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砂データ:安倍川

分析データ

河川名
安倍川(あべかわ)
採取地
静岡県静岡市葵区蕨野付近・葵区狩野橋付近
国名
日本
採取日時
2007年 3月 10日
採取者
静岡県静岡中央高等学校(教員:1名/生徒:5名)
分析者
横山一己博士(国立科学博物館)

コメント

安倍川(あべかわ)は静岡市と早川町/身延(みのぶ)町の境付近を主な源流とする全長53.3 km、流域面積567 km2 の河川で、河口から5 km のところで西から来る藁科(わらしな)川と合流し、駿河湾に注ぎます。伊豆島弧(とうこ)の衝突によって、今もなお隆起しつつある変動帯(南部フォッサマグナ)の活発な隆起ゆえに、河川長に対して高度差が非常に大きい急流となっています。このため安倍川には、普段は広い川幅に似合わないちょろちょろとした水流であるのに、台風等の大降水時には川幅いっぱいに水かさを増した濁流が一気に海に注ぐ荒々しい流れに変貌するという二面性を持っています。源流付近には日本三大崩れの一つである大谷崩(おおやくずれ)があり、大降水時に多量の土砂を供給します。このため、増水時に上流から一気に押し流されてきたこぶし大から人頭大の巨礫が、河口付近にまでゴロゴロしているという特徴的な景観を呈しています。

安倍川流域の地質について

安倍川本流、藁科川共に、流域には主として古第三紀の付加体(四万十累帯)が多く分布します。また、本流の中流域の四万十累帯には、蛇紋岩が見られると共に、変質してできた菱苦土鉱物からなる岩石も見られます。最上流部には、四万十累帯に貫入した花崗岩類(主に花崗閃緑岩)が分布しています。 花崗岩類の貫入に伴って、周辺には多くの金山が形成され、富士川を含め今でも砂金が取られています。

富士川、安倍川流域の地質図などはテキストを参照してください。(PDFファイル)

サンプル写真

安倍川の岩石

安倍川の岩石

富士川で見られる礫は、大きく3つのグループに分類できます。

グループ1:深海底でできた岩石

海洋プレートの基盤をなすカンラン岩(現在は変質し、蛇紋岩になっている)や玄武岩(現在は変質し、緑色岩になっている)と、その上に堆積したチャートや赤色泥岩。

グループ2:海溝付近で堆積した岩石

陸源の砂や礫からなる砂岩や礫岩。

グループ3:比較的新しい時代に陸上でできた火成岩類

花崗岩類(花崗閃緑岩や閃緑岩)や火山岩類(多くは変質して緑色岩になっている)。

顕微鏡写真

蛇紋岩

緑色岩

元は玄武岩であったが、熱水変質を受けて緑色岩となった。写真視野右側の3分の1は、沸石等で充填された脈である。
左が単ニコル、右がクロスニコルの写真

砂の主要鉱物

砂全体試料

石英と曹長石(カルシウムを含まない斜長石)が主要な鉱物です。全体に重鉱物の占める割合は少なく、砂粒子の多くが砂岩や弱変成岩に由来するものであると考えられます。 富士川との違いは、斜長石(曹長石を除く)がないことです。これは、安倍川流域には富士山などの新しい火山岩がないためです。

安倍川(狩野橋)の鉱物 安倍川(蕨野)の鉱物

重鉱物

単斜輝石、チタン鉄鉱、スピネルが主要な鉱物で、次いで角閃石、エピドート、ジルコン、黄鉄鉱などが含まれます。斜方輝石がほとんど含まれないことから、この流域への火山灰の寄与は非常に少ないと言えます。単斜輝石は、緑色岩(変質した玄武岩)起源、スピネルは蛇紋岩に由来するものです。

重鉱物

斜方輝石の化学組成

安倍川にはほとんど含まれない斜方輝石ですが、数少ない分析値はマグネシウム含有量(Mg値)が70付近にピークを持つ分布特性を示しており、これは富士川の2つのピーク(68と72)の間に相当します。富士川のものとは異なる火山に由来するものと考えられます。

安倍川の斜方輝石の化学組成

年代

モナザイト年代分析を行った結果、3億年より若いグループと、18–20億年くらいの年代を持つグループの2つに分けられます。安倍川河川流域に分布する花崗岩類は1千万年前後のものです。砂から分析されたモナザイトは、いずれもそれよりも古いものであり、四万十帯の砂岩に由来するものと考えられます。日本の多くの地域で見られる砂岩と類似の傾向です。18億年を超えるような岩石は日本には無く、砂の堆積時に大陸から運ばれてきたものです。

安倍川のモナザイト年代
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