「しんかい6500」研究航海 YK15-12 レポート
九州パラオ海嶺の調査
2015/7/19 - 7/31
【航海情報】
『九州パラオ海嶺の調査』
サイパンで研究者チームの入れ替えを行い7月19日、「よこすか」と「しんかい6500」は九州パラオ海嶺の調査のため、最初の調査海域である沖ノ鳥島の南側、約110kmの西フィリピン海盆東側に向けて出航しました。今回の調査海域の九州パラオ海嶺は文字通り、太平洋の南にあるパラオ諸島から沖ノ鳥島を通り九州の南東まで全長3,000kmに渡って連なる海底の大山脈です。調査潜航はサイパンから海嶺沿いに北上しながら北緯19度の西フィリピン海盆東側、北緯22度の南大東海盆東側、北緯26度の大東海嶺東側で行われました。3箇所の海域では海嶺の基盤構成地殻が異なる可能性があるため、海底に露出している岩石を「しんかい6500」で目視観察、直接採取して、基盤構成や火山噴出物の重なり方を調べて、九州パラオ海嶺がどのようにしてできたかを解明することが目的です。
『岩石採取は露頭との格闘』
今回の調査潜航は海底の岩石の目視観察と直接採取が目的ですから、作業内容としては、いたって単純です。まず、過去の調査データから検討した目標の場所を、母船「よこすか」に搭載されているマルチビーム音響測深機で測深して実際の地形を確認して詳細な潜航コースを決定します。次に「しんかい6500」を潜航させて研究者が地形や岩石を確認して試料を採取する。これの繰り返しです。
ただし、この岩石採取が曲者です。海嶺を構成している岩石を調査するわけですから、ただ、海底に落ちている岩石を拾っても素性が判りません。地球とくっついている岩石が必要なのです。試料になる岩石は、海底の崖などの露頭から採取します。この露頭と呼ばれる岩石の塊は、長い年月の間にマンガンで覆われ、一様に黒く見えます。そのような露頭の凹凸を観察して、取れそうな場所をマニピュレータで掴んでもぎ取ります。「しんかい6500」の2本の腕、マニピュレータは強力でコンクリートブロックくらいなら握りつぶすことが可能ですが、マンガンで厚く覆われた岩石や固い岩石の場合には、全然、歯が立たず(実際には爪ですが)採取を断念して先に進むことも度々あります。
今回の5回の調査潜航では、各潜航で高低差500mから1,000m以上も崖を登りながら、合計81個、重量にして262kgの岩石をもぎ取りました。
『真夏のドック(中間検査工事)』
7月31日にJAMSTEC横須賀本部に戻った「しんかい6500」は、例年、12月から行っている中間検査工事を、これからの調査行動に備えて8月から開始します。この中間検査工事は11月上旬に終了し、その後、試験・訓練潜航を行って次の調査に備えます。
- 7月19日
- サイパン、出港
西フィリピン海盆向け、回航 - 7月20日
- 回航(マリアナ諸島西方)
- 7月21日
- 事前調査、「しんかい6500」調査潜航(第1434回)
夜間、広域サーベイ - 7月22日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1435回)
夜間、広域サーベイ - 7月23日
- 広域サーベイ
- 7月24日
- 回航(沖ノ鳥島東方)
南大東海盆海域着後、事前調査 - 7月25日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1436回)
夜間、広域サーベイ - 7月26日
- 回航(九州パラオ海嶺、北緯25度付近)
大東海嶺海域着後、事前調査 - 7月27日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1437回)
夜間、広域サーベイ - 7月28日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1438回)
夜間、広域サーベイ - 7月29日
- 回航(鳥島西方)
- 7月30日
- 回航(御蔵島南西方)
船内セミナー - 7月31日
- 横須賀港、入港
『九州パラオ海嶺の調査』
サイパンで研究者チームの入れ替えを行い7月19日、「よこすか」と「しんかい6500」は九州パラオ海嶺の調査のため、最初の調査海域である沖ノ鳥島の南側、約110kmの西フィリピン海盆東側に向けて出航しました。今回の調査海域の九州パラオ海嶺は文字通り、太平洋の南にあるパラオ諸島から沖ノ鳥島を通り九州の南東まで全長3,000kmに渡って連なる海底の大山脈です。調査潜航はサイパンから海嶺沿いに北上しながら北緯19度の西フィリピン海盆東側、北緯22度の南大東海盆東側、北緯26度の大東海嶺東側で行われました。3箇所の海域では海嶺の基盤構成地殻が異なる可能性があるため、海底に露出している岩石を「しんかい6500」で目視観察、直接採取して、基盤構成や火山噴出物の重なり方を調べて、九州パラオ海嶺がどのようにしてできたかを解明することが目的です。
『岩石採取は露頭との格闘』
今回の調査潜航は海底の岩石の目視観察と直接採取が目的ですから、作業内容としては、いたって単純です。まず、過去の調査データから検討した目標の場所を、母船「よこすか」に搭載されているマルチビーム音響測深機で測深して実際の地形を確認して詳細な潜航コースを決定します。次に「しんかい6500」を潜航させて研究者が地形や岩石を確認して試料を採取する。これの繰り返しです。
ただし、この岩石採取が曲者です。海嶺を構成している岩石を調査するわけですから、ただ、海底に落ちている岩石を拾っても素性が判りません。地球とくっついている岩石が必要なのです。試料になる岩石は、海底の崖などの露頭から採取します。この露頭と呼ばれる岩石の塊は、長い年月の間にマンガンで覆われ、一様に黒く見えます。そのような露頭の凹凸を観察して、取れそうな場所をマニピュレータで掴んでもぎ取ります。「しんかい6500」の2本の腕、マニピュレータは強力でコンクリートブロックくらいなら握りつぶすことが可能ですが、マンガンで厚く覆われた岩石や固い岩石の場合には、全然、歯が立たず(実際には爪ですが)採取を断念して先に進むことも度々あります。
今回の5回の調査潜航では、各潜航で高低差500mから1,000m以上も崖を登りながら、合計81個、重量にして262kgの岩石をもぎ取りました。
『真夏のドック(中間検査工事)』
7月31日にJAMSTEC横須賀本部に戻った「しんかい6500」は、例年、12月から行っている中間検査工事を、これからの調査行動に備えて8月から開始します。この中間検査工事は11月上旬に終了し、その後、試験・訓練潜航を行って次の調査に備えます。
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7月21日 No.1434DIVE
- 潜航海域:西フィリピン海盆
- 観察者:石塚 治(産業技術総合研究所)
- 船長:植木 博文
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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7月22日 No.1435DIVE
- 潜航海域:西フィリピン海盆
- 観察者:下田 玄(産業技術総合研究所)
- 船長:大西 琢磨
- 船長補佐:田山 雄大
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7月25日 No.1436DIVE
- 潜航海域:南大東海盆
- 観察者:坂本 泉(東海大学)
- 船長:松本 恵太
- 船長補佐:石川 暁久
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7月27日 No.1437DIVE
- 潜航海域:大東海嶺
- 観察者:谷 健一郎(国立科学博物館)
- 船長:大西 琢磨
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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7月28日 No.1438DIVE
- 潜航海域:大東海嶺
- 観察者:海野 進(金沢大学)
- 船長:植木 博文
- 船長補佐:石川 暁久
佐々木 義高(運航チーム副司令)