JAMSTEC

地球深部探査船「ちきゅう」

JAMSTEC
CDEXCDEX
日本語
English
menu
HOME > 広報活動 > 体験学習 > Sand for Students > 実習レポート・砂データ > 第16回野外授業 神奈川

第16回野外授業 神奈川

2011年10月29日、30日に、第16回となるSand for Students(略してS4S)野外実習@酒匂川を開催しました。今回参加してくれたのは、神奈川県立西湘南高校の皆さん。野外授業の様子をフォトレポートでお送りします。

授業概要

開催日
2011年 10月 29日、30日
試料採取場所
酒匂川河川敷(開成水辺スポーツ公園 右岸)
参加者
神奈川県立西湘南高等学校 生徒6人
担当教員
高島 清行(神奈川県立西湘南高等学校)
釣田 あかり(神奈川県立西湘南高等学校)
平田 大二(神奈川県立生命の星・地球博物館)
CDEX担当者
藤森 英俊、小俣 珠乃
備考
本実習は神奈川県立西湘高等学校スーパーサイエンスハイスクール(SSH)プログラム理数実践「酒匂川の砂」として行われました。

レポート

1日目 野外実習

集合場所のJR鴨宮駅から松田山に移動します

今日は大変良い天気になりました。移動中のバスの中からすでに授業は始まっています。高台から地形を見るため、集合場所のJR鴨宮駅から松田山に移動します。

北上しているので、進行方向右側に松田山、左側には箱根火山や富士山が見えています

移動しながら周囲の地理を確認します。北上しているので、進行方向右側に松田山、左側には箱根火山や富士山が見えています。それぞれの山の名前を教わります。

今、自分たちがどこにいるのか地形図で確認

松田山に到着後、酒匂川流域に広がる足柄平野を観察します。一番始めに、今、自分たちがどこにいるのか、地形図で確認します。

酒匂川沿いの町が一望できて大変良い眺めです

ここは酒匂川沿いの町が一望できて、大変良い眺めです。平野と山側の境界がよく見えます。

酒匂川が大きく蛇行している様子もよく見えます ここがフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界である神縄・国府津-松田断層によってできた地形です

実は、ここがフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界である神縄・国府津-松田断層によってできた地形です。酒匂川が大きく蛇行している様子もよく見えます。

酒匂川河川敷に移動

松田山から地形を観察した後、今度はバスで酒匂川河川敷に移動します。

河川敷では、まず岩石の観察を行います。河川敷に見られる岩石は、上流の岩体から削り取られて、河の流れに乗って運ばれてきていました。河川敷の岩石は、流域の地質を反映しています。上流の地層はどのようなものか、岩石を見ながら考えます。

言葉で聞くと難しいですが、実際の岩石を見ると模様が全く違うので一目瞭然です

地表の岩石は大きく分けて、砂などが固まった「堆積岩」、火山起源の「火成岩」、堆積岩や火山岩が圧力や熱で変質してできた「変成岩」の大きく3つに分けられます。

さらに火成岩は地下深いところマグマがゆっくり冷えて固まっでできた「深成岩」と比較的浅い場所で急速にマグマが固まっでできた「火山岩」に分かれます。

言葉で聞くと難しいですが、実際の岩石を見ると、模様が全く違うので、一目瞭然です。

比重の高い鉱物は量が少ないので、椀掛けを行い、濃集させて観察を行います

自分たちで岩石を観察した後は砂の観察を行います。河川敷の砂は岩石がぶつかり、くだけてできたもの。岩石を構成する鉱物などを見る事ができます。比重の高い鉱物は量が少ないので、椀掛けを行い、濃集させて観察を行います。

椀掛けの時間がちょっと短かったのが残念です

黒いつぶつぶが目立ちます。この鉱物は磁鉄鉱で乾燥させて磁石を近づけると、まさに砂鉄となって磁石にくっつきます。椀掛けの時間がちょっと短かったのが残念です。

地学の実習には道具運びがつきものです

午前の実習はここまでです。道具をひとまず片付けます。地学の実習には道具運びがつきものですが、皆で力をあわせて、よく働きます。

荷物持ち係のクラスメイトを思いやりながら移動

荷物持ち係のクラスメイトを思いやりながら移動します。

トーナル岩と言われる花崗岩の仲間の岩石がたくさん落ちていました

午後は、河川の上流に向かって、岩石を作った元の地層を観察します。まずは、丹沢湖からさらに上流にすすんだところで、「深成岩(トーナル岩)」の観察を行います。

「あっ、白い!」と驚きの声が上がります。ここではトーナル岩と言われる花崗岩の仲間の岩石がたくさん落ちていました。

午前中に観察した河原の岩石との違いをまじまじと観察

改めて、午前中に観察した河原の岩石との違いをまじまじと観察。

変成岩、火成岩、堆積岩と丹沢にはいろいろな岩石があります

さて、トーナル岩観察の後は、西丹沢自然教室の近くに、丹沢で見られる岩石が一通り展示されています。変成岩、火成岩、堆積岩と丹沢にはいろいろな岩石があります。それはなぜでしょう?

