「しんかい6500」研究航海 YK16-E02 レポート
インド洋調査、後半戦
2016/2/16 - 3/4
【航海情報】
『サイクロン発生による影響』
インド洋に発生するサイクロン(台風)は大型で勢力がなかなか衰えません。また、インド洋の南半球側では風や波を遮る陸地も少ないため、遠くまでサイクロンが影響を及ぼします。今回も、2月11日にマダガスカル島の東側でサイクロン「DAYA」が、14日には調査海域の東側、東経80度付近でサイクロン「URIAH」が発生しました。「DAYA」は2日後の13日には勢力が衰えて調査に影響はありませんでしたが、「URIAH」はゆっくりと西に進んできたため、2月16日には、中央インド洋海嶺南部の調査海域にも影響を及ぼし、潜航調査には厳しい海況となってきました。そこで中央インド洋海嶺北側に移動してサイクロンの影響を避けながら可能な調査をおこなうことにしました。
ポートルイス港を出港後の調査計画では、中央インド洋海嶺で潜航調査を行いながら、南西インド洋海嶺の気象海象の条件が良い時に、移動して潜航調査をする予定でした。しかし、この避航により南西インド洋海嶺へ移動して調査を行うには日程が厳しくなり計画の変更が必要になりました。
『調査の再開』
サイクロン「URIAH」は進路を西から反時計回りに南東へ変えながら移動したので、調査海域の北側から海況が回復しだしました。そこで、2月20日から中央インド洋海嶺南緯14度付近で調査を再開しました。調査目的は航海前半と同じ、新しい熱水噴出域の捜索です。中央インド洋海嶺の熱水噴出域では、その周辺200mくらいの範囲に近づくと海底の岩石に白いイソギンチャクが付着しだし熱水噴出域の目印になっています。また、熱水噴出域に特有のエビが漂流していたりもします。今回も前半戦の調査結果と海底地形、化学センサーのデータを検討して捜索コースを決め、熱水噴出域や兆候を探しました。その捜索範囲は5回の調査潜航で合計22.9km(第1452回潜航:5km、第1453回潜航:5.8km、第1454回潜航:3.9km、第1455回潜航:4.1km、第1456回潜航:4.1km)。毎潜航、主蓄電池の規定放電量まで航走して捜索しましたが、熱水噴出域やその兆候も見つかりませんでした。しかし、調査した海域で観測される熱水噴出域に似たデータは熱水噴出とは別の現象が要因であると推測される情報が得られたようです。
『熱水噴出域で試料採取』
サイクロンの勢力が衰え、南側の調査海域の海況が回復した2月26日からは、熱水噴出域に移動して第1457回潜航は「エドモンドフィールド」で、2月27日の第1458回潜航は「かいれいフィールド」で潜航調査をおこないました。前半戦ではサイクロンの影響で調査途中に海域を離れてしまったので、十分な生物試料が採取されませんでした。このため、両方の熱水噴出域で研究に必要な生物試料の採取が最優先の作業となりました。
生物試料は「しんかい6500」をチムニー(熱水噴出孔)のすぐ前に止めてマニピュレータを使用して採取するのですが、どちらの熱水噴出域にあるチムニー(熱水噴出孔)も、熱水に群がるエビがチムニーの表面を覆いつくし目的の生物がどこにいるか探すのも大変な状況です。また、あまりにもエビの数が多く、生きたまま生物を採取する「スラープガン」と呼ばれる吸引式の生物捕獲装置の収納用水槽も目的の生物を吸う前に大量のエビを吸ってしまい、捕獲する場所が無くなってしまいます。
そこで、必要な生物の居場所を探すため、またエビを払うのに役立つのが「ホーキ」です。普通の「ホーキ」をマニピュレータで持ち易いようにしたものですが、これで生物のいそうな場所のエビを掃いたり、あおいだりします。すると、しばらくはエビがいなくなるので、その隙に狙った生物を吸い取ります。前半戦で、生息場所が以前と変わって、なかなか確認できなかった鉄のうろこを持つ巻貝「スケーリーフット」の隠れ家も探し出し、必要とする生物試料は全て採取しました。
『調査終了、ポートルイス入港、日本へ』
2月27日、予定されていた全ての潜航調査(「YKDT」2回、「しんかい6500」12回)を終了した「よこすか」は進路をモーリシャスに向けました。回航中は真夏のモーリシャスから初春の日本に戻ることになる「しんかい6500」の各機器を温度差に対応できるように調整したり、荒天に備えて機材の移動・固縛などの作業をおこないました。
3月2日、ポートルイス港に入港。インド洋航海、3回目の寄港となります。ここで、「よこすか」は最後の燃料・食料の補給を行い3月4日に日本へ向けて出港します。研究者、運航チームは一足先に下船して日本に帰り、3月29日に横須賀港へ帰港する「よこすか」を待つことになります。
