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「しんかい6500」試験潜航 YK18-04 レポート

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中間検査工事と試験潜航YK18-04航海レポート

2018/3/22 - 3/30(試験潜航)

『中間検査工事後の試験潜航』
中間検査工事中の風景。
写真1:中間検査工事中の風景。
「しんかい6500」の出入口ハッチ蓋の取付作業(2018年3月上旬頃)
写真上部の丸いハンドルが付いているのがハッチ蓋。写真中央の耐圧殻の開口部にぴったりはまる。「しんかい6500」に乗り込むためには、この直径50cmの開口部を通れることが、ひとつの条件となる。
YKDT曳航訓練の準備作業。
写真2:YKDT曳航訓練の準備作業。
YKDT本体に光電気複合ケーブルを取り付けている。このケーブルにより支援母船「よこすか」から吊り下げられたYKDTに1600Vの交流電源が供給され、光通信で海底の映像を「よこすか」船上で観察する。
新水中画像伝送装置の受信映像。
写真3:新水中画像伝送装置の受信映像。
「しんかい6500」のTVカメラで撮影された映像が、水中音波で送信される。「よこすか」船上で2秒毎に受信する映像は、音波で送られてくるとは思えない綺麗な映像だ。映像は、海底で柱状採泥を実施しているところ。
表示されているデータは、左から時間・船首方位・深度・高度の順。

2017年12月7日から2018年3月12日にかけて2017年度「しんかい6500」中間検査工事を潜水調査船整備場にて実施しました。

今回の検査工事では、例年の法定検査に加え、昨年度に実施した耐圧殻内の観察環境改善およびワンマンパイロット化を見越した耐圧殻内の改造について1年間運用した実績から最終的な船内機器の配置替えも併せ実施しました。

これでワンマンパイロット化に向けた耐圧殻内改造の最終形が、完成しました。本年度の調査潜航より、海底作業の難易度が低い潜航から研究者2名を乗船させたワンマンオペレーションを開始できればと考えています。

検査工事完工後の平成30年3月22日からは、開放整備・修理された全ての搭載機器の性能と健全性を確認するため試験潜航が開始されました。

3月22日に機構専用桟橋を出港後、横須賀港内で実施した沈降試験では、日本海事協会(NK)検査員立ち会いのもと潜水船の各機器作動に異常のないことを確認し、試験海域である相模湾へ向け発航しました。

翌日からは、相模湾初島南東沖1000m、南海トラフ北縁部3000m、伊豆小笠原海溝6500mと徐々に試験深度を深くして4回の試験潜航を実施し、潜水船の主要搭載機器である電源装置、推進器、海水ポンプ注排水装置およびマニピュレータ等の各油圧系機器が、絶縁も異常なく全て正常に作動することを確認しました。

本試験航海は、周期的に天候が変わるこの時期としては天候・海象に恵まれ、計画した4回の試験潜航に加え、駿河湾松崎沖での「よこすか」ディープ・トウ(YKDT)曳航訓練および外部救難訓練と計画した作業を全て余すことなく実施できました。

また本試験航海では、海洋オープンイノベーションプラットフォームにて提供する深海底泥を採取するため試験潜航の各海域で柱状採泥を実施した他、昨年度から試験を進めていた新水中画像伝送装置の最終的な実海域試験も実施しました。

新水中画像伝送装置は、これまでの10秒毎の画像更新が、高速モードで2秒毎の画像更新となり、音響ノイズの影響も少なく、深度6000m以深でも安定した画像を受信することが確認されました。今回の試験を以て新水中画像伝送装置を正規搭載とし、本年度の調査潜航より本格運用を開始します。以前よりもリアルタイム感が増し、潜水船の作業状況や試料採取状況が把握しやすくなるため調査潜航にも大きく貢献することが期待されます。

【潜航情報】
    3月22日 No.1510DIVE
  • 潜航海域:横須賀港第4区
  • 観察者:荒木 英二(三菱重工業)
  • 船長:大西 琢磨
  • 船長補佐:鈴木 啓吾
    3月23日 No.1511DIVE
  • 潜航海域:相模湾 初島南東沖1200m
  • 観察者:飯島 さつき(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:松本 恵太
  • 船長補佐:千葉 和宏
    3月24日 No.1512DIVE
  • 潜航海域:南海トラフ北縁部3000m
  • 観察者:倉本 佳和(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:鈴木 啓吾
  • 船長補佐:石川 暁久
    3月26日 No.1513DIVE
  • 潜航海域:伊豆小笠原海溝6500m
  • 観察者:南野 直人(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:斎藤 文誉
  • 船長補佐:千田 要介
    3月28日 No.1514DIVE
  • 潜航海域:駿河湾松崎沖1700m
  • 観察者:新倉 淳也(日本海洋事業株式会社)
  • 船長:大西 琢磨
  • 船長補佐:植木 博文
【航海情報】
3月22日
潜水船搭載、JAMSTEC出港
横須賀港内、沈降試験(第1510回)、相模湾A海域向け発航
3月23日
相模湾初島南東沖着、試験潜航1000m(第1511回)
南海トラフ北縁部海域向け発航
3月24日
南海トラフ北縁部海域着、試験潜航3000m(第1512回)
相模湾A海域向け発航
3月25日
相模湾にて整備日、整備作業終了後、伊豆小笠原海溝海域向け発航
3月26日
伊豆小笠原海溝海域着、試験潜航6500m(第1513回)
駿河湾B海域向け発航
3月27日
駿河湾松崎沖、「よこすか」ディープ・トウ曳航訓練
3月28日
駿河湾松崎沖、試験潜航1700m(第1514回)
3月29日
駿河湾松崎沖1700mにて外部救難訓練、横須賀港向け発航
3月30日
入港(横須賀新港ふ頭3号桟橋)

櫻井 利明(運航チーム司令)