分析データ
- 河川名
- 鵡川(むかわ)
- 採取地
- 北海道勇払郡鵡川町
- 国名
- 日本
- 採取日時
- 2005年 10月 2日
- 採取者
- 遺愛女子中学高等学校(教員:2名/生徒:5名)
- 分析者
- 横山一己博士(国立科学博物館)
コメント
鵡川の流域には、変成岩、堆積岩、火山岩など各種の岩石が分布しています。河原の主な岩石は、砂岩、チャート、泥岩、蛇紋岩、緑色岩で、かこう岩やはんれい岩が稀に見られます。
北海道南部の地質:北海道地図.pdf(548KB)
海道西部の最近の大きな火山噴火:北海道火山灰.pdf(244KB)
サンプル写真
鵡川の岩石

偏光顕微鏡写真
かんらん岩

多くが蛇紋岩に変わっている。
(左が単ニコル、右がクロスニコルの写真)
緑色岩

弱い変成作用を受けた火山岩。
(左が単ニコル、右がクロスニコルの写真)
砂の主要鉱物
砂全体試料

砂中には、火山ガラスを含めた火山岩片が多くみられますが、主要な鉱物としては、蛇紋石、石英、斜長石です。蛇紋石は、流域の蛇紋岩地帯から運ばれたもので、石英は、砂岩やかこう岩から運ばれたものです。斜長石や斜方輝石は、火山灰起源のものです。
重鉱物

重鉱物としては、斜方輝石やチタン鉄鉱が多く見られました。
極まれな鉱物

磁性の少ない重鉱物としては、ジルコンや黄鉄鉱が見られます。今回、年代測定を試みましたがモナズ石が極少量しか見出せませんでした。
斜方輝石の化学組成
鵡川の斜方輝石の化学組成をマグネシウムの量(Mg値)でグラフを作成しました。鵡川の組成は、ほどんどのMg値が60で、ほぼ1つ、叉は同種の火山灰起源であることを示しています。他の地域ではMg値がばらつき、各種の火山灰が混ざっています。Mg値が90前後の斜方輝石が、河川流域の蛇紋岩にも極に含まれ、運ばれているものと思われますが、最近の火山灰の影響で目立っていないものと判断されます。

年代
モナズ石の年代分布
モナズ石は、もともとはかこう岩や片麻岩に含まれる鉱物で、それぞれの形成年代を示すものです。しかし、河川で見られるモナズ石の多くは、古い時代の砂岩中のものに由来します。
鵡川のモナズ石の年代には、2つのピークがあります(18億年代のものと3億年より若いもの)。18億年のものと2億年前後のモナズ石は、白亜紀や古第三系の砂岩に含まれるものです。これらの古い砂岩の時代には、現在のような日本海がなく、大陸から古い砂粒が供給されていたと思われます。
若い年代のモナズ石の年代測定の精度がよくないため、さらに詳しい分類はできませんが、5千万年以降の若いモナズ石は、流域の日高帯中のかこう岩や片麻岩に由来するものと思われます。