「しんかい6500」インド洋での着揚収の様子 ※船上での撮影のため、映像が大きく揺れます。ご注意ください。
- 2月16日
- 中央インド洋海嶺北部向け回航(ロドリゲス島東方沖)
- 2月17日
- 中央インド洋海嶺北部向け回航、広域サーベイ
- 2月18日
- 海況不良のため、潜航中止
広域サーベイ、サイクロン避航開始 - 2月19日
- サイクロン避航
中央インド洋海嶺調査海域移動 - 2月20日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1452回)
夜間、広域サーベイ - 2月21日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1453回)
夜間、広域サーベイ - 2月22日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1454回)
夜間、漂泊 - 2月23日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1455回)
夜間、漂泊 - 2月24日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1456回)
揚収後、中央インド洋海嶺エドモンドフィールド向け回航開始 - 2月25日
- 中央インド洋海嶺エドモンドフィールド向け回航(ロドリゲス島東方)
- 2月26日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1457回)
夜間、広域サーベイ - 2月27日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1458回)
揚収後、モーリシャス向け回航開始 - 2月28日
- モーリシャス向け回航(ロドリゲス島南東方)
- 2月29日
- モーリシャス向け回航(ロドリゲス島南方沖)
船長主催、打ち上げバーベキュー - 3月1日
- モーリシャス向け回航(ロドリゲス島南西方沖)
- 3月2日
- モーリシャス、ポートルイス港、入港
- 3月4日
- 運航チーム下船、ポートルイス港、出港
『サイクロン発生による影響』
インド洋に発生するサイクロン(台風)は大型で勢力がなかなか衰えません。また、インド洋の南半球側では風や波を遮る陸地も少ないため、遠くまでサイクロンが影響を及ぼします。今回も、2月11日にマダガスカル島の東側でサイクロン「DAYA」が、14日には調査海域の東側、東経80度付近でサイクロン「URIAH」が発生しました。「DAYA」は2日後の13日には勢力が衰えて調査に影響はありませんでしたが、「URIAH」はゆっくりと西に進んできたため、2月16日には、中央インド洋海嶺南部の調査海域にも影響を及ぼし、潜航調査には厳しい海況となってきました。そこで中央インド洋海嶺北側に移動してサイクロンの影響を避けながら可能な調査をおこなうことにしました。
ポートルイス港を出港後の調査計画では、中央インド洋海嶺で潜航調査を行いながら、南西インド洋海嶺の気象海象の条件が良い時に、移動して潜航調査をする予定でした。しかし、この避航により南西インド洋海嶺へ移動して調査を行うには日程が厳しくなり計画の変更が必要になりました。
『調査の再開』
サイクロン「URIAH」は進路を西から反時計回りに南東へ変えながら移動したので、調査海域の北側から海況が回復しだしました。そこで、2月20日から中央インド洋海嶺南緯14度付近で調査を再開しました。調査目的は航海前半と同じ、新しい熱水噴出域の捜索です。中央インド洋海嶺の熱水噴出域では、その周辺200mくらいの範囲に近づくと海底の岩石に白いイソギンチャクが付着しだし熱水噴出域の目印になっています。また、熱水噴出域に特有のエビが漂流していたりもします。今回も前半戦の調査結果と海底地形、化学センサーのデータを検討して捜索コースを決め、熱水噴出域や兆候を探しました。その捜索範囲は5回の調査潜航で合計22.9km(第1452回潜航:5km、第1453回潜航:5.8km、第1454回潜航:3.9km、第1455回潜航:4.1km、第1456回潜航:4.1km)。毎潜航、主蓄電池の規定放電量まで航走して捜索しましたが、熱水噴出域やその兆候も見つかりませんでした。しかし、調査した海域で観測される熱水噴出域に似たデータは熱水噴出とは別の現象が要因であると推測される情報が得られたようです。
