トップページ > レポート > 「しんかい6500」研究航海 YK14-19

「しんかい6500」研究航海 YK14-19 レポート

<<レポート一覧へ戻る

中部沖縄トラフの調査 2

2014/10/15 - 10/21

ワイヤーロープに繋いだ海底電位磁力計を静かに海面まで下ろし、ワイヤーロープの接続を解除すると錘の重さで沈み海底に到着します。
「しんかい6500」の着水揚収装置の点検。甲板部、機関部の共同作業で行います。
サンプルバスケットの観測装置をマニピュレータで固定します。整備長とパイロットはハンドサインで細かい調整を行います。
波のタイミングに合わせて「しんかい6500」に上がるスイマー。
作業が終わりボートに戻るスイマー。
「しんかい6500」の右側の覗き窓から見る後部甲板。
ディープ・トウ曳航作業前のミーティング。 センサーの調整のため、右に1回、左に1回、機体を回転させます。 ディープ・トウに搭載された人工電流送受信装置のケーブルを水中にいれます。 ディープ・トウの揚収作業。機体が振れないように4本のロープで押さえます。 母船からの音響信号で錘を切り離し海面に浮上した海底電位差計を舷側から揚収します。
【航海情報】
10月15日
中部沖縄トラフ到着、事前調査
電位差計2台、電位磁力計3台設置
10月16日
「しんかい6500」潜航調査(第1405回)
電位磁力計2台設置
10月17日
「しんかい6500」潜航調査(第1406回)
電位磁力計1台設置
10月18日
「しんかい6500」潜航調査(第1407回)
深海曳航調査システム「YKDT」へ艤装替え
10月19日
「YKDT」曳航調査(第159回)
電位差計2台回収後、鹿児島港向け回航
10月20日
回航
10月21日
鹿児島港入港

『調査計画変更』
今航海は「しんかい6500」による潜航調査3回、深海曳航調査システム「YKDT」(よこすかディープ・トウ)による曳航調査5回を9日間で実施する予定でしたが、台風19号の影響を避けるため瀬戸内海で通過待ちをしていたため、調査を行える日数が5日間となってしまいました。このため調査計画の再検討を行い期間内で最大の成果をあげられるように調査の内容を変更しました。
10月15日の午後に調査海域に到着後、まず潜航地点付近の海底地形図を作製し、それをもとに2台の海底電位差計と3台の海底電位磁力計を設置しました。翌日10月16日の「しんかい6500」第1405潜航で小型電位差計2台を海底に設置し、人工電流送信装置を使用した調査を行いました。10月17日の第1406潜航では前日と同様の調査に加え長期設置型の電位差計測アレイと熱流量計を設置、展開しました。また、前日に設置した小型電位差計2台は回収して持ち帰りました。それ以外に両日は早朝、夕方の潜航調査の空いている時間を利用して海底電位磁力計3台を設置し、合計6台の海底電位磁力計による深部構造探査アレイを構築しました。10月18日の第1407潜航では潜航場所を南側に変更して1回の潜航で2台の小型電位差計を設置し、人工電流送信装置による調査を行なったあと、小型電位差計2台を回収し持ち帰りました。どの潜航も作業量が非常に多かったのですが潜航深度が1,000m前後と浅く、海面から海底まで約30分で到着するため大深度での潜航に比較して作業時間が多くとれたため、問題無く全作業を終了することが出来ました。調査最終日の10月19日には「YKDT」に搭載された人工電流送受信装置と海底電位差計を使用した調査を行ったのち、2台の海底電位差計を回収しました。
この航海の調査期間は短くなりましたが、今後の研究を進めるのに必要な調査を行うことが出来ました。

『これからの予定』
今年度の調査潜航を終了した「しんかい6500」は、10月末にJAMSTEC横須賀本部の潜水船整備場に陸揚げされます。
11月中は「しんかい6500」機能向上の準備としてLED型投光器の試験、製作した総合情報表示装置や慣性航法装置などと情報を入出力する周辺機器との連接試験、耐圧殻内の居住空間を改善するための実物大モックアップを使用した船内機器の配置場所変更の検討などを行います。その後、12月中旬から3月中旬まで90日間かけて船体の点検、整備のために中間検査工事を行います。この中検査工事が開始されると船体のほとんどの機器は取外されて各機器の製造元等に送り返されます。このため潜水船整備場に保管されている「しんかい6500」は1週間ほどで骨組みと耐圧殻だけの姿になります。各機器の製造元等での点検、整備は2月上旬ごろまで行われ検査に合格すると潜水船整備場に戻ってきます。これらの機器を船体に取付け元通りの「しんかい6500」の姿となり潜航できるような状態になるのは3月中旬です。
次回のレポートは、中間検査工事終了後の3月末に行われる試験航海の様子をご報告いたしたいと思います。

