「しんかい6500」研究航海 YK15-06 レポート
今年3回目の中部沖縄トラフ行動
2015/4/22 - 5/9
【航海情報】
『海況に恵まれた調査』
YK15-06調査航海は中部沖縄トラフで、昨年10月に行われたYK14-19調査航海と同じく「人工電流及び自然電磁場を観測することにより、熱水域の地下構造を把握し、地下の水理構造、鉱床賦存域推定の基礎データを取得する」ことを目的に行われました。
4月22日、「よこすか」は那覇新港を出港し、沖縄島の北西約150kmにある中部沖縄トラフ調査海域へ向かいました。昨年の行動では横須賀港を出港後、沖縄島付近を非常にゆっくり北上してくる大型台風を避けたので、9日間の調査期間で5日間しか調査が行えませんでした。今回は航海の時期も早いため台風の心配も無く、那覇港を出港して5時間後には調査海域に到着しました。早速、「よこすか」より海底電位差計2台、海底電位磁力計1台を投入、設置して調査を開始しました。
翌日からの潜航調査は、今後の海況を考慮して調査海域の北側から開始としました。4月23日の第1423潜航は、これまでに調査が行われている伊平屋北海丘の熱水噴出域に、「しんかい6500」で長期設置型電位差計測アレイと熱流量計を設置し、これらの機器と船体に取付けた人工電流送信装置を使用して広範囲な人工電流信号及び自然電磁場信号データの記録と解析を行いました。
4月24日から調査最終日までは調査海域の南側にある伊是名海穴を調査場所としました。この海域には、深海巡航探査機「うらしま」で取得した詳細な海底地形データがあります。この地形データを使用して計画的に潜航、曳航調査を行いました。
4月26日まで「しんかい6500」で3回の潜航調査を実施。事前に設置した海底電位差計2台と1回目の潜航調査で設置した小型電位差計2台、そして船体に取付けた人工電流送信装置を使用して人工電流信号及び自然電磁場信号データを記録、解析しました。2回目以降の潜航調査は前日のデータを基に熱水噴出域のグリッド航走や、特異点のマッピングをしながら同様にデータの記録、解析を行いました。
4月27日から4月30日までは、深海曳航調査システム「YKDT」(よこすかディープ・トウ)に曳航式電気探査装置を取付けて、熱水噴出域を南北に縦断する測線に沿って「YKDT」を曳航してデータを記録、解析しながら連続4日間の調査を行いました。
5月1日と5月2日は再び、「しんかい6500」による潜航調査を行い、前半に調査した場所より南側のデータの記録、解析と特異点のマッピングを行い、最後の潜航調査で海底に設置した小型電位差計2台を回収しました。その他にも潜航、曳航調査の合間を使って「よこすか」による海底電位差計、海底電位磁力計の設置、回収も効率的に行いました。
今回は海況に恵まれて全ての調査を予定通りに行うことができ、調査航海としては大成功でした。また、海底の数メートルサイズの起伏まで表示されている「うらしま」の地形データを使用した、特異点の捜索やマッピング、狭隘な地形で操船は初めての試みで、投光器の明かりが届かない前方や、覗き窓から見えない場所の地形を考慮した操船が可能となり、潜水船の運用方法についても得ることの大きい調査となりました。
『新人研修』
新年度となり日本海洋事業(株)深海技術部にも久しぶりに新人が入社し、「しんかい6500」運航チームに1名、「かいこう」運航チームに1名が配属されました。陸上での新人研修を終えた二人は、本格的に水中機器についての研修を行うため、4月中旬、那覇港より「よこすか」に乗船しました。二人は配属先が異なりますが、水中機器の取り扱いの基本はどのチームでも同じなので今回は「しんかい6500」を教材に、OJT(On the Job Training)を主体とした研修が行われました。研修は潜航調査に必要な作業を先輩達と一緒に行いながら、機器の取り扱い方法や整備方法について学びます。また、「しんかい6500」の潜航調査中には、潜水船の各システムについて、それぞれの担当から講義を受けます。その他にも、船上での生活についても先輩達から、いろいろと教わります。
二人とも、船上での生活経験がほとんど無いので、航海中に船酔いなどで体調を崩さないか心配しましたが、海況が平穏だったこともあり、「よこすか」での研修を無事終えました。
『宮崎港一般公開』
5月5日、「こどもの日」に行われた「宮崎みなとまつり」に招待を受け「しんかい6500」一般公開を行いました。(九州での「しんかい6500」の一般公開は、2000年8月に佐賀県唐津市で実施以来15年ぶりです。)
「よこすか」は前日の5月4日午前中、宮崎港に入港、午後からは船上で入港セレモニーが催され、「入港記念の盾」の交換、招待者や報道関係者への特別公開が行われました。
