
氏家恒太郎
筑波大学生命環境系地球進化科学専攻
准教授
限られた選択肢のなかで
今回の航海の二つある目標のうち,もう一つは断層帯の地質試料の回収である。
5月13日,地質試料を得るための掘削がはじまる。LWD(掘削同時検層)のデータが孔内を探る地図のかわりとなる。どの位置に断層があるのか,LWDによって特定されているからだ。当初,地質試料掘削時の熱が,温度計に影響を与えないよう,地質試料採取用はその孔から離れた位置となる予定だった。しかし温度計設置が航海中に行われなくなったことで,LWDの孔のすぐそばに地質試料採取用の孔を掘る事ができた。
「このことは大きな利点となりました」。地質試料の到着を待つ構造地質チームのリーダー,氏家恒太郎・筑波大学准教授はそう話す。海底下で地層は傾斜している。当初のようにLWDの孔からの距離が離れれば,その分,LWDデータとの違いは大きくなる。しかし今回はLWDの孔の近くで掘る事ができるので,LWDのデータをそのまま使うことができる。