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「しんかい6500」訓練潜航 YK15-04 レポート

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平成27年度 行動開始は訓練潜航から

2015/4/7 - 14

これが駿河湾でよく見かける「アカドンコ」。
開発したLED型投光器。画面上右側の丸型と画面中央の横型があり、遠距離用には白色系のLED、近距離用には赤色系が強いLEDを使用しています。
小型水中カメラを使用して昨今、流行っている自撮り用カメラ(画面、左側の人が持っています)を製作してみました。
自撮り(モニターが無いので画角を考慮してマニピュレータを操作する必要があります)。
自撮り写真。
潜航直前のハッチの清掃は念入りに行います。
「ただいま~」 揚収完了後のハッチ開放作業。 熱水噴出孔の張出し部分の裏側に溜まる熱水を採取するために延長用の採水口ダミーを製作。 「YKDT」を台車に固定する作業。
【航海情報】
4月7日
横須賀港、出港
駿河湾向け回航
4月8日
「しんかい6500」訓練潜航(第1418回)
潜航終了後、中部沖縄トラフ向け回航
4月9日
中部沖縄トラフ向け回航(室戸岬沖)
4月10日
中部沖縄トラフ向け回航(奄美大島沖)
4月11日
中部沖縄トラフ訓練海域、到着
事前調査終了後、「しんかい6500」訓練潜航(第1419回)
4月12日
「しんかい6500」訓練潜航(第1420回)
夜間、漂泊
4月13日
「しんかい6500」訓練潜航(第1421回)
夜間、漂泊
4月14日
荒天のため潜航中止
那覇港、入港

『ブロブフィッシュ』
4月7日より4月14日まで「しんかい6500」運航要員と支援母船「よこすか」乗組員の現場作業の手順や危険箇所の確認、新人の教育などのため訓練潜航を行いました。
ここ数年、訓練潜航は母港である横須賀港から距離的に近い、相模湾、駿河湾で行ってきましたが、今年は4月から開始される調査潜航が中部沖縄トラフで開始されるため、久しぶりに訓練潜航に沖縄海域が含まれました。
4月7日、JAMSTEC横須賀本部の専用桟橋を出港した支援母船「よこすか」は、翌日の訓練潜航場所である駿河湾の戸田海底谷で事前調査を行いました。この駿河湾は、潜航する機会が多いので我々パイロットもいろいろな生物を目にします。今年2月に沼津港深海水族館が、駿河湾で捕獲した「ブロブフィッシュ」という魚の写真を公開しました。この魚、ウクライナカジカ科の魚で新種かどうか現在、研究機関にて鑑定中だそうですが、写真を見たパイロット達は「この魚は駿河湾でよく見かけるけど新種だったの?」と話題にしていました。そこで、4月8日、第1418回の訓練潜航で探してみると、やっぱり似たような魚を確認することができました。この魚は逃げることが少ないので、潜水船でゆっくり接近してよく見てみると、発表された写真の魚とは異なっているような感じもします。撮影してきた映像で確認すると、この魚は同じウクライナカジカ科の「アカドンコ」でした。話題の魚とは違っていましたが、この種類の魚は見かける機会が多いので、近いうちに新種と遭遇できるかもしれません。

『沖縄の訓練潜航』
駿河湾での訓練潜航終了後、陸岸沿いに南下し中部沖縄トラフ(沖縄島の北東約150km)へ回航を行いました。ここでは3回の訓練潜航を行い、通常の訓練のほかに、昨年度から試験・開発してきたLED型投光器の実運用に向けた調整と次行動で行われる潜航調査のために海底地形の特異点のマッピングを行うという実践的な訓練も行いました。
4月11日の第1419潜航、場所は伊是名海穴。この場所は1989年に日本で最初にブラックスモーカーが発見された場所です。発見後、本格的な調査を開始し始めた頃に潜航調査の障害となる浮き漁礁が設置されたため、長い間、有人潜水調査船での潜航調査は行えませんでした。数年前に潜航制限が解除され、潜航調査ができるようになりました。中間検査で陸上勤務が続いた、パイロット、コパイロットが短時間で操船の勘を取り戻すには絶好のステージです。訓練は日本最初のブラックスモーカーの捜索から開始され、熱水噴出域への接近、着底、離脱する操船訓練やマニピュレータ操作訓練など調査と同様の訓練を行いました。
4月12日の第1420潜航、場所はSakai Field。昨年の「うらしま」調査航海で発見され、今年の1月にハイパードルフィンによる調査が行われた場所です。多数の熱水噴出孔や変色域、生物コロニーが確認されています。これらの特異点の場所は、ほぼ確認されていますが調査を行うには不十分です。このため、指定されたコースに従って、特異点の場所や地形の特徴を確認する実践的な訓練を行いました。
4月13日の第1421潜航、2潜航目の伊是名海穴での訓練潜航です。1回目の訓練潜航で目標としたブラックスモーカーの南側にも熱水噴出孔の存在が予想されるため、その捜索を主とした訓練を行いました。海底地形とこれまでに確認されている熱水噴出孔の情報をもとに捜索コースを策定し、海底の状況を確認しながら捜索方向を判断、熱水噴出孔を確認したら周辺の観察を行いました。その後、熱水噴出孔を目標とする操船訓練、マニピュレータ操作訓練を行いました。
翌4月14日に予定されていた第1422潜航は、海況不良のため潜航開始を見合わせていましたが、海況の回復が見込めず残念ながら潜航取り止めとなり、今年の訓練潜航は終了となりました。

    4月8日 No.1418DIVE
  • 潜航海域:駿河湾 戸田海底谷
  • 観察者:山本 朋広(文部科学省)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:齋藤 文誉
    4月11日 No.1419DIVE
  • 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊是名海穴
  • 観察者:千葉 和宏(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:小椋 徹也
  • 船長補佐:大西 琢磨
    4月12日 No.1420DIVE
  • 潜航海域:中部沖縄トラフ Sakai Field
  • 観察者:松本 恵太(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:齋藤 文誉
  • 船長補佐:田山 雄大
    4月13日 No.1421DIVE
  • 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊是名海穴
  • 観察者:佐々木 義高(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:植木 博文
  • 船長補佐:鈴木 啓吾

佐々木 義高(運航チーム副司令)