『熱水噴出域で試料採取』
サイクロンの勢力が衰え、南側の調査海域の海況が回復した2月26日からは、熱水噴出域に移動して第1457回潜航は「エドモンドフィールド」で、2月27日の第1458回潜航は「かいれいフィールド」で潜航調査をおこないました。前半戦ではサイクロンの影響で調査途中に海域を離れてしまったので、十分な生物試料が採取されませんでした。このため、両方の熱水噴出域で研究に必要な生物試料の採取が最優先の作業となりました。
生物試料は「しんかい6500」をチムニー(熱水噴出孔)のすぐ前に止めてマニピュレータを使用して採取するのですが、どちらの熱水噴出域にあるチムニー(熱水噴出孔)も、熱水に群がるエビがチムニーの表面を覆いつくし目的の生物がどこにいるか探すのも大変な状況です。また、あまりにもエビの数が多く、生きたまま生物を採取する「スラープガン」と呼ばれる吸引式の生物捕獲装置の収納用水槽も目的の生物を吸う前に大量のエビを吸ってしまい、捕獲する場所が無くなってしまいます。
そこで、必要な生物の居場所を探すため、またエビを払うのに役立つのが「ホーキ」です。普通の「ホーキ」をマニピュレータで持ち易いようにしたものですが、これで生物のいそうな場所のエビを掃いたり、あおいだりします。すると、しばらくはエビがいなくなるので、その隙に狙った生物を吸い取ります。前半戦で、生息場所が以前と変わって、なかなか確認できなかった鉄のうろこを持つ巻貝「スケーリーフット」の隠れ家も探し出し、必要とする生物試料は全て採取しました。
『調査終了、ポートルイス入港、日本へ』
2月27日、予定されていた全ての潜航調査(「YKDT」2回、「しんかい6500」12回)を終了した「よこすか」は進路をモーリシャスに向けました。回航中は真夏のモーリシャスから初春の日本に戻ることになる「しんかい6500」の各機器を温度差に対応できるように調整したり、荒天に備えて機材の移動・固縛などの作業をおこないました。
3月2日、ポートルイス港に入港。インド洋航海、3回目の寄港となります。ここで、「よこすか」は最後の燃料・食料の補給を行い3月4日に日本へ向けて出港します。研究者、運航チームは一足先に下船して日本に帰り、3月29日に横須賀港へ帰港する「よこすか」を待つことになります。
「しんかい6500」インド洋での着揚収の様子 ※船上での撮影のため、映像が大きく揺れます。ご注意ください。
-
2月20日 No.1452DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 海域7
- 観察者:Christpher N. Roterman(オックスフォード大学)
- 船長:松本 恵太
- 船長補佐:植木 博文
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2月21日 No.1453DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 海域7
- 観察者:Leigh Marsh(サザンプトン大学)
- 船長:齋藤 文誉
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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2月22日 No.1454DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 海域7
- 観察者:Julia D. Sigwart(クイーンズ大学)
- 船長:植木 博文
- 船長補佐:石川 暁久
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2月23日 No.1455DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 海域7
- 観察者:眞壁 明子(JAMSTEC)
- 船長:松本 恵太
- 船長補佐:千田 要介
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2月24日 No.1456DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 海域7
- 観察者:宮崎 征行(JAMSTEC)
- 船長:佐々木 義高