5月5日、「宮崎みなとまつり」当日は、好天に恵まれ絶好のイベント日和となりました。「よこすか」の着岸場所がイベント会場前の岸壁であることと、前日、当日の新聞、テレビによる報道の効果もあり、オープニングセレモニーが始まる午前10時には、「よこすか」舷門に見学のお客様で長蛇の列が出来ました。10時30分に一般公開を開始してからも、途切れることなくお客様にお越しいただき、船内各署でお客様の質問に「よこすか」乗組員、「しんかい6500」運航要員が答える様子が見受けられました。一般公開中、「よこすか」船内が込み合ったため、お客様に舷門でしばらく乗船をお待ちいただく場面も有りましたが終了時間の16時までに4,465名と大勢のお客様にご見学いただけました。
- 4月22日
- 那覇港、出港
中部沖縄トラフ海域到着後、海底電位差計2台、海底電位磁力計1台設置 - 4月23日
- 事前調査、「しんかい6500」調査潜航(第1423回)
夜間、広域サーベイ - 4月24日
- 事前調査、「しんかい6500」調査潜航(第1424回)
夜間、広域サーベイ - 4月25日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1425回)
海底電位磁力計1台設置。夜間、広域サーベイ - 4月26日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1426回)
海底電位磁力計1台設置。深海曳航調査システム「YKDT」へ艤装替え。
夜間、広域サーベイ - 4月27日
- 「YKDT」曳航調査(第164回)
海底電位磁力計1台設置。夜間、広域サーベイ - 4月28日
- 「YKDT」曳航調査(第165、166回)
夜間、広域サーベイ - 4月29日
- 「YKDT」曳航調査(第167回)
海底電位差計1台回収。夜間、広域サーベイ - 4月30日
- 「YKDT」曳航調査(第168回)
海底電位差計1台設置。「YKDT」艤装解除、広域サーベイ - 5月1日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1427回)
海底電位差計1台回収。夜間、広域サーベイ - 5月2日
- 「しんかい6500」調査潜航(第1428回)
宮崎港向け回航開始 - 5月3日
- 回航(屋久島南東沖)
一般公開準備 - 5月4日
- 宮崎港入港、特別公開
- 5月5日
- 一般公開
- 5月6日
- 整備日
- 5月7日
- 宮崎港出港
- 5月8日
- 回航(御前崎南東沖)
- 5月9日
- 横須賀港入港
『海況に恵まれた調査』
YK15-06調査航海は中部沖縄トラフで、昨年10月に行われたYK14-19調査航海と同じく「人工電流及び自然電磁場を観測することにより、熱水域の地下構造を把握し、地下の水理構造、鉱床賦存域推定の基礎データを取得する」ことを目的に行われました。
4月22日、「よこすか」は那覇新港を出港し、沖縄島の北西約150kmにある中部沖縄トラフ調査海域へ向かいました。昨年の行動では横須賀港を出港後、沖縄島付近を非常にゆっくり北上してくる大型台風を避けたので、9日間の調査期間で5日間しか調査が行えませんでした。今回は航海の時期も早いため台風の心配も無く、那覇港を出港して5時間後には調査海域に到着しました。早速、「よこすか」より海底電位差計2台、海底電位磁力計1台を投入、設置して調査を開始しました。
翌日からの潜航調査は、今後の海況を考慮して調査海域の北側から開始としました。4月23日の第1423潜航は、これまでに調査が行われている伊平屋北海丘の熱水噴出域に、「しんかい6500」で長期設置型電位差計測アレイと熱流量計を設置し、これらの機器と船体に取付けた人工電流送信装置を使用して広範囲な人工電流信号及び自然電磁場信号データの記録と解析を行いました。
4月24日から調査最終日までは調査海域の南側にある伊是名海穴を調査場所としました。この海域には、深海巡航探査機「うらしま」で取得した詳細な海底地形データがあります。この地形データを使用して計画的に潜航、曳航調査を行いました。
4月26日まで「しんかい6500」で3回の潜航調査を実施。事前に設置した海底電位差計2台と1回目の潜航調査で設置した小型電位差計2台、そして船体に取付けた人工電流送信装置を使用して人工電流信号及び自然電磁場信号データを記録、解析しました。2回目以降の潜航調査は前日のデータを基に熱水噴出域のグリッド航走や、特異点のマッピングをしながら同様にデータの記録、解析を行いました。
4月27日から4月30日までは、深海曳航調査システム「YKDT」(よこすかディープ・トウ)に曳航式電気探査装置を取付けて、熱水噴出域を南北に縦断する測線に沿って「YKDT」を曳航してデータを記録、解析しながら連続4日間の調査を行いました。
5月1日と5月2日は再び、「しんかい6500」による潜航調査を行い、前半に調査した場所より南側のデータの記録、解析と特異点のマッピングを行い、最後の潜航調査で海底に設置した小型電位差計2台を回収しました。その他にも潜航、曳航調査の合間を使って「よこすか」による海底電位差計、海底電位磁力計の設置、回収も効率的に行いました。
