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砂データ:有田川

分析データ

河川名
有田川(ありだがわ)
採取地
和歌山県紀ノ川市窪地区竹房橋右岸下流側
国名
日本
採取日時
2007年 9月 23日
採取者
大阪府立岸和田高等学校、和歌山県立海南高等学校
分析者
眞砂英樹・五十嵐智秋(海洋研究開発機構)

コメント

有田川は、高野山(楊柳山)を源流として、湯川川、白馬川、早月谷川など多くの支流を合流させながら、有田市まで全長67.2km を流れ下る、集水面積457km2の川です。有田川の名前の起源は「荒れた川」からきています。荒地を流れる川筋は常に流れを変え、定まりがなかったといいます。流路は鳥尾川のあたりを流れた弥生時代から、次第に流路が北へと移り、平安末期ごろから現在のようになったと言われています。

有田川流域の地質について

有田川流域の地質は、5つに大別できます。

1つ目は、高野山付近を中心とし、さらに清水から金屋の流域にみられる秩父累帯です。秩父累帯は先白亜系、いわゆる秩父古生層と白亜系とからなります。先白亜系は砂岩・頁岩・礫岩・チャート・石灰岩・緑色岩などからなり、石炭紀から三畳紀の堆積岩です。白亜系は砂岩、頁岩を主とし、礫岩や凝灰岩を伴います。

2つ目は、二川付近および金屋以西の流路の北側に分布する三波川変成帯です。砂質片岩、泥質片岩、珪質片岩、塩基性片岩を主として、若干の石灰質岩片、礫質岩片、変輝緑岩、変ハンレイ岩、超塩基性片岩類を伴います。

3つ目は、中南から板尾にかけておよび二川の下流を主とする地域で四万十累帯からなります。構成岩石は、秩父累帯と同じく、砂岩、頁岩を主としチャート、凝灰岩などを伴う白亜系です。

4つ目は、吉原から吉備町、下津野にかけて発達しているのは、約200万年前に形成された堅い地層で洪積層といいます。河川の中・下流域の流路に沿って発達する階段状の地形、河岸段丘が形成されています。河岸段丘は、かつて河底であった所が、地殻変動によって隆起し、その中央部に新たな流路が形成される、という過程を繰り返すことによって発達します。隆起が地震周期と関係していることも多く、また、段丘の発達史と津波性堆積物の関係を調べることで、過去の津波の規模を知ることができるなど、様々な情報をもたらしてくれます。

5つ目は、吉備町から小島にかけての吉備平野、有田市須谷、古江見などの地域に発達する沖積層で表層部は河川堆積物からなります。沖積層とは、約2 万年以降に形成された比較的新しい地層で、河川などにより運ばれた腐植土、泥土が堆積して形成される層です。日本の平野部の大部分は沖積層からなる平野です。また、沖積層には比較的最近の時代に噴火した火山に由来する火山灰も含まれています。

サンプル写真

有田川の岩石

有田川の岩石

有田川の川原には、四万十帯や秩父帯に由来する砂岩や泥岩などの堆積岩類と、三波川帯の変成岩類(砂質片岩、泥質片岩、緑色片岩、珪質片岩)が多く分布します。また、みかぶ帯に由来する緑色岩(弱い変成作用を受けた玄武岩)も多く観察されます。その他、若干のチャートや稀に蛇紋岩なども含まれており、これらは砂泥質岩主体とする四万十帯の中にブロックとして存在していたものであると考えられます。

偏光顕微鏡写真

砂岩

主に石英、長石と、岩片とからなり、若干の雲母類等を含む砂岩です。この砂岩は、構成粒子に角張った物が多く、粒径も比較的不揃いなのが特徴です。

砂岩

左が単ニコル、右がクロスニコルの写真

珪質片岩

主として石英のみからなる岩石(チャート等)が、沈み込み及び地表への上昇の過程で強い差応力を受けて変形したものです。この写真で言うと、上下方向の圧縮が強かった為に、水平方向に引き伸ばされたかっこうになっています。単ニコルの写真を見ると、水平方向に伸びた紡錘形をした石英がよく分かります。これらの石英粒子は、単ニコルで見ると単一の粒子のように見えますが、クロスニコルで見ると実は細かい粒子の集合体であることが分かります。

珪質片岩

左が単ニコル、右がクロスニコルの写真

砂の主要鉱物

砂全体試料

砂全体試料

石英が多く、次いでアルバイト(カルシウムを含まない斜長石)、白雲母、単斜輝石、斜長石(アルバイトを除く)、緑泥石と続きます。斜長石や白雲母は付加体堆積物から成る四万十帯、アルバイトや緑泥石は三波川変成帯、単斜輝石はみかぶ緑色岩体に由来するものと考えられます。

重鉱物

重鉱物

普通角閃石と単斜輝石が大半を占め、次いでエピドートやアクチノ閃石、緑泥石といった変成鉱物が多く含まれています。普通角閃石や単斜輝石は、主にみかぶ緑色岩帯からもたらされたものと考えられます。変成鉱物は、三波川変成帯に由来するものです。

有田川には代表的な火山灰起源の鉱物である斜方輝石が全く出現しません。このことは、この地域には火山灰がほとんどないし全く降っていないことを示すものです。

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