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第5回野外授業 静岡

2008年3月27日に、第5回となるSand for Students(略してS4S)野外実習@天竜川・大井川を開催しました。今回参加してくれたのは、静岡県立磐田南高校地学部と静岡中央高校の皆さん。静岡中央高校は安倍川・富士川での調査に続き2回目の参加となりました。野外授業の様子をフォトレポートでお送りします。

授業概要

開催日
2008年 3月 27日
試料採取場所
大井川河川敷(島田大橋左岸・静岡県島田市)
天竜川河川敷(浜北大橋右岸・静岡県浜松市)
実施校
静岡県立磐田南高等学校
静岡県立静岡中央高等学校
主催
海洋研究開発機構(JAMSTEC)
統合国際深海掘削計画(IODP)
講師・スタッフ
北村 晃寿(静岡大学理学部)
五十嵐 智秋(海洋研究開発機構地球深部探査センター)
吉澤 理(海洋研究開発機構地球深部探査センター)

レポート

野外実習

自己紹介をしていただきました

今回は、磐田南高校、静岡中央高校の2校から地学部の皆さんが参加してくれました。「はじめまして」ということで自己紹介をしていただきました。磐田南高校は、走査型電子顕微鏡を用いて、地元で産出する有孔虫等の微化石を観察・考察を行う研究を行っており、また静岡中央高校も「しんかい6500」が採取した泥の中の小型有孔虫の分析を行うなど、とても活動的に研究を行っているそうです。

静岡大学理学部の北村晃寿准教授に静岡県の地質学的な特徴から地球科学の魅力まで紹介していただきました

今回は、地元ということでJAMSTEC講師陣に加えて、静岡大学理学部の北村晃寿准教授に静岡県の地質学的な特徴から地球科学の魅力まで紹介していただきました。北村先生は、沖縄県のサンゴ礁にある海底洞窟の堆積物や、そこにすむ生物を研究して、過去数千年間の水温変化の実態やサンゴ礁生態系に関する研究を行っているそうです。海底洞窟の堆積物を調査しているのは、世界的に北村先生の研究室だけということで、詳しい研究の様子など、是非研究室のウェブページを覗いてみてください。

大井川(静岡県島田市蓬莱橋付近)に到着

第1調査ポイントの大井川(静岡県島田市蓬莱橋付近)に到着しました。

さて、今回の調査ポイントは大井川と天竜川を選びました。糸魚川ー静岡構造線と中央構造線の2本が通っている都道府県は、静岡県と(北村先生出身の)長野県だけだそうです。

周辺の地質図で、調査地点の全体を調べます

まずは、Google Earthの衛星画像や周辺の地質図で、調査地点の全体を調べます。大井川上流部は四万十帯と呼ばれる中生代白亜紀から新生代第三紀にかけての堆積岩からなり、砂岩・泥岩の互層をなしています。その環境が河川敷でも確認できるでしょうか。

ある地域を構成している岩石を調べる際に、折れ尺を使う方法を勉強しました

ある地域を構成している岩石を調べる際に、折れ尺を使う方法を勉強しました。さてどのように使うのでしょうか。

できるだけ無作為に1メートルの折れ尺を地面に置き、その下にあるレキを集めます

科学的に物事を観察する際に基本となることは、好き嫌いではなく客観的な目を持つということが重要になります。ということで、できるだけ無作為に1メートルの折れ尺を地面に置き、その下にあるレキを集めます。そうすることで、色のきれいな石や特徴のある形の石などを無意識で選ばないように、なるべく客観的に環境を捉えることができます。どうやら大井川では、見た目が似ている石が多いようです。

重鉱物を椀かけで採取します

続いて、砂の調査です。大井川の主要な鉱物を調べるためにサンプル袋に砂を採取するとともに、たくさんの情報を得ることができる重鉱物を椀かけで採取します。

うまく重鉱物が採取できているでしょうか

うまく重鉱物が採取できているでしょうか。

ルーペで砂の形状や色などを観察

ルーペで砂の形状や色などを観察します。拡大した砂はどのように見えるでしょうか。

この写真でどちらが下流か分かりますか?

ところで、河川敷の石の重なる方向から、河口がどの方向なのか知ることができます。この写真でどちらが下流か分かりますか?

