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北極環境変動総合研究センター(IACE)

セミナーのお知らせ

[北極環境・気候・海洋生態系セミナーのお知らせ]

日時
6月3日(月)15:00〜16:00
場所
横須賀本部 海洋研究棟2階会議室(204号室)
発表者
渡邉 英嗣 (北極環境変動総合研究センター 北極環境・気候研究グループ)
タイトル
北極海におけるアイスアルジー基礎生産量のモデル間相互比較
概要
アイスアルジーは主に海氷底面(海水との境界面)に付着する藻類の総称で,海氷が存在する北極海・南極海・オホーツク海に幅広く生息している.北極海中央部では,アイスアルジーの光合成による基礎生産量が海水中の浮遊性植物プランクトンと同程度になることもある.植物プランクトンブルーム開始前の春先には動物プランクトンや底生生物の餌になることから,高次捕食者(端脚類やカイアシ類など)の生活史にとっても重要である.夏季の海氷融解後には凝集したアイスアルジー由来の有機物粒子が海水中を高速で沈降することから,大気中の二酸化炭素を海洋中深層に隔離する働きも無視できない.このようにアイスアルジーは海氷域における海洋生態系や物質循環の観点からも鍵となる植物種だが,人工衛星や船舶による観測が困難であることから,定量的な見積もりには不確定性が大きく残っている.
本研究では,北極海全域を対象とした海氷海洋物理モデルCCSR Ocean Component Model (COCO) version 4.9に低次海氷海洋生態系モデルArctic and North Pacific Ecosystem Model for Understanding Regional Oceanography (Arctic NEMURO) を結合させて,水平25km格子の中解像度版で1979年から2013年までの長期変動実験を行った.得られた結果をアラスカ大学・ビクトリア大学・ワシントン大学のモデル出力と相互比較することで,アイスアルジー基礎生産量の不確定性および時空間変動メカニズムを定量的に解析した.アイスアルジー基礎生産量は比較したモデル間で大きく異なっており,少なくとも1980年から2009年までの30年間において共通した長期トレンドは見られなかった.年間基礎生産量と春先の海氷厚の間には正と負の相関が両方見られたことから,安定した生息場所と海氷底面への十分な光の透過のバランスが基礎生産量の維持に必要であることがより具体的に示された.また春先の積雪や海氷が薄くなるのに伴ってブルーム時期が徐々に早まっており,一部ではブルームの早期化と年間基礎生産量の減少の間に高い相関が確認された.

[北極環境・気候・海洋生態系セミナーのお知らせ]

日時
6月3日(月)14:00〜15:00
場所
横須賀本部 海洋研究棟2階会議室(204号室)
発表者
小野寺 丈尚太郎 (北極環境変動総合研究センター 北極海洋生態系研究グループ)
タイトル
北極海カナダ海盆南西部とチュクチボーダーランドにおける沈降粒子輸送の経年観測
概要
北極海において、海氷減少をはじめとする水柱上部における海洋物理環境の変化は、低次生態系および物質循環の在り方に大きな影響を及ぼす。その動態を捉え、数値モデル実験の検証に使える実測データを得るため、海底固定型セジメントトラップ係留系を用いた時系列観測を2010年10月からほぼ毎年、北極海太平洋側の季節海氷域で実施してきた。沈降粒子に含まれる粒状有機物について、炭素・窒素の含有量やモル比、安定同位体データは、試料に含まれる同植物プランクトンを反映して変動した。また、沈降粒子フラックスの時系列変動は、太平洋起源水のカナダ海盆への流入やバロー海底谷の沖合で発達した海洋渦の西側への移流に対応していた。粒状有機物のチュクチ海から海盆域への輸送量や組成の変化は、将来の北極海の生態系や水産資源を検討するうえで基礎的な情報になると思われる。捕集された粒子の観察結果や現在進めている粒子径分布分析の一部結果についても触れたい。