今回は海況に恵まれて全ての調査を予定通りに行うことができ、調査航海としては大成功でした。また、海底の数メートルサイズの起伏まで表示されている「うらしま」の地形データを使用した、特異点の捜索やマッピング、狭隘な地形で操船は初めての試みで、投光器の明かりが届かない前方や、覗き窓から見えない場所の地形を考慮した操船が可能となり、潜水船の運用方法についても得ることの大きい調査となりました。
『新人研修』
新年度となり日本海洋事業(株)深海技術部にも久しぶりに新人が入社し、「しんかい6500」運航チームに1名、「かいこう」運航チームに1名が配属されました。陸上での新人研修を終えた二人は、本格的に水中機器についての研修を行うため、4月中旬、那覇港より「よこすか」に乗船しました。二人は配属先が異なりますが、水中機器の取り扱いの基本はどのチームでも同じなので今回は「しんかい6500」を教材に、OJT(On the Job Training)を主体とした研修が行われました。研修は潜航調査に必要な作業を先輩達と一緒に行いながら、機器の取り扱い方法や整備方法について学びます。また、「しんかい6500」の潜航調査中には、潜水船の各システムについて、それぞれの担当から講義を受けます。その他にも、船上での生活についても先輩達から、いろいろと教わります。
二人とも、船上での生活経験がほとんど無いので、航海中に船酔いなどで体調を崩さないか心配しましたが、海況が平穏だったこともあり、「よこすか」での研修を無事終えました。
『宮崎港一般公開』
5月5日、「こどもの日」に行われた「宮崎みなとまつり」に招待を受け「しんかい6500」一般公開を行いました。(九州での「しんかい6500」の一般公開は、2000年8月に佐賀県唐津市で実施以来15年ぶりです。)
「よこすか」は前日の5月4日午前中、宮崎港に入港、午後からは船上で入港セレモニーが催され、「入港記念の盾」の交換、招待者や報道関係者への特別公開が行われました。
5月5日、「宮崎みなとまつり」当日は、好天に恵まれ絶好のイベント日和となりました。「よこすか」の着岸場所がイベント会場前の岸壁であることと、前日、当日の新聞、テレビによる報道の効果もあり、オープニングセレモニーが始まる午前10時には、「よこすか」舷門に見学のお客様で長蛇の列が出来ました。10時30分に一般公開を開始してからも、途切れることなくお客様にお越しいただき、船内各署でお客様の質問に「よこすか」乗組員、「しんかい6500」運航要員が答える様子が見受けられました。一般公開中、「よこすか」船内が込み合ったため、お客様に舷門でしばらく乗船をお待ちいただく場面も有りましたが終了時間の16時までに4,465名と大勢のお客様にご見学いただけました。
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4月23日 No.1423DIVE
- 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊平屋北海丘
- 観察者:笠谷 貴史(JAMSTEC)
- 船長:小椋 徹也
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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4月24日 No.1424DIVE
- 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊是名海穴
- 観察者:笠谷 貴史(JAMSTEC)
- 船長:齋藤 文誉
- 船長補佐:田山 雄大
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4月25日 No.1425DIVE
- 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊是名海穴
- 観察者:岩本 久則(日本海洋事業株式会社)
- 船長:松本 恵太
- 船長補佐:大西 琢磨
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4月26日 No.1426DIVE
- 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊是名海穴
- 観察者:川田 佳史(JAMSTEC)
- 船長:佐々木 義高
- 船長補佐:鈴木 啓吾
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5月1日 No.1427DIVE
- 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊是名海穴
- 観察者:笠谷 貴史(JAMSTEC)
- 船長:小椋 徹也
- 船長補佐:田山 雄大
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5月2日 No.1428DIVE
- 潜航海域:中部沖縄トラフ 伊是名海穴
- 観察者:笠谷 貴史(JAMSTEC)
- 船長:大西 琢磨
- 船長補佐:鈴木 啓吾
佐々木 義高(運航チーム副司令)