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第7回野外授業 和歌山

2008年11月11日に、第7回となるSand for Students野外実習@熊野川・古座川を開催しました。今回参加してくれたのは、和歌山県新宮市立熊野川中学校の皆さんです。野外授業の様子をフォトレポートでお送りします。

熊野川中学校は、全校生徒34人の山間にある学校です

熊野川中学校は、全校生徒34人の山間にある学校です。

授業概要

開催日
2008年 11月 11日
試料採取場所
熊野川(和歌山県新宮市)
古座川(和歌山県東牟婁郡)
実施校
和歌山県新宮市立熊野川中学校
主催
海洋研究開発機構(JAMSTEC)
統合国際深海掘削計画(IODP)
講師・スタッフ
眞砂 英樹(地球深部探査センター)
倉本 真一(地球深部探査センター)
北見 恵美理(地球深部探査センター)

レポート

野外実習

熊野川河川敷に到着

熊野川河川敷に到着しました。気温14度とちょっと肌寒いですが、さあ、いよいよ、実習の始まりです。 はじめに眞砂講師より、熊野川の地質について説明がありました。 紀伊半島沖の沈み込み帯(南海トラフ)では、海のプレートが陸のプレートの下に沈み込んでおり、沈み込み帯に特徴的な岩石が産出します。 2枚のプレートの間の摩擦によって、100~150年に一度、マグニチュード8クラスの大地震が引き起こされ、津波を伴った大きな被害をもたらしてきました。 説明の後、みんなで河原の礫を拾って分類しました。熊野川でみられるのは、四万十帯や、熊野層群の堆積岩類と、熊野酸性岩に代表される火成岩類があります。

堆積岩は、海底にたまった砂や泥などの堆積物が、長い時間をかけて固まり、岩石となったものです

堆積岩は、海底にたまった砂や泥などの堆積物が、長い時間をかけて固まり、岩石となったものです。主に砂が固まってできたものを砂岩、泥が固まってできたものを泥岩といい、この2つがもっとも一般的な堆積岩です。他に珪質な殻を持つプランクトンの死骸が降り積もって固まったチャートなども見られます。火成岩は、マグマが冷えて固まってできた岩石で、熊野川でよく見られるものとしては、マグマが地表に吹いて固まった火砕岩(流紋岩など)と、地下のやや深い所で固まった半深成岩(石英班岩など)があります。

椀かけで重鉱物を濃集させます

次に砂の採集をしました。まずは、ふるいにかけて、粗い礫や草の根などを取り除きます。その後、砂の中から、椀かけで重鉱物を濃集させます。

みんな上手に椀かけ作業を行うことができました

初めての椀かけに、ちょっと緊張の様ですが、みんな上手に椀かけ作業を行うことができました。

橋杭海水浴場で、この後見学予定である橋杭岩を見ながら、昼食をとりました

橋杭海水浴場で、この後見学予定である橋杭岩を見ながら、昼食をとりました。

ここで倉本講師から、南海巨大地震が発生し、津波がこの辺りの海岸を襲ったことを想定し、実際にどの高さまで波が押し寄せてくるのかをCGを使ったシミュレーションで見せてもらいました

ここで倉本講師から、南海巨大地震が発生し、津波がこの辺りの海岸を襲ったことを想定し、実際にどの高さまで波が押し寄せてくるのかをCGを使ったシミュレーションで見せてもらいました。橋杭岩のてっぺんまで達する津波の高さと速さに「おおっ!」と驚きの声が上がっていました。「巨大地震が起こったら、すぐに、少しでも高い場所に逃げること」は、熊野川中学校の皆さんの脳裏に焼きついたようです。

橋杭岩に到着

次の実習場所である橋杭岩に到着しました。 海の中に突き出した岩脈が橋桁のように見えることからこの名がつきました。

橋杭岩は今から約1400万年前に地下の深いところから上昇してきたマグマが、地下2~3kmのところで熊野層群の泥岩に板状に入り込み、冷えて固まったものです

橋杭岩は今から約1400万年前に地下の深いところから上昇してきたマグマが、地下2~3kmのところで熊野層群の泥岩に板状に入り込み、冷えて固まったものです。その後、約400万年前に、地層全体が隆起して地表に顔を出すようになると、海岸で侵食作用を受けるようになり、周囲の柔らかい泥岩の部分が削られて、より硬い火成岩の部分だけが残り、この様な景観になりました。

橋杭岩周辺の泥岩の地層中にも、いろいろとおもしろい構造が見られます

橋杭岩周辺の泥岩の地層中にも、いろいろとおもしろい構造が見られます。これは、泥岩中に蜘蛛の巣状に入った石英質や石灰質の脈ですが、脈を形成する鉱物は周囲の泥岩よりも硬いために、侵食に耐えてこのように浮き上がったものです。橋杭岩と同じような原理です。

説明を受けた後、自分たちでも観察しました

説明を受けた後、自分たちでも観察しました。 自分たちの住んでいる場所近くの景勝地に、こんなに地質学的に興味深い場所があったとは驚きだったようです。

古座川に到着

第二調査ポイントである、古座川に到着しました。

熊野川とどんな違いがあるのでしょうか。

古座川の大部分は、熊野川同様に、四万十帯という、熊野層群よりもやや古い付加体堆積物で占められています

古座川の大部分は、熊野川同様に、四万十帯という、熊野層群よりもやや古い付加体堆積物で占められています。熊野酸性岩(新しい火成岩)の本体の分布からは離れていますが、本体から離れた小さな岩脈が近くにあるため、河川礫の中には意外と多く見られます。

礫の分類にも慣れ、堆積岩(砂岩、泥岩、チャート)、火成岩についても見分けられるようになりました

礫の分類にも慣れ、堆積岩(砂岩、泥岩、チャート)、火成岩についても見分けられるようになりました。

ふるいで粗い礫などを取り除いた後、椀かけします

熊野川同様に、ふるいで粗い礫などを取り除いた後、椀かけします。

椀かけも、だいぶ慣れてきた様です

椀かけも、だいぶ慣れてきた様です。

採取した重鉱物を、慎重に保存します

時間をかけて採取した重鉱物を、慎重に保存します。

今日採取した重鉱物は、後日、熊野川中学校で分析される予定です。

無事に野外実習を終え、学校に戻ってきました

無事に野外実習を終え、学校に戻ってきました。

ほとんどの参加者が、堆積岩と火成岩それぞれ数種類を見分けることができるようになりました。今後、岩石や砂に対する見方も変わってくるのではないでしょうか。

熊野川中学校の皆さん、今日は、寒い中、お疲れ様でした!

今回参加してくれた大阪岸和田高校・和歌山海南高校のみなさんから感想をいただきました!

  • 火成岩や砂岩などは、理科で1度習っていましたが、再度、思い出すことが出来、また、「ちきゅう」のことや橋杭岩がどうやって出来たかも知ることが出来、とてもいい体験でした。特に、橋杭岩が津波に襲われた時を再現した映像は、とても印象に残りました。 これからは、教えてもらったことを頭に入れて、河原を歩く時も石などをよく見て、楽しく歩きたいです。(Aさん)
  • 今まで、石や砂に興味がなかったけれど、この「Sand for Students」に参加して、興味がわいてきました。また、家の近くの川で色々探してみたいと思います。川での椀かけは、初めての体験だったので、砂を全部落としてしまわないか心配だったけれど、意外と落ちなくて、すごく面白かったです。津波のことや橋杭岩の話が聞けて為になりました。(Kさん)

今回使用したテキストブック

こちらからどなたでもダウンロードできます

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