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第17回野外授業 和歌山

2011年12月17日に、第17回となるSand for Students(略してS4S)野外実習@日高川を開催しました。今回参加してくれたのは、和歌山県日高高校生徒の皆さんと御坊市周辺の先生方です。野外授業の様子をフォトレポートでお送りします。

授業概要

開催日
2011年 12月 17日
試料採取場所
日高川河川敷(若野橋、左岸)
参加者
和歌山県立日高高校生徒 4名
和歌山県内教諭 8名
JAMSTEC担当者
菊田 宏之(地球深部探査センター)
阿波根 直一(高知コア研究所)
久光 敏夫(高知コア研究所)
小俣 珠乃(地球深部探査センター)
備考
本実習は和歌山県立日高高等学校スーパーサイエンスハイスクール(SSH)コア事業の一環として行われました。

レポート

野外実習

後先生から陸地の形成と地層の基礎知識について講義がありました

今日はとても冷え込みました。暖かいと言われる和歌山ですが、天気予報の予想気温は最低温度1度です。

和歌山の地層のなりたちを例にとりながら、一般的な知識を学びます

まず、後先生から陸地の形成と地層の基礎知識について講義がありました。和歌山の地層のなりたちを例にとりながら、一般的な知識を学びます。

日高川河川敷で砂レキの観察

ここから野外実習に入ります。まずは、日高川河川敷で砂レキの観察を行います。

日高川では多くのレキが堆積岩由来です。火成岩、変成岩はありません。このことは、日本列島の成り立ちと大きく関係しています。

次に椀かけを行います 同じ方向にお椀をくるくる回します

次に椀かけを行います。同じ方向にお椀をくるくる回します。椀の砂が少なくなってくると、川の流れの変化で全ての砂が流されないように気を使います。

椀かけした砂をサンプル袋に入れて、ここの河川敷実習は終わりです。

実際に上流側の露頭を観察に行きます

さて、河川敷の砂は上流から川の流れに乗って運ばれてきました。ということは、河川敷の砂レキは、上流の地質を反映しているはずです。そこで、実際に上流側の露頭を観察に行きます。

この場所では、明瞭な地層とともに、断層が数カ所に見られます

この場所では、明瞭な地層とともに、断層が数カ所に見られます。和歌山県には東西方向に大きな断層がいくつも通っています。現在、これらの断層は活動していませんが、これらの断層は日本列島の成り立ちの過程で生じたものです。これは、「ちきゅう」の海底掘削目的の一つに関係しています。午前の野外実習はこれで終わりです。午後は学校に戻って、屋内実習です。

 野内実習

日高高校には、たくさんの岩石標本がありました

日高高校には、たくさんの岩石標本がありました。岩石標本を見ながら、堆積岩、火成岩、変成岩の違いを見ていきます。今度は日高川の河川敷で採取した岩石に戻り、改めて、岩石を観察します。

砂試料をシャーレで乾燥させて、実体顕微鏡で観察を行います。透明でガラスのような鉱物が石英で白く見える鉱物が長石です。日高川の砂はほとんど石英、長石、岩片で構成されています。有色鉱物が少ないですが、これも流域に分布する地質構造を考えると理由があるのです。

久光先生から、深海底の堆積物についての基礎的な講義

久光先生から、深海底の堆積物についての基礎的な講義があり、その後、海洋コア試料の観察を行います。

コアとは海底の堆積物を円柱状に採取したものです

コアとは海底の堆積物を円柱状に採取したものです。研究、保管用に半割して保管されています。本日は高知にあるコア保管庫からコアを輸送してきました。海底に積もった地層を採取したもので、コアの下から上に向かって地層の堆積時期も新しくなっていきます。

参加者からデジタルカメラや携帯で顕微鏡の写真を撮影するテクニックが披露されます

今回の実習で観察するのは、熊野灘とマリアナトラフのコアです。熊野灘のコアには有孔虫や円石藻などの化石が見られます。ここで、参加者からデジタルカメラや携帯で顕微鏡の写真を撮影するテクニックが披露されます。

携帯電話やデジタルカメラと顕微鏡、ルーペの組み合わせで、手軽に拡大写真を撮影する事ができます

実は、携帯電話やデジタルカメラと顕微鏡、ルーペの組み合わせで、手軽に拡大写真を撮影する事ができます。

深海コアの観察に夢中になる参加者

深海コアの観察に夢中になる参加者。

まだまだ見たいですが時間切れで、観察は終了です。

まだまだ見たいですが時間切れで、観察は終了です。

本日観察した岩石、地層、断層と日本列島の成り立ちとの関係を学びます

ここから、本日観察した岩石、地層、断層と日本列島の成り立ちとの関係を学びます。和歌山県のそれぞれの地層は東西方向に広がっていることが多く、断層も東西方向が卓越しています。

これらの地層は主に白亜紀に形成されたものですが、現在も同じプロセスで地層ができている場所があります それは、「ちきゅう」が掘削している南海トラフ周辺です

これらの地層は主に白亜紀に形成されたものですが、現在も同じプロセスで地層ができている場所があります。それは、「ちきゅう」が掘削している南海トラフ周辺です。和歌山県沖はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界があり、境界部分は南海トラフと呼ばれています。プレート境界では、フィリピン海プレートがユーラシアプレートを押しています。そのとき、フィリピン海プレートの一部はユーラシアプレートの下に沈み込めずにユーラシアプレートに押し付けられます。この作用でできた地層を付加体といいますが、日本列島の多くはこの付加体でできています。日高川沿いの地層も、付加体の特徴を良く表しています。

後先生が調査団として参加した、9月の台風に伴う洪水、土砂崩れの被害が出た那智勝浦の様子について、説明がありました

最後に後先生が調査団として参加した、9月の台風に伴う洪水、土砂崩れの被害が出た那智勝浦の様子について、説明がありました。

地球の営みは普段穏やかですが、時に災害を引き起こすほど大きな力と作用をもたらすことが分かりました

地球の営みは普段穏やかですが、時に災害を引き起こすほど大きな力と作用をもたらすことが分かりました。

講師コメント

当日の最低気温は1℃と非常に寒い一日でしたが、参加者の皆さんは野外実習でも熱心に観察を行いました。午後の屋内実習では海洋コアの観察に夢中になる様子が印象的でした。和歌山県には地学の勉強にとても良い地層や露頭がたくさんあるので、生徒の皆さんが引き続き地学の勉強を続けてくれるとうれしく思います。

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