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第18回野外授業 神奈川

2012年4月7日に、第18回となるSand for Students(略してS4S)野外実習@多摩川を開催しました。今回参加してくれたのは、神奈川県横浜市横浜サイエンスフロンティア高校の皆さん。野外授業の様子をフォトレポートでお送りします。

授業概要

開催日
2012年 4月 7日
試料採取場所
多摩川(神奈川県川崎市)
実施校
神奈川横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校
CDEX担当者
小俣 珠乃
備考
本実習は横浜サイエンスフロンティア高等学校スーパーサイエンスハイスクール(SSH)「理数地学」、「サイエンスリテラシーII」地球科学分野として行われました。

レポート

野外実習

まだまだ肌寒い季節ですがすばらしい晴天に恵まれました

本日も参加者の自己紹介から実習が始まります。まだまだ肌寒い季節ですがすばらしい晴天に恵まれました。
河川敷には上流の地層が崩れて流れてきた岩石がたくさん見られます。これらの岩石の観察にあたって、教科書の知識をまず確認します。

「岩石というのは大きく3種類に分類する事ができます。さて、その3種類をあげてください。」簡単なようですが、青空の下で教科書の知識を思い出すということは、体と頭の使い方が異なるためか意外と難しいのですね。ここの正解は堆積岩、火成岩、変成岩です。では、これから河川敷の岩石を実際に観察しながら分類していきます。

岩石の見た目の違いについて少し先生が説明した後、早速各自で種類の異なる岩石を一通り探します

岩石の見た目の違いについて少し先生が説明した後、早速各自で種類の異なる岩石を一通り探します。
この岩石とこの岩石は違うかな?
直前の雨の影響か、岩石の表面に細かい藻が乾燥したようなものが付着しており、河川の水で洗いながら岩石を確認します。
時間が経過すると、お互いに相談・確認し合う余裕が生まれてきました。

一通り集めました!

一通り集めました!
採取した岩石の種類を確認します。ちなみに、成果発表などで文章を書く場合、「拾ってきた石」とは表現せずに、「採取した調査(研究)用の岩石試料」と表現しましょう。

参加生徒各自が採取した岩石の種類を一つづつ確認します

参加生徒各自が採取した岩石の種類を一つづつ確認します。「流れたような葉理が見える岩石は砂岩といいます。これは、砂が順次堆積して、固まって岩石となりました。このような岩石は堆積岩に分類されます。」など、説明を聞きながら、泥岩、チャート、礫岩、火山岩など観察していきます。

メモをとりつつ観察

メモをとりつつ観察します。前回の多摩川実習で見られた、富士山や箱根起源の火山岩や深成岩、石灰岩が見つからなかったことが悔やまれますが、それよりも多摩川流域に広がる主な地質は砂岩、泥岩、チャートなど堆積岩であることを実感したことを大事にしましょう。授業の終わりにこれらの砂岩がどのようにしてできたのか、学びます。

Sand for Studentsの中でも一番人気が高い、椀掛けを行います

さて、次はSand for Studentsの中でも一番人気が高い、椀掛けを行います。河川敷の砂は上流の地層が細かくくだけて岩石となり、さらに細かくなって砂となります。砂の大きさになると鉱物として観察されることが増えるので、鉱物を観察する事により、河川流域の地質学的特徴を知る事ができます。

椀の中に残った砂を観察するとどのような鉱物が見られるでしょうか?

椀の中に残った砂を観察するとどのような鉱物が見られるでしょうか?

椀掛けに残った砂試料をサンプル袋に回収します

椀掛けに残った砂試料をサンプル袋に回収します。仲間と力を合わせて作業を行います。

一度目の椀掛け砂試料を採取して、2回目の椀掛けに取りかかります

一人がサンプル袋の口を開いてもち、もう一人はシャベルから椀に水を流すことでサンプル袋へ砂試料を流し込みます。

一度目の椀掛け砂試料を採取して、2回目の椀掛けに取りかかります。皆、水辺で一直線になって椀掛けを行います。

野外実習は終了

一通り椀掛けを行ったところで、椀掛けを行わない砂試料の採取も行い、野外実習は終了です。これから学校に戻ります。

屋内実習

採取した砂試料を水で洗い乾燥させてから顕微鏡実習を行います

学校に戻って屋内実習を始めます。採取した砂試料を水で洗い乾燥させてから顕微鏡実習を行います。

慣れた手つきでデジタルカメラで顕微鏡写真の撮影に挑戦します

慣れた手つきでデジタルカメラで顕微鏡写真の撮影に挑戦します。顕微鏡に撮影装置が備え付けられていなくても、オートフォーカスのカメラの場合、コツをつかみながら顕微鏡の接眼レンズに近づけて撮影すると、顕微鏡による拡大写真の撮影をすることができます。

生徒たちはスムーズに撮影

生徒たちはスムーズに撮影をしており、普段から、デジタルカメラをいろいろ活用している様子がうかがえました。

角閃石、斜方輝石、単斜輝石、かんらん石をしっかり観察しましょう

椀掛け砂試料の顕微鏡写真。眺めているだけであっと言う間に時間が経過していきます。

ガーネットなど目立つ鉱物をつい探してしまいますが、椀掛け砂試料で観察できる角閃石、斜方輝石、単斜輝石、かんらん石をしっかり観察しましょう。

竹串で鉱物をよりわけながら観察

竹串で鉱物をよりわけながら観察します。

一通り鉱物観察を行ったところで、小川先生の鉱物コレクションの観察を行います

一通り鉱物観察を行ったところで、小川先生の鉱物コレクションの観察を行います。テフラ中の菫青石、新燃岳の火山灰、ローム層の長石、南極の砂など、場所によって砂は全く異なる鉱物でできていることを改めて実感します。

最後に日本列島の形成史と本日の観察結果について考察を行います

最後に日本列島の形成史と本日の観察結果について考察を行います。
本日、多摩川河川敷で一番目にした岩石は、砂岩、泥岩、チャートなど堆積岩でした。これらの岩石は海洋プレートが動きながら堆積し、海洋プレートが大陸プレートに沈み込む時、付加体として陸側プレートに押し付けられた地層たちと考えられています。多摩川の上流には、この堆積岩たちは四万十帯、秩父帯と言われる付加体として形成している地質帯が広がっています。これらの地質帯が岩石の供給源になっている可能性が高いと考えられます。一方で観察した砂鉱物たちは斜方輝石が自形で見られる事などから、関東ローム層中の火山灰から供給されていると考えられています。岩石と砂で異なった供給源を考えるところは少し難しい内容ですが、観察の楽しさを実感できたのではないかと思います。

講師コメント

当日の最低気温は1℃と非常に寒い一日でしたが、参加者の皆さんは野外実習でも熱心に観察を行いました。午後の屋内実習では海洋コアの観察に夢中になる様子が印象的でした。和歌山県には地学の勉強にとても良い地層や露頭がたくさんあるので、生徒の皆さんが引き続き地学の勉強を続けてくれるとうれしく思います。

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