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地球深部探査船「ちきゅう」

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第3回野外授業 静岡

2007年3月10日にSand for Students(略してS4S)@富士川・安倍川を開催しました。第3回目となる今回の野外授業に参加してくれたのは、静岡県静岡中央高校の生徒と先生の皆さん。野外授業の様子をフォトレポートでお送りします。

授業概要

開催日
2007年 3月 10日
試料採取場所
富士川河川敷(静岡県庵原郡富士川町富士川橋付近)
安倍川河川敷(静岡県静岡市葵区蕨野付近・葵区狩野橋付近)
実施校
静岡県立静岡中央高等学校
主催
海洋研究開発機構(JAMSTEC)
統合国際深海掘削計画(IODP)
後援
文部科学省
講師・スタッフ
横山一己(国立科学博物館)
宮下敦(成蹊高校)
真砂英樹 博士(海洋研究開発機構地球深部探査センター)

レポート

野外実習

さっそくバスに乗り込み授業開始

さっそくバスに乗り込み授業開始。今回の野外授業も、第3回目にして名物先生、とひそかにS4Sスタッフが呼んでいる地質学者で国立科学博物館の横山一己先生にメイン講師をお願いしました。バスでの移動時間はそのまま質問タイムに。国際科学プログラムのIODPとは?地球深部探査船「ちきゅう」ってどんな科学調査をしているのか?はたまた船内の生活は?など(もちろん休憩タイムともなります。)

第1調査ポイントの富士川(富士川町富士川橋付近)に到着

第1調査ポイントの富士川(富士川町富士川橋付近)に到着。富士山が望める絶景ポイントです。

調査道具は全員で運びます

調査道具は全員で運びます。でも、この背中は講師の宮下先生(成蹊高校)。

地質図の読み方 普通の地図とは違い、見慣れない区分と色分けで、はじめは意味が全然わからない

地質図の読み方。普通の地図とは違い、見慣れない区分と色分けで、はじめは意味が全然わからない。

石を手に取り観察

石を手に取り、マジマジと観察することも日常の生活や学習ではあまりないものです。

石を組成の違いや形成年代ごと、いくつかのグループに分けてみる

まずは、石を組成の違いや形成年代ごと、いくつかのグループに分けてみる。砂岩、泥岩、礫岩などの陸源堆積岩に、チャート、緑色岩などの海の石、後からそれらに貫入した閃緑岩など。 やはり富士山から噴出してきた溶岩が目に付く。富士山の石は、マグマが固まる時にガス成分が抜けた跡の孔(あな)がたくさん開いているのが特徴。

