沖縄トラフ熱水活動域「ちきゅう」掘削孔を利用した潜航調査計画 in NT10-17

計画の概要

【アクセス場所】

今回「ハイパードルフィン」でアクセスする掘削孔は、「ちきゅう」の掘削ポイントのうち、INH-4D(27°47.4211’N、126°53.8533’E、水深1,026m)と呼ばれる場所です(図1参照)。

掘削ポイント

(YK07-07「よこすか」航海で収録されたAUV「うらしま」による高分解能海底地形図)

図1. 伊平屋北熱水活動域の海図と予定されている掘削ポイント


INH-4Dは熱水活動域の縁辺部にあたります。純粋な熱水は300度を超える高温のため、この中では生物は熱すぎて活動することができません。しかし、一方、INH-4Dという地点は、熱い熱水と冷たい海洋深層水が混合し海底下微生物にとって良い湯加減になっていることが、これまでの15年におよぶ調査でわかっています。また、熱水と海水が混ざり合う場所というのは、陸上河川で言えば河口域にあたる場所であり、山の幸(熱水)と海の幸(海水)の両方から栄養を摂取できるため、温度のみならず栄養的にも生物にとっては暮しやすい環境と言えます。「ちきゅう」のIODP第331次研究航海では、INH-4Dにおいて100mの掘削を行い、掘削孔にSUS316(耐食性高めたステンレス鋼)のケーシングパイプ(直径約10cm)を挿入します。



【掘削孔内でのサンプリング(Kandata Project)】

掘削孔内設置型サンプル採取システム(通称:Kandataシステム)は、掘削孔の深部から直接サンプルを回収するためのシステムです。このシステムは、 (1)ROV等で掘削孔にアクセスし使用すること (2)掘削孔内で容器を密閉できること の2点を達成する調査ツールです。「ちきゅう」などによる掘削では、コアサンプルは掘削した時にしか得ることができません。しかし、掘削孔は恒久的に存在するため、ROV等で掘削孔を訪問してカンダタシステムを利用すれば、何度でも海底下深部の試料を採取することができます。また、海底下100mの試料を採取したのに、船上に持ち上げるまでに海水や空気が混ざってしまっては、海底下の真の姿を知ることはできませんから、掘削孔の奥深くで容器を密閉することが不可欠なわけです。 カンダタシステムでは、先端に採水器をセットすることで、掘削孔内深部を流れる熱水を採取することができます。さらに、特殊な物質が詰め込まれた培養器を先端に設置し、掘削孔内に数ヶ月間吊り下げておくことで、あたかも魚を釣り上げるように、海底下の微生物を採取することができます。