大井川での調査はお昼までに終了

大井川での調査はお昼までに終了。静岡中央高校の皆さんは、都合によりここで解散となりました。というのも、国立科学博物館による「平成19年度野依科学奨励賞」を受賞(!)され、表彰式に出席するために東京に向かいました。おめでとうございます。

「世界一の長さを誇る木造歩道橋」前でお弁当

実習場所の目の前には「世界一の長さを誇る木造歩道橋」としてギネスブックにも載っている蓬莱橋がありました。心配していた天候にも恵まれ、ここでお弁当を広げました。

ここ(指をさしているライン)で大きく地質(色)が変わっているのが分かります

午後は、第2調査ポイントの天竜川(浜松市浜北大橋付近)に移動して調査を続けます。地質図で先ほどの大井川との違いを確認します。ここ(指をさしているライン)で大きく地質(色)が変わっているのが分かります。

大井川にあったレキと比べるとカラフルで見た目も異なる変成岩や深成岩がたくさん見られます

同じように、折れ尺を使って河川敷のレキを調べてみます。大井川にあったレキと比べるとカラフルで見た目も異なる変成岩や深成岩がたくさん見られます。

これは結晶片岩

これは結晶片岩。地下の深い所で大きな力を受けて変形を伴いながら変成されたために、ぺらぺらと剥がれやすいシート状の構造が見られます。大井川では見られなかった岩石です。

天竜川でも砂を採取します

天竜川でも砂を採取します。キラキラと光る粒に「砂金か!」と色めき立つも、よーく観察すると白雲母のようです。

持ち帰って室内分析を行うために十分な量を確保します

持ち帰って室内分析を行うために十分な量を確保します。何度も椀かけをして重鉱物を採取します。

参加してくれた磐田南高校の皆さん

参加してくれた磐田南高校の皆さんは、これから地学を本格的に勉強するということで、採取したサンプルを用いて遠州灘の砂の鉱物組成などを地学部の研究テーマとして進めていかれるそうです。今回採取した砂やレキのサンプルは、JAMSTECでも詳しく分析していきます。

レポーター:吉澤 理

レポーター:吉澤 理(Sand for StudentsコーディネーターにしてIODPアウトリーチ担当。海洋研究開発機構 地球深部探査センターのスタッフ)

今回参加してくれた大阪岸和田高校・和歌山海南高校のみなさんから感想をいただきました!

  • Sand for studentsに参加して初めて知ったことは、同じ静岡県内の河川でも大井川と天竜川では、河原に転がっている石が全く違うということでした。また、椀掛けは初めての経験なので、上手にできませんでしたが、椀掛けした砂も同じように色や粒子の種類が違っているように見えました。「ちきゅう」でも堆積物の起源を調べるため同じような分析していることを五十嵐先生から伺ったので、今回の自分たちが採集した砂が日本の地球科学の進歩に貢献していると思うと、少し誇らしく感じました。私は、気象の観測や研究をしているので、今回の砂の調査とは少し関連が薄いのですが、そんな私でも大変興味深い野外調査でした。(Kさん)
  • このSand for studentsで色々なことを学びました。大井川と天竜川では、構成している岩石が違うことに大変驚き、興味を持ちました。特に大井川はそれほど岩石の種類が多くないのに対して、天竜川は色取り取りで、種類が多いことについて改めて気付きました。また、砂岩、花こう岩などの河川のれきの起源になっている上流の地質についても興味を持ちました。私は地学部の地質班に所属していて、地震のことや遠州灘海岸の風紋について研究しています。特に今年は、風紋を構成している砂の鉱物につい研究をしたいと思っているので、今回のSand for studentsで 学んだ椀かけなどの方法は、今後の調査でも行って見たいと思います。今回はこの調査に参加させて頂き、誠に有り難うございました。また機会が与えられたら参加したいと思います。(Yさん)
  • 今回のSand for studentsに参加して、身近な河川敷の岩石について観察したり研究したりすることが出来て非常に楽しかったです。大井川と天竜川では河原が全く違う様子をしていたことなども知ることが出来ました。また、今回調査を行った地点は天竜川や大井川でも下流に当たりますが、河川の上流から下流に向かってれきや砂がどのように変化するのか、採集していてとても興味深く感じました。さらに、これらの砂が南海トラフに運ばれて堆積し、将来付加体となって再び、陸に現れて地層となって循環していると思うと、地球の歴史における壮大なサイクルの大きさに感動しました。(Yさん)
  • 今後も部活やスーパーサイエンスハイスクールの活動などで、野外調査をする機会を増やして、更に完成度の高い研究が出来るよう頑張っていきたいと思います。今回は有り難うございました。(A先生)

今回使用したテキストブック

こちらからどなたでもダウンロードできます

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