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プレスリリース

2016年 7月 7日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

東南海地震の想定震源域において地殻変動の検知能力の向上を実現

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」)は、平成28年6月14日から23日にかけて、研究船「新青丸」による研究航海を実施し、地球深部探査船「ちきゅう」により東南海地震の想定震源域である紀伊半島沖の海底下の掘削孔に設置した2基目の長期孔内観測装置(※1)を、同海域において展開・運用されている地震・津波観測監視システム(※2、以下「DONET」)に接続しました。これにより、観測装置で取得したデータをDONETのケーブルを介して陸上でリアルタイムに受信することを実現し、今般そのデータ品質に問題がないことの確認作業を完了しました(図1)。

長期孔内観測装置は、掘削孔内の安定した地層内にセメントで固定されており、大きな地震動に加えて、陸上や海底面で設置する観測装置では捉えにくい微小な地殻変動、例えば超低周波地震やゆっくり滑り(地震)(※3)を観測することができます。

2基目の長期孔内観測装置が接続され、稼働を始めたことにより、東南海地震の想定震源域により近い場所での観測点が増え、巨大地震の準備過程から発生に深く関係すると考えられる地殻変動の検知能力が飛躍的に向上することが期待されます。DONETの海底観測点と長期孔内観測装置を合わせた三次元的なリアルタイム連続観測を統合的かつ重点的に行うことにより、東南海地震の発生時期の予測の高度化に貢献できる可能性があるほか、地震発生メカニズムの解明に資するデータを取得し、またweb公開することで、様々な防災・減災対策に貢献することを目指します。

※1 長期孔内観測装置

海底下の掘削孔に複数のセンサー(温度計、歪計、地震計、傾斜計、水圧計等)を設置固定した観測装置(図2)。

1基目であるC0002地点(図3)の長期孔内観測装置は、平成25年1月に海洋調査船「かいよう」による研究航海においてDONETに接続し、現在リアルタイムでデータを取得している(平成25年2月5日既報)。平成28年4月に地球深部探査船「ちきゅう」による国際深海科学掘削計画(IODP)第365次研究航海において、紀伊半島沖のC0010地点(図3)の海底下651m に達する孔内に、2基目の長期孔内観測装置を設置した(平成28年4月28日既報)。

※2 地震・津波観測監視システム(DONET)

海域で発生する地震・津波を常時観測監視するため、JAMSTECが開発し南海トラフ周辺の深海底に設置した地震・津波観測監視システム。紀伊半島沖熊野灘の水深1,900~4,400mの海底に設置した「DONET1」は、22の観測点から成り、平成23年に運用を開始している。また、紀伊水道から四国沖の水深1,100~3,600mの海底に設置した「DONET2」は、29の観測点から成り、平成28年3月末に整備を終了した。

DONETは、DONET2の完成をもって平成28年4月に国立研究開発法人防災科学技術研究所へ移管された。DONETで取得したデータは、気象庁等にリアルタイムで配信され、緊急地震速報や津波警報にも活用されている。

※3 ゆっくり滑り(地震)

比較的遅い断層滑り速度の地殻変動であり、継続時間は数日から1年以上に及ぶ。人が地震動として感じることはない。東北地方太平洋沖地震においても発生1か月前から発生し、大きく滑った領域とも重なることから、巨大地震との関係が指摘されている。

図1

図1  C0010地点の長期孔内観測装置で観測された傾斜計・孔内歪計・水圧計・海底水圧計の変動記録(上:約3日間)広帯域地震計の記録(下:約2時間)

図2
図2 長期孔内観測装置概念図
図3
図3  DONET1及び長期孔内観測装置(C0002地点、C0010地点)位置図
国立研究開発法人海洋研究開発機構
(本内容について)
地震津波海域観測研究開発センター 海底観測技術開発グループ
グループリーダー代理 荒木 英一郎
(報道担当)
広報部 報道課長 野口 剛
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