富士山の石

これが、その富士山の石。「ごく最近」できた安山岩と玄武岩。と解説する先生の「最近」とは何百年前、何千年前というスケール。これが地質学の時間の感覚。

いよいよ砂の調査開始

さて、岩石の種類や形成の歴史に触れた後は、いよいよ砂の調査開始。ただの砂、と思っていたものが、実はとても奥が深い。

水中でお盆を回して軽い鉱物を飛ばし、重い鉱物を残す「椀かけ」

砂の中に含まれる重鉱物(比重の大きい鉱物)の種類を調べるために、「椀かけ」という方法を用いる。水中でお盆を回して軽い鉱物を飛ばし、重い鉱物を残すのだ。

重鉱物の集め方の見本

まずは横山先生が重鉱物の集め方を見本で見せてくれる。水の中でお盆を回すだけ。簡単そうに見えるのだが、実はコツがいる。

黒く最後まで残っているのが重鉱物

黒く最後まで残っているのが重鉱物と呼ばれる比重の重い鉱物。やはり、富士山起源の磁鉄鉱が多いようだ。

生徒のみんなもやってみよう

さあ、生徒のみんなもやってみよう。もちろん初挑戦です。

比重の重い鉱物だけを残すのが意外と難しい

ただ、水の中で盆を回すだけ、なのですが、比重の重い鉱物だけを残すのが意外と難しい。うっかりすると全部流してしまうことも。繰り返し練習してコツをつかもう。

気持ちの良い調査日和

心配された雨も降らず、天気に恵まれました。気持ちの良い調査日和。

川原に菜の花が咲いていました

3月ともなると川原に菜の花が咲いていました。季節の変化を肌で感じられるのも、野外授業ならでは。

富士川の重鉱物を無事採取

初めての椀かけでしたが、富士川の重鉱物を無事採取。学校に持ち帰って詳細に分析します。

記念撮影に臨んだところ、見る見る雲が現れ肝心の富士山が隠れてしまい・・・。

富士川といえば富士山だ!とS4Sスタッフが張り切って記念撮影に臨んだところ、見る見る雲が現れ肝心の富士山が隠れてしまい・・・。山の天気は気まぐれです。

安倍川上流(静岡市葵区蕨野)に移動して、まずはお弁当

調査地点を第2調査ポイント 安倍川上流(静岡市葵区蕨野)に移して、まずはお弁当タイム。外で食べれば格別においしい。これもまた野外授業の楽しみのひとつ。

安倍川の砂は、富士川と比べて何が違うのでしょうか

安倍川の砂は、先ほどの富士川と比べて何が違うのでしょうか?答えの解説は後回しにして、生徒の皆さんに考えてもらいながら、ここでも椀かけの練習をしてみよう。

上流にはむかし金山があって今でも砂金が見つかることも。

ところで、この上流にはむかし金山があって(日影沢金山跡)、今でも砂金が見つかることも。金は、熱水が冷えて固まる過程でできる方解石や石英の脈に付着していきます。この付近で360 gの金塊が見つかった記録があるとか。生徒の目の色が変わる!

重鉱物の見分け方もだんだん慣れてきた

砂金情報の効果か、重鉱物の見分け方もだんだん慣れてきた。

第3調査ポイント安倍川下流(静岡市狩野橋付近)

最後の調査地点である第3調査ポイント安倍川下流(静岡市狩野橋付近)は、先ほどの安倍川上流地点から約25キロ下ったポイントです。 ここでは、静岡の地質の成り立ちを、プレートテクトニクスの見地から解説。川原に転がっているただの砂や石であっても、何千、何万、あるいは何億年も前に、はるか太平洋の真ん中で誕生し、巡り巡って旅をして今ここに転がっているのです。これこそ地球のロマン。

講師の眞砂先生(JAMSTEC)

ところで、静岡周辺の山は、海山が陸地に付加したものが多く、緑色岩という海の石でできています。この石は砂岩や泥岩などに比べてカルシウムやマグネシウムに富み、おいしいミカンを育てるのに一役買っているのです、とは講師の眞砂先生(JAMSTEC)。

海洋底を形作る岩石を探し集めて、典型的な順序である海洋プレート層序を復元してみる

海洋底を形作る岩石を探し集めて、典型的な順序である「マントル-海洋地殻-遠洋性堆積物-陸源性堆積物」(海洋プレート層序)を復元してみる。深いところから順に、「カンラン岩(蛇紋岩)-ハンレイ岩-玄武岩(緑色岩)-チャート-泥岩-砂岩-礫岩」となった。海洋プレートの構成が感覚的につかめてきた。 富士川で特徴的だった、富士山由来の溶岩が安倍川ではみつからない。

3箇所目の作業ともなると、椀かけも手馴れたもの

3箇所目の作業ともなると、椀かけも手馴れたもの。重鉱物を集める意味合いもわかってきた(ような気もします)。

午後に入り通り雨が降ってきた

やはり天気予報のとおり、午後に入り通り雨が降ってきた。風も出てきて3月とはいえ少し肌寒く。気温の変化を肌で感じるのも、これまた野外授業の一面。

無事高校に戻ってきました

ちょっと予定時間をオーバーしましたが、怪我をすることもなく、無事高校に戻ってきました。「安全に家に帰るまでが野外授業です」というお決まりの文句を残して、野外授業はこれにて終了。しかし調査はまだまだ続きます。持ち帰った砂や石のサンプルの観察、分析が続きます。JAMSTECでも詳細に分析してデータをウェブに登録していきます。どんな結果が出るのか、乞うご期待。

レポーター:吉澤 理

レポーター:吉澤 理(Sand for StudentsコーディネーターにしてIODPエディケーション・アウトリーチ担当。海洋研究開発機構 地球深部探査センターのスタッフ)

今回使用したテキストブック

こちらからどなたでもダウンロードできます

謝辞

富士川・安倍川での野外授業は、以下の皆様のご理解・ご協力をいただき開催いたしました。ありがとうございました。

  • 富士川町中央公民館
  • 国土交通省富士川下流出張所
  • 国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所
  • 静岡市役所文化スポーツ部スポーツ振興課および静岡市横山地域の皆様
  • 国土交通省静岡河川事務所
  • 国土交通省中部地方整備局
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