    10月16日 No.1405DIVE
  • 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊平屋北海丘
  • 観察者:笠谷 貴史(JAMSTEC)
  • 船長:飯嶋 一樹
  • 船長補佐:片桐 昌弥
    10月17日 No.1406DIVE
  • 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊平屋北海丘
  • 観察者:笠谷 貴史(JAMSTEC)
  • 船長:佐々木 義高
  • 船長補佐:小椋 徹也
    10月18日 No.1407DIVE
  • 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊平屋北海丘
  • 観察者:町山 栄章(JAMSTEC)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:齋藤 文誉

佐々木 義高(運航チーム副司令)

中部沖縄トラフの調査 1

2014/10/07 - 10/14

明石海峡大橋。右側が兵庫県神戸市、左側が淡路島。支柱間が1991mあり世界最長の吊り橋です。
瀬戸大橋。右側が岡山県倉敷市、左側が香川県坂出市。全長13.1kmで鉄道道路併用橋としては世界最長です。
来島海峡大橋(しまなみ街道)。右側が広島県尾道市、左側が愛媛県今治市。来島海峡第一大橋、来島海峡第二大橋、来島海峡第三大橋の三つの橋で構成されています。
関門橋。右側が下関市壇ノ浦、左側が北九州市門司。関門海峡の最狭部に架けられています。
山口県徳山下松港の沖での「よこすか」レーダー画像。円の中心が「よこすか」で周囲に散らばる白い三角の印が台風を避けて錨泊している他の船舶です。
台風19号通過時の気圧計の記録。青い線が気圧で、台風の接近に伴って気圧が下がっているのが分かります。
台風通過後、吹き戻しの風が弱くなるタイミングを見計らって錨を揚げ、回航準備を行います。
【航海情報】
10月7日
横須賀港外にて研究者、運航チーム乗船
中部沖縄トラフ向け回航開始
10月8日
台風19号の影響を避けるため大阪湾向け回航
10月9日
錨泊(大阪湾)
10月10日
台風19号の避航開始、瀬戸内海へ移動
10月11日
九州北岸へ移動
10月12日
瀬戸内海へ移動、錨泊(山口県徳山下松港沖)
10月13日
錨泊(山口県徳山下松港沖)
10月14日
中部沖縄トラフ向け回航開始

『今年最後の潜航調査』
10月7日に「よこすか」は今年最後の「しんかい6500」調査航海に出航しました。
今回の調査海域は沖縄島の北西約90海里にある中部沖縄トラフです。この海域には海底熱水鉱床と呼ばれる、レアメタルなどを含んだ金属資源の宝庫があります。海底熱水鉱床については、海底下で熱せられた水が海底から噴出する過程で生成されることは分かっていますが、その元となる地下の熱水の分布や鉱床の資源量を把握するための物理探査法は確立されていません。しかし、この調査海域では、これまでに海底掘削を含む多くの探査が行われているため、熱水の分布や資源量を把握する探査手法を確立するための基礎情報が多く得られています。今回の調査は、「しんかい6500」と深海曳航調査システム「YKDT(「よこすか」ディープ・トウ)」に搭載した人工電流送信装置と海底に設置した電位差計・電位磁力計を使用して人工電流信号及び自然電磁場信号を記録、解析します。そして過去の調査で得られたデータと比較して地下構造の探査手法の有効性を検証すること。及び「しんかい6500」により長期設置型の電位差計測アレイと熱流量計の展開を行い、今後のモニタリング技術を確立するための基礎データを得たいと考えています。

『台風19号による影響』
横須賀港を出航した10月7日、沖縄島の南方にはゆっくりと北上する台風19号がありました。この台風は大型で勢力が大変強く暴風圏も広いため、調査海域や付近の海上はすでに影響があり直行できる状況ではありませんでした。今後の台風の進路により安全に避泊出来る場所が変わるため、「よこすか」は本州の沿岸近くを一旦西へ航行し、大阪湾で錨泊して台風の動きを見ることにしました。ここからなら台風の動向に合わせて臨機応変な対応ができます。10月10日に台風が進路を東に向け出したので抜錨して瀬戸内海を西に向かい安全に台風から避難できる場所を探して移動開始しました。移動中に台風の進路予報や衛星画像などの情報を検討して九州北岸で台風を避ける予定でしたが、最終的には山口県の徳山下松港の沖で避泊し台風19号の通過を待ちました。台風通過中は瞬間最大風速が30m/s以上となりましたが無事にやり過ごし、暴風圏が通り過ぎた後、調査海域へ向けて移動を開始しました。しかし、この台風を避けるために調査開始の時期が大幅に遅れてしまい、残された期間で最大の成果を得られるように調査計画の再検討が必要になりました。

佐々木 義高(運航チーム副司令)