がっつり深める

世界初、AUV複数基運用による海底下構造調査に成功 ー海洋鉱物資源調査の効率化に期待ー

初のAUV2機同時運用による海底下構造調査

――今回成功した調査についてぜひ聞かせてください。

笠谷:JAMSTECでは、2013年に始まった内閣府主導の戦略的イノベーション想像プログラム(SIP)「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」の中で海洋鉱物資源を効率的に調査するための技術開発を進めています。今回はその一環で、2機のAUVを使った電磁気学的手法による海底下構造調査を進めました。この手法では1機に送信機、もう1機に受信機を取り付け、海中を縦列に航走させます。前側のAUVから電気を送信し、後ろ側のAUVで受信します。そして得られた観測データから見かけ比抵抗と自然電位を算出し、最終的にはそれぞれから海底下の様子を可視化して鉱物を探します。

図3 AUVによる調査のイメージ図。前方のAUVにつけた送信機から電気を流し、後方のAUVの受信機で受ける。

――見かけ比抵抗とは、何ですか?

笠谷:電気の流れやすさは物質によって異なり、これは電気抵抗で表されます。熱水鉱床を構成する硫化鉱物が少ないほど、電気抵抗は大きく電気が流れにくくなります。反対に、硫化鉱物が多いほど電気抵抗は小さく、電気が流れやすくなります。こうした電気抵抗を電気探査では、ある電極の組み合わせに対して、観測している海底下の全体を平均したような値として「見かけ比抵抗」として扱います。

具体的に見かけ比抵抗をどう求めるかというと、送信機から送った信号の電流値と、その信号を受信機で受けたときの電圧値から求めます。簡単に言えば、オームの法則(V(電圧)=I(電流)×R(抵抗))を思い出してもらえればと思います。この分布から、ある程度の海底下の様子を推測はできますが、最終的には、この見かけ比抵抗の分布から、海底下の比抵抗(電気の通しにくさ)の分布を可視化して、周囲より低い比抵抗を示す場所を手掛かりに鉱物を探すというわけです。

図4 電気探査の基本的な原理はオームの法則

――自然電位とは、何ですか?

鈴木:海水には酸素が溶け込んでいます。そのため海底下では、酸素に富んだ海水がしみ込んでくる浅部では酸素が多く、深部では酸素の少ない環境になっていると考えられます。そこに鉱物があると、中に含まれる硫化鉱物が化学反応を起こしやすいために上部では酸化反応、下部では還元反応が起きます。これに伴い鉱物そのものが電池のようになり、電子が移動して電気が流れます。こうした鉱体の上では自然電位が低くなることを、我々は先行研究で確認しています。これを手掛かりに鉱体を探すというわけです。

図5 電池のような状態になっている鉱体

――そういうことなのですね!

笠谷:2018年4月に沖縄本島北西沖で、深海探査機「じんべい」と「ゆめいるか」を使って海底下構造調査を実施しました。

図6 「じんべい」に取り付けた送信機
写真2 「じんべい」背中に搭載された送信機と電池
図7 船上で巻かれた状態の送信電極ロッド
図8 「ゆめいるか」に取り付けた受信機・電極アレイ構成図
写真3 電極アレイ

動画2 調査の様子

笠谷:得られた観測データの解析からは、見かけ比抵抗の低い領域と、自然電位の負の異常域が、既知の海底熱水域とそれぞれ一致することが確認されました。

図9 観測データから計算された見かけ比抵抗。赤丸は熱水鉱床と関連すると推測される低い抵抗を示す領域。
図10 観測データから計算された自然電位分布。赤丸は、熱水鉱床と関連すると推測される負の自然電位異常を示す領域。

笠谷:その上、従来の曳航体調査に比べると、航行速度が2倍、測線を変える際の移動時間は1時間から5~10分に短縮しました。

――大成功ですね。改めて、おめでとうございます!

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