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海域地震火山部門

鬼界カルデラ総合調査

鬼界カルデラとは?

鬼界カルデラは鹿児島の南、約100kmのところにある海底火山です。カルデラとは、大量のマグマが噴き出した後に空洞ができて、そこが陥没してできた地形のこと。カルデラを作るような超巨大噴火は、日本では過去15万年のあいだに14回起きたことが知られています。

鬼界カルデラをつくった7300年前の超巨大噴火では、火砕流が海を越えて、薩摩半島や大隅半島にまで達し、その地域の生物と縄文文化が壊滅しました。また、成層圏まで上昇した噴煙により、火山灰が偏西風に運ばれて東北地方にまで降り積もりました。

(左)鬼界カルデラは九州南方にある海域火山で、7300年前に超巨大噴火を起こした。赤の線は火砕流到達域。黒の線は火山灰到達域と降灰の厚さを示す。
(右)噴煙を上げる薩摩硫黄島の硫黄岳。

鬼界カルデラでは、13万年前と9万5000年前にも超巨大噴火が起きたことが分かっています。現在も噴火を継続して起こしていて、カルデラの外輪山上にある薩摩硫黄島の硫黄岳は、日本を代表する活火山の一つです。また、海面下でも、カルデラの中央部で溶岩ドームが密かに成長していることが最近の調査で明らかになってきました。

鬼界カルデラの海底地形。東西約20km、南北約18kmの陥没地形を取り囲む外輪山の上に薩摩硫黄島と竹島がある。カルデラの中央に大小の溶岩ドームが成長している。
(神戸大学の海底地形データを使用)

海底カルデラのナゾ

過去に起きた火山活動の痕跡は、薩摩硫黄島や竹島、薩摩半島や大隅半島、種子島や屋久島にも見られますが、限られた場所に残された断片的な情報です。鬼界カルデラの大部分は海底にあるため、現在海面下で起きている火山活動や、火山活動を引き起こすマグマの動きなどの実態や情報がほとんどありません。

過去にどのような火山活動を起こしてきたのか、そして現在カルデラの下ではどのようなマグマの動きがあるのかを知ることは、今後の火山活動の行方を予測するためにも非常に重要です。そのカギを握るのが海域の調査です。

鬼界カルデラとその周囲

鬼界カルデラの「過去」と「現在」を調べる

鬼界カルデラ総合調査では、「過去」と「現在」という二つの視点から研究を行っています。「過去」を調べるために、カルデラ内外の広い範囲で火山岩や火山性堆積物の採取を行いました。

火山岩は過去の噴火で噴出したマグマです。「ドレッジ」と呼ばれる金属製の巨大なちり取り(岩石を採取する箱)を船からワイヤーで海底に下ろし、引きずることで採取します。ドレッジで採取された火山岩から、海底噴火のメカニズムや過去と現在のマグマについての知見が得られつつあります。

火山性堆積物は、火山砂や火山灰が海底に堆積したものです。これは、金属製の筒を海底に突き刺す「ピストンコア」と、地球深部探査船「ちきゅう」を用いた掘削によって採取しました。「過去」2回の超巨大噴火による噴出物と噴出したマグマの変化を時代を追って調べることができます。

鬼界カルデラの海域調査の模式図。カルデラの内外でドレッジやピストンコアを行い