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8月18日(火)


"漂流ブイ観測"

同じような文体で同じような観測の紹介が続いてすみませんが、本日は「漂流ブイ」の回収作業があったので、そのご紹介。
昨日ご紹介した「ウェーブグライダー」の記事で、「周りの海水や大気をあまり乱すことなく、自然に近い状態のデータを取ることができます」と書きました。それを更に求めたのが、この漂流ブイです。ウェーブグライダーと違って話は単純で、数十cmくらいの大きさの浮き(ブイ)にセンサーを付けて流します。潮の流れに身を任せているので、周りの自然な海の状態をほとんど乱さないデータが取れます。で、暫く後に、ブイを回収します。
……とはいえ、実際はそう簡単な作業ではありません。まず、今の我々は「定点観測」中です。が、1日に何十kmも先へ流れるブイを拾い上げるには、定点を一時離れねばなりません。24時間続いている観測やそれに携わる人のスケジュールの変更など、船中挙げての調整が必要となりました。
また、ブイにはGNSS(GPSも含む測位衛星)受信機が付いていて、位置情報を(衛星通信経由で)船上に送って来るのですが、タイムラグもありますし、そもそもGNSS位置情報だけでは数十cmの小さなブイをすくい上げられません。一歩間違って船がブイを「ひいて」壊してしまっては一巻の終わり。なので、GNSS位置情報を頼りに近くまで行き、そろりそろりと近づきながら、大勢の人間が目視で周りを探します。苦闘10分、今回は(も?)研究員よりも先に(この手の周囲監視に手練れた)乗組員さんが第一発見者でした。さすが。そして、仕上げは小型ボートの出動。小さく繊細な(センサーがたくさん付いた)ブイにダメージを与えぬよう、ゆっくりと近づき、最後はボートの乗組員さんの人の手が、ブイを拾い上げました。
という具合に、船中挙げての騒動となった漂流ブイ観測。こんなことまでして測っているのは、海の表面、数cm?数十cmの深さの水温や塩分の変化です。海面近くでは、大気の影響(日射、風、雨、……)を受けて大きく状態が変化します。そして、大きく変化した海面の状態は、大気の温めかたや湿らせ方に大きく影響します。そして、影響を受けた大気では、雨雲が湧き、風が巡り、高気圧や低気圧が出来……
今日の回収作業は雨雲の合間で行うことになりました。人工衛星で見ると、どうやら今日の雨雲は、差し渡し1000kmにわたる大きな雲群の一部だったようです。そして、船上で今夕に受信した一部の予報には、この雲群の近くで低気圧が出来、強まりながら北に向かう様子が……!
今後数日は、数cmのデータを調べつつ、それが数千km離れた日本にどう繋がるかも、固唾を呑んで見守ることになるかもしれません。
(M.K.)