私たちが思う以上のダイナミックな地球の動きによってできているのです

これらの岩石は、私たちが思う以上のダイナミックな地球の動きによってできているのです。

中川温泉で結晶片岩の観察

次は、中川温泉で結晶片岩の観察です。岩石に大きな圧力がかかった跡をみるかのように、岩石自体が硬く緻密な構造となっており、同じ方向のひびがたくさん入っていますね。

ここより上流に行くとトーナル岩が見られ、下流では堆積層が見られるなど、全くことなる特徴の岩石が隣り合っています

ここより上流に行くとトーナル岩が見られ、下流では堆積層が見られるなど、全くことなる特徴の岩石が隣り合っています。これらの岩石は、いったいどこから押されたのか考えてみましょう。

あまり固くない砂の地層です

今度は、今まで観察した地層とはうってかわって、あまり固くない、砂の地層です。

地球の歴史、プレートテクトニクスの話を聞きながら、最後に皆が採取した岩石がどのようにしてできたのか、学びました

よく見るとカキの化石や生き物の巣穴らしき生痕化石が見られます。他の地層と比べて、この地層はカキが住むような場所ででき、大きな圧力や熱などの変成は受けていない様子が見られます。

よく見ると、先ほどの河川敷のような地層ですね。河川敷のような場所で堆積した地層かもしれないと想像できます。

地球の歴史、プレートテクトニクスの話を聞きながら、最後に皆が採取した岩石がどのようにしてできたのか、学びました

本日の野外実習はここまでです。明日もがんばりましょう。

翌日の屋内実習につづく。

2日目 野内実習

本日は昨日訪れた場所、観察した岩石、採取した砂試料の復習から始まります

本日は昨日訪れた場所、観察した岩石、採取した砂試料の復習から始まります。まず、昨日地図に書き忘れていた場所をしっかり見直ししました。

先生による答え合わせが行われます

次に、河川敷で観察した、堆積岩、火成岩、変成岩を再度確認し直し、学校に保管されている別の場所から採取した岩石試料を分類してみます。

先生による答え合わせが行われます。

実際のサンプルでは教科書通りの色と同じとは限らないので、ちょっと難しそうです

深成岩と堆積岩はわかりやすかったですが、火成岩の種類の見分けなどは、実際のサンプルでは教科書通りの色と同じとは限らないので、ちょっと難しそうです。

昨日採取した砂試料の観察

いよいよその後は昨日採取した砂試料の観察です。まずは椀掛けしていない、砂からです。ほぼ初めて観察する鉱物たちに苦労します。

肉眼で見る砂とは違い、顕微鏡の中には鉱物が輝く別世界が広がります

肉眼で見る砂とは違い、顕微鏡の中には鉱物が輝く別世界が広がります。

この地域ではかんらん石が黄色っぽいので、一見すると分かりにくいかもしれません

肉眼で見る砂とは違い、顕微鏡の中には鉱物が輝く別世界が広がります。かんらん石と単斜輝石を見分けます。この地域ではかんらん石が黄色っぽいので、一見すると分かりにくいかもしれません。

角閃石と磁鉄鉱はともに黒っぽく見える

角閃石と磁鉄鉱はともに黒っぽく見えるので、形の違いを見るとともに、磁石で磁鉄鉱を取り除き、角閃石の観察を行います。

皆、熱心にスケッチします。

皆、熱心にスケッチします。

気分転換に、日本国内外を含むいろいろな地域の砂を観察しました

観察に疲れたら気分転換に、日本国内外を含む、いろいろな地域の砂を観察しました。場所によっていろいろな砂があることが実感できます。砂の違いによってそれぞれの場所の地質の特徴を推測することも楽しみの一つです。

午後は海洋コアの観察を行います

午後は海洋コアの観察を行います。初めて見る深海の試料に皆興味津々です。

とはいっても、色も同じで、変化があまりピンときません。とりあえず、色や粒子の特徴を書き留めます。

海洋コアの一部を顕微鏡で観察します

次は、海洋コアの一部を顕微鏡で観察します。層順によって、化石が見えたり、火成岩の岩片が見えたりしました。

先生も深海堆積物鑑定に参加

先生も深海堆積物鑑定に参加!珍しい堆積物の観察に地質屋の血がさわぐ(?)。

観察した深海堆積物

観察した深海堆積物たち。

河川敷の砂では見られない有孔虫

河川敷の砂では見られない有孔虫。

火山灰に含まれる岩片(スコリア)

火山灰に含まれる岩片(スコリア)。

最後に実習を通じて観察した内容と神奈川県の成り立ちについてまとめをおこないました。

昨日一番始めに見た地形は、神縄・国府津ー松田断層帯の一部で、これは現在のフィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む境界部分と考えられています。現在の伊豆半島は、かつて本州の南にある海底火山でしたが、フィリピン海プレートの移動に伴って、本州に衝突して、現在の姿となっています。

酒匂川の北側にある丹沢山地は、元々は現在のフィリピン海プレートの一部として、800万年~600万年前にフィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む境界部分でした。この地域は、日本列島に繰り返し火山が衝突を繰り返していることと、地球上で世界で唯一現在進行形の島弧-島弧衝突が起こっている場所として注目されています。

ずっと南から長い時間をかけて、島が日本列島に衝突した跡を観察してきました。動かないようにみえる地層でも、実は今も大きな地球の力で変化が起こっているのです。

講師コメント

野外実習では天気に恵まれ、高台から平野を見る事ができました。自分の身近な場所が、実は、大地がダイナミックに動いている現場である事を知って、酒匂川を見る目が変わったのではないでしょうか? 2日間、野外・屋内実習はとても内容がつまっていましたが、最後まで、皆よく集中してがんばりました。これからも折に触れて、地学の勉強を続けてくださいね。

ページのトップへ戻る