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砂データ:熊野川

分析データ

河川名
熊野川(くまのがわ)
採取地
和歌山県新宮市船地区新熊野大橋右岸
国名
日本
採取日時
2008年 11月 11日
採取者
和歌山県新宮市立熊野川中学校
分析者
倉本真一・眞砂英樹(海洋研究開発機構)

コメント

奈良県吉野郡天川村の大峰山脈、山上ヶ岳(さんじょうがたけ)、大普賢岳(だいふげんだけ)の辺りを源流とし、五條市、十津川村などを南流した後に和歌山県と三重県の県境辺りを通って新宮市で熊野灘に注ぐ、全長183km、流域面積 2,360km2の一級河川です。奈良県内では十津川(とつかわ)と呼ばれ、和歌山県に入って、大台ケ原を源流とする北山川と合流して熊野川となります。急峻な山岳地形を反映して、上流から下流に至るまで大きく蛇行しています。

サンプル写真

熊野川の岩石

熊野川の岩石

熊野川流域の地質は白亜紀~第三紀の付加体である四万十累帯と、その上に堆積した熊野層群の堆積岩類、及びそれらに貫入したりそれらの上に噴出した熊野酸性岩類の火成岩から構成されています。付加体である四万十累帯の岩石には、プレート沈み込み帯で強い力を受けながら形成された時にできた変形構造が顕著に見られるものもあります。熊野酸性岩類としては、マグマが地表に流出して冷え固まった流紋岩、地下のやや深い所で冷え固まった石英班岩、それに火山灰として降ったものが堆積直後の熱い内に自己の熱で融けた後再び固まった溶結凝灰岩などが見られます。

偏光顕微鏡写真

石英班岩(熊野酸性岩)

珪長質の半深成岩で花崗岩に似ていますが、花崗岩よりもやや浅い所でマグマが冷え固まったものです。深成岩である花崗岩は、全ての構成鉱物が同じくらいの大きさ(等粒状組織)ですが、この石英班岩では、石英や長石の斑晶の間(石基)を、やや細粒な石英が埋めている点が異なります。

石英班岩(熊野酸性岩)

左が単ニコル、右がクロスニコルの写真

四万十累帯のメランジュ

2種類以上の岩石が、ごちゃ混ぜになった岩石のことをメランジュ(混在岩)と言います。上の写真で透明な部分は元砂岩だった部分で、現在は変形を受けて細粒な石英の集合体に再結晶しています(下の拡大写真参照)。その他大部分を占める透明度の低い部分は元泥岩であった部分です。おそらくは泥と砂の互層として海底に堆積したものが、沈み込みもしくは上昇の過程で強い力を受けて変形し、ぐちゃぐちゃに混ざりあったことにより、このように泥質な部分の中に砂質な部分が混在する岩石になったと考えられます。

四万十累帯のメランジュ

左が単ニコル、右がクロスニコルの写真

砂の主要鉱物

砂全体試料

砂全体試料

石英が6割を占め、長石類(斜長石、カリ長石)と合わせてほとんどを占めます。斜長石の中では、カルシウムを含まない曹長石が比較的多く、弱い変成作用を被った四万十累帯に由来する物と考えられます。

重鉱物

重鉱物

9割近くをチタン鉄鉱が占め、残りは緑レン石、TiO2鉱物(ルチルもしくはアナテース)、ジルコンなどがわずかずつ産します。いずれも花崗岩等の酸性火成岩に多く含まれる鉱物です。

斜方輝石の化学組成

熊野川の砂に含まれる斜方輝石は自形性が良く、火山灰起源と考えられます。ほとんどの斜方輝石はマグネシウム値(= Mg / Fe2+ + Mg)44~52の狭い組成範囲に集中し(ピークは46~48)、ほぼ単一の火山灰を起源とすると考えられます。マグネシウム値64~70を持つ斜方輝石もいくらか見られますが、これは古座川の主要な斜方輝石の組成と一致します。

熊野川の斜方輝石の化学組成

年代

ジルコンのウラン - 鉛年代

非常に若い(<2500万年)年代を持つジルコンが卓越します。これらはおそらく1500万年前に噴出・貫入した熊野酸性岩に由来するものでしょう。それより数は少ないですが、1億年付近、2億年付近にもピークがあり、また18億年より古いものもいくらか見られます。こうした分布傾向は、日本の付加体中の砂岩に一般的なものであり、四万十累帯の砂岩に由来するものであると考えられます。

長良川のジルコンのウラン - 鉛年代
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