- 船長補佐:小椋 徹也
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2月26日 No.1457DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 エドモンドフィールド
- 観察者:Chong Chen(JAMSTEC)
- 船長:植木 博文
- 船長補佐:石川 暁久
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2月27日 No.1458DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 かいれいフィールド
- 観察者:高井 研(JAMSTEC)
- 船長:齋藤 文誉
- 船長補佐:鈴木 啓吾
佐々木 義高(運航チーム副司令)
3年ぶりのインド洋調査に出港
2016/2/4 - 2/15
【航海情報】
『ポートルイス港は調査船がいっぱい』
昨年12月14日に横須賀港を出港した「よこすか」は、1月7日にモーリシャスのポートルイス港に寄港しました。ここで研究者、「うらしま」運航チームと合流して、1月11日から1月31日までの3週間、深海巡航探査機「うらしま」による中央インド洋海嶺の熱水探査を行って、再びポートルイス港に寄港しました。この港は市街地に隣接しているため交通の便が良く、港湾施設、補給設備も整っており、寄港地として便利な港です。このため港は、荷役や補給をするいろいろな漁船や貨物船、観光のために寄港する豪華客船などで、いつも混雑しています。モーリシャスは南半球にあるので、季節が日本とは逆で今が夏になります。冬季と比べて、海況が比較的安定しているので「よこすか」以外にも南西インド洋や南極方面の調査に赴く、フランス、アメリカ、中国、インドの調査船が、研究者の乗船待ちや物資補給のために着岸していました。(写真参照)
『ポートルイス出港、調査開始』
2月4日、「よこすか」はモーリシャスの北東約550海里にある中央インド洋海嶺に向けてポートルイス港を出港しました。調査航海の目的は南西インド洋海嶺と中央インド洋海嶺で確認されている熱水噴出域で「しんかい6500」により生物や熱水などの試料を採取して化学合成生態系の構造や機能の多様性について明らかにすることです。出港時の気象予報ではモーリシャスより南側にある南西インド洋海嶺、中央インド洋海嶺南部では波浪が大きく調査を行うには厳しい状況だったので、中央インド洋海嶺北側の海域から調査を開始しました。
最初に向かった中央インド洋海嶺の南緯14度付近は前行動で「うらしま」により熱水探査をおこない、熱水噴出域の場所が3km四方程度に絞り込まれています。
2月7日、8日は、深海曳航調査システム「よこすかディープ・トウ」(以下、「YKDT」)により、「うらしま」調査で絞り込んだ範囲内にある活動的な熱水噴出域の兆候を捉えるため曳航調査をおこないました。2日間の調査で約10Km、「YKDT」を曳航してTVカメラや各種センサーで海底の状況を詳細に観察、捜索しました。
2月9日からは調査を「しんかい6500」潜航調査に切り替えて熱水噴出域捜索としました。「うらしま」のデータに「YKDT」で得られた情報も加えて、熱水噴出域の捜索おこない、第1447回潜航では航走距離が約2km、2月10日の第1448回潜航では約5Kmの海底を詳細に目視観察しましたが、活動的な熱水噴出域が存在する兆候は確認することができませんでした。
『3年ぶりの中央インド洋海嶺南部の調査』
気象予報によると中央インド洋海嶺南部の海況が回復しだしたので2月10日の潜航調査終了後に南の調査海域に向けて移動を開始し、3日後の2月13日、海況の回復に合わせて「かいれいフィールド」に到着しました。早速、事前調査を開始して、第1449回潜航をおこないました。この場所は3年前に世界一周航海「QUELLE 2013」で訪れたのですが、海況不良で1度しか潜航調査がおこなえず、その時に設置された研究機材が回収されていません。3年前と同じ調査コースをたどり設置した機材を回収しながら、現在の熱水噴出域の観察、データ収集、試料採取をおこないました。
