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「しんかい6500」試験潜航 YK15-03 レポート

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試験潜航終了

2015/3/19 - 27

沈降試験は「しんかい6500」に吊り上げ索(写真中央の2本の太いロープ)を付けたまま行います。
スイマーが主索(オレンジ色のロープ)を外して母船側の作業が終了。
覗き窓が耐圧殻にはまる部分には保護のためにシリコングリスが塗られていますが、水圧がかかると余分なグリスが染み出てきます(写真右の窓の縁の白い部分)。試験航海が終わるころには余分なグリスは出なくなり覗き窓が耐圧殻にフィットします。
「しんかい6500」が海面から吊り上げられた直後の甲板。
一等航海士、甲板部が吊上げ索の補修作業を行っています。
相模湾初島沖から見た富士山。
駿河湾富士川沖から見た富士山。 新型フレームになった「YKDT」。 「YKDT」を台車に固定する作業。
【航海情報】
3月19日
横須賀港、出港
「しんかい6500」沈降試験(第1412回)
3月20日
「しんかい6500」沈降試験(第1413回)
試験終了後、駿河湾向け回航
3月21日
「しんかい6500」試験潜航(第1414回)
潜航終了後、伊豆・小笠原海溝向け回航
3月22日
「しんかい6500」試験潜航(第1415回)
潜航終了後、相模湾向け回航
3月23日
事前調査、整備日
相模湾、錨泊
3月24日
「しんかい6500」試験潜航(第1416回)
潜航終了後、駿河湾向け回航
3月25日
「しんかい6500」試験潜航(第1417回)
相模湾向け回航
3月26日
「YKDT」試験潜航(第163回)
横須賀港向け回航
3月27日
横須賀港、入港

『試験潜航』
「しんかい6500」は、昨年12月中旬に開始された中間検査工事を3月中旬に終了しました。陸上での作業終了後、3月末まで船体や装備機器が水深6,500mの海中で問題なく航行、作業が行える能力がある事を検証するための試験潜航を行いましたので、その概要をご報告します。
今年の試験潜航は、3月19日に横須賀港沖で行われた沈降試験から開始されました。この沈降試験が第1412潜航となり2004年に引退した「しんかい2000」の総潜航回数1,411回を越える潜航となりました。この沈降試験では船体機器の一部に調整不具合があったので、再調整を行い翌日、3月20日の沈降試験で調整箇所の健全性を確認しました。
沈降試験終了後、支援母船「よこすか」は進路を試験海域に向けましたが、日本周辺は冬型の気圧配置のため海況が悪化する傾向で、水深6,500m試験海域の伊豆・小笠原海溝では3月22日以降の潜航が難しい状況でした。
このため、通常なら水深1,000m、3,000m、6,500mの海域で段階的に試験潜航を行い健全性の確認を行うのですが、今回は以下のように2潜航で全ての試験を行いました。
まず3月21日の第1414潜航ですが水深3,000m海域の南海トラフ北縁部で潜航を開始、深度1,000mで下降用バラスト(錘)を切離して、船体を中性浮力(浮きも沈みもしない状態)として船体機器の健全性を確認しました。その後、可変バラストタンクに海水を注水した重さと垂直スラスターの推力で水深3,000mの海底まで下降、船体を中性浮力として同様に試験を行い健全性の確認をしました。揚収完了後に「よこすか」は移動を開始して、翌3月22日の早朝、海況が悪化する前に八丈島東側の伊豆・小笠原海溝の水深6,500m海域に到着。第1415潜航を行ない水深6,500mでも問題なく航行、作業が行えることを確認しました。
残りの航海期間中、外洋の試験海域は海況の回復が見込めないため、相模湾内に移動してこれまで確認した調整が必要な機器の整備を行いながら、相模湾初島沖、駿河湾富士川沖で作動状況の確認のため2回の試験潜航を行いました。

『よこすかディープ・トウ(以下YKDT)フレーム換装』
我々「しんかい6500」運航チームが担当している機器には、潜水船と一緒に母船「よこすか」に搭載されている深海曳航調査システム「YKDT」があります。この「YKDT」は、鉄製の箱型フレームに取り付けたカメラなどの観測機器と光電気複合ケーブルウインチで構成されたシステムです。ケーブルを繰り出すことにより簡単に海底の様子が確認できるため、調査に利用される機会が多いので、整備、改修を行いながら運航しています。しかし運航開始から10年が経過し本体の鉄製フレームが錆などにより劣化してきたので、2013年の世界一周航海中に技術研修を兼ねて船上で新しいフレームの製作を開始しました。これが、昨年の秋に完成したので「しんかい6500」中間検査期間中に観測装置を新フレームに載せ換えて、今回の航海で作動確認を行いました。新フレームは従来型より一回り大きくしたので、観測装置の配置にも余裕があり、曳航中に機体が受ける水の抵抗が軽減し、これまでより安定した曳航調査が行えそうです。

    3月19日 No.1412DIVE
  • 潜航海域:横須賀港 第4区
  • 観察者:荒木 英二(三菱重工業株式会社)
  • 船長:植木 博文
  • 船長補佐:田山 雄大
    3月20日 No.1413DIVE
  • 潜航海域:横須賀港 第4区
  • 観察者:千葉 和宏(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:大西 琢磨
  • 船長補佐:石川 暁久
    3月21日 No.1414DIVE
  • 潜航海域:南海トラフ北縁部
  • 観察者:小椋 徹也(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:佐々木 義高
  • 船長補佐:鈴木 啓吾
    3月22日 No.1415DIVE
  • 潜航海域:伊豆・小笠原海溝
  • 観察者:千葉 和宏(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:齋藤 文誉
  • 船長補佐:石川 暁久
    3月24日 No.1416DIVE
  • 潜航海域:相模湾
  • 観察者:大西 琢磨(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:小椋 徹也
    3月25日 No.1417DIVE
  • 潜航海域:駿河湾
  • 観察者:鈴木 啓吾(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:植木 博文
  • 船長補佐:田山 雄大

佐々木 義高(運航チーム副司令)