
- ウルトラ・ディープ・ランダー回収、調整、設置(2回目)
- 10月10日
- ウルトラ・ディープ・ランダー回収
10,000m級フリーフォールカメラ設置(1回目) - 10月11日
- 10,000m級フリーフォールカメラ回収
ウルトラ・ディープ・ランダー設置(3回目) - 10月12日
- ウルトラ・ディープ・ランダー回収
10,000m級フリーフォールカメラ設置(2回目)
『スバ港を出港、トンガ海溝調査開始』
10月6日にフィジーのスバ港を出港しました。調査海域はフィジーから南東方向へ約500海里、トンガタプ島の東側に位置するトンガ海溝です。この海溝は北北東から南南西方向へ約1,200kmの長さがあり最深部は世界で2番目に深いホライゾン海淵(水深10,850m)です。ここは太平洋プレートがオーストラリアプレートの下に沈み込む場所でその速度は年間約24cm、日本海溝で太平洋プレートがユーラシアプレートに沈み込む速度は年間約9cmですから2倍以上の速さです。現在も海底火山や地震等の活発な活動が観測されていて、海溝北東側のトンガタプ島付近では2009年3月に海底火山の噴火、今年の5月にもM7.4の海底地震がありました。また、調査海域へ移動中にも小さな軽石が海面を漂っていたりするのですが研究者の説明では海底火山噴火の際に放出されたものだそうです。(舷側から網ですくって試料?にしていました。)
今回の調査はこのトンガ海溝の広域的な地質学的調査及びホライゾン海淵とその周辺の超深海生態系調査を行う事を目的としています。調査海域では詳細な海底地形図が無いため、到着後は調査の中心となるホライゾン海淵の最深部を探す所から調査を開始しました。
『水深10,000mを超えるホライゾン海淵の調査』
ホライゾン海淵での超深海生態系調査ですが調査の前半は2種類の観測装置、「ウルトラ・ディープ・ランダー」と「10,000m級フリーフォールカメラシステム」を使用して調査を行います。「ウルトラ・ディープ・ランダー」はデンマークの研究者が持ち込んだ調査機器で酸素電極を用いて海底の現場酸素測定を行い、堆積物生物呼吸量を計測する装置です。「10,000m級フリーフォールカメラシステム」はハイビジョンTVカメラ、アシュラ型採泥装置、CTD記録装置、ニスキン採水器が装備されています。どちらの観測装置も「よこすか」より自由落下方式で海中に投入され、海底に到着すると予め設定されているプログラムにより自動で観測や撮影を行います。また、どちらの装置にも生物用トラップが取り付けられていて海底に設置されている間、餌に寄ってくる生物の採取を行います。今回の調査では「ウルトラ・ディープ・ランダー」はホライゾン海淵とその東側(海側)斜面で水深6,200m地点の2ヶ所に「10,000m級フリーフォールカメラシステム」は「しんかい6500」での調査が出来ないホライゾン海淵へ一定時間設置後、回収しました。回収された観測装置からは水深10,000mの海底の映像や試料が得られています。
特にホライゾン海淵東側斜面で生物用トラップにより採取されたヨコエビの仲間はとても大きく、イメージ的にはダイオウグソクムシのヨコエビ版と言った感じです。研究者の説明によるとトンガ海溝付近では過去にもこのエビが採取されており最大記録は全長35cmだそうです。
調査の後半は「しんかい6500」による潜航調査です。研究者チームでは調査前半で得られた海底地形データや試料から今後の潜航計画について連日、ミーティングが行われています。