ここでは、翌日の2月14日も第1450回潜航をおこない試料の採取や研究機材を設置しました。「かいれいフィールド」は2001年に発見されてから今回で5回目の調査となります。これまでの潜航調査により、チムニーやブラックスモーカーなどの特異点の場所は、ほぼ確認され映像も記録されています。しかし発見後、15年が経過しても活発な活動が続いているため、チムニーの形状が変わっていたり、位置確認の目印に設置した反射テープ付マーカーブイが無くなっていたりして、目標物の確認に苦労しました。残っていたマーカーブイも、イソギンチャクや藻の様なバクテリアが付着して、番号が読めなかったり、光を反射しなかったりして、慎重に操船しないと見つけられない状態となっていました。
2月15日は調査海域を北へ移動して「エドモンドフィールド」で第1451回潜航をおこない、熱水噴出域の観察と試料採取をおこないました。ここには巨大なブラックスモーカーがあり、試料採取のため接近すると熱水噴出による海水の対流により「しんかい6500」の船体が吹き上げられたり、覗き窓の死角にある熱水噴出孔から噴出する熱水が船体にあたると外皮を一瞬のうちに焦がしたりするため、普段以上に周囲の状況に注意した操船が必要でした。
- 2月4日
- ポートルイス港(モーリシャス)、出港
- 2月5日
- 中央インド洋海嶺向け回航(ロドリゲス島北西方)
- 2月6日
- 中央インド洋海嶺向け回航(ロドリゲス島北方)
- 2月7日
- 調査海域到着、事前調査
「YKDT」曳航調査(第174回) - 2月8日
- 「YKDT」曳航調査(第175回)
夜間、広域サーベイ - 2月9日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1447回)
夜間、広域サーベイ - 2月10日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1448回)
揚収後、中央インド洋海嶺かいれいフィールド向け回航開始 - 2月11日
- 中央インド洋海嶺かいれいフィールド向け回航(ロドリゲス島東方)
- 2月12日
- 中央インド洋海嶺かいれいフィールド向け回航(ロドリゲス島南東沖)
- 2月13日
- 事前調査、「しんかい6500」調査潜航(第1449回)
- 2月14日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1450回)
揚収後、中央インド洋海嶺エドモンドフィールド向け回航開始 - 2月15日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1451回)
揚収後、中央インド洋海嶺北部に回航開始
『ポートルイス港は調査船がいっぱい』
昨年12月14日に横須賀港を出港した「よこすか」は、1月7日にモーリシャスのポートルイス港に寄港しました。ここで研究者、「うらしま」運航チームと合流して、1月11日から1月31日までの3週間、深海巡航探査機「うらしま」による中央インド洋海嶺の熱水探査を行って、再びポートルイス港に寄港しました。この港は市街地に隣接しているため交通の便が良く、港湾施設、補給設備も整っており、寄港地として便利な港です。このため港は、荷役や補給をするいろいろな漁船や貨物船、観光のために寄港する豪華客船などで、いつも混雑しています。モーリシャスは南半球にあるので、季節が日本とは逆で今が夏になります。冬季と比べて、海況が比較的安定しているので「よこすか」以外にも南西インド洋や南極方面の調査に赴く、フランス、アメリカ、中国、インドの調査船が、研究者の乗船待ちや物資補給のために着岸していました。(写真参照)
『ポートルイス出港、調査開始』
2月4日、「よこすか」はモーリシャスの北東約550海里にある中央インド洋海嶺に向けてポートルイス港を出港しました。調査航海の目的は南西インド洋海嶺と中央インド洋海嶺で確認されている熱水噴出域で「しんかい6500」により生物や熱水などの試料を採取して化学合成生態系の構造や機能の多様性について明らかにすることです。出港時の気象予報ではモーリシャスより南側にある南西インド洋海嶺、中央インド洋海嶺南部では波浪が大きく調査を行うには厳しい状況だったので、中央インド洋海嶺北側の海域から調査を開始しました。
最初に向かった中央インド洋海嶺の南緯14度付近は前行動で「うらしま」により熱水探査をおこない、熱水噴出域の場所が3km四方程度に絞り込まれています。
2月7日、8日は、深海曳航調査システム「よこすかディープ・トウ」(以下、「YKDT」)により、「うらしま」調査で絞り込んだ範囲内にある活動的な熱水噴出域の兆候を捉えるため曳航調査をおこないました。2日間の調査で約10Km、「YKDT」を曳航してTVカメラや各種センサーで海底の状況を詳細に観察、捜索しました。
2月9日からは調査を「しんかい6500」潜航調査に切り替えて熱水噴出域捜索としました。「うらしま」のデータに「YKDT」で得られた情報も加えて、熱水噴出域の捜索おこない、第1447回潜航では航走距離が約2km、2月10日の第1448回潜航では約5Kmの海底を詳細に目視観察しましたが、活動的な熱水噴出域が存在する兆候は確認することができませんでした。
『3年ぶりの中央インド洋海嶺南部の調査』
気象予報によると中央インド洋海嶺南部の海況が回復しだしたので2月10日の潜航調査終了後に南の調査海域に向けて移動を開始し、3日後の2月13日、海況の回復に合わせて「かいれいフィールド」に到着しました。早速、事前調査を開始して、第1449回潜航をおこないました。この場所は3年前に世界一周航海「QUELLE 2013」で訪れたのですが、海況不良で1度しか潜航調査がおこなえず、その時に設置された研究機材が回収されていません。3年前と同じ調査コースをたどり設置した機材を回収しながら、現在の熱水噴出域の観察、データ収集、試料採取をおこないました。
ここでは、翌日の2月14日も第1450回潜航をおこない試料の採取や研究機材を設置しました。「かいれいフィールド」は2001年に発見されてから今回で5回目の調査となります。これまでの潜航調査により、チムニーやブラックスモーカーなどの特異点の場所は、ほぼ確認され映像も記録されています。しかし発見後、15年が経過しても活発な活動が続いているため、チムニーの形状が変わっていたり、位置確認の目印に設置した反射テープ付マーカーブイが無くなっていたりして、目標物の確認に苦労しました。残っていたマーカーブイも、イソギンチャクや藻の様なバクテリアが付着して、番号が読めなかったり、光を反射しなかったりして、慎重に操船しないと見つけられない状態となっていました。
2月15日は調査海域を北へ移動して「エドモンドフィールド」で第1451回潜航をおこない、熱水噴出域の観察と試料採取をおこないました。ここには巨大なブラックスモーカーがあり、試料採取のため接近すると熱水噴出による海水の対流により「しんかい6500」の船体が吹き上げられたり、覗き窓の死角にある熱水噴出孔から噴出する熱水が船体にあたると外皮を一瞬のうちに焦がしたりするため、普段以上に周囲の状況に注意した操船が必要でした。
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2月9日 No.1447DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 海域7
- 観察者:宮崎 征行(JAMSTEC)
- 船長:小椋 徹也
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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2月10日 No.1448DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 海域7
- 観察者:Alex David Rogers(オックスフォード大学)
- 船長:植木 博文
- 船長補佐:石川 暁久
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2月13日 No.1449DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 かいれいフィールド
- 観察者:宮崎 淳一(JAMSTEC)
- 船長:松本 恵太
- 船長補佐:齋藤 文誉
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2月14日 No.1450DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 かいれいフィールド
- 観察者:和辻 智郎(JAMSTEC)
- 船長:佐々木 義高
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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2月15日 No.1451DIVE
- 潜航海域:中央インド洋海嶺 エドモンドフィールド
- 観察者:高井 研(JAMSTEC)
- 船長:小椋 徹也
- 船長補佐:石川 暁久
佐々木 義高(運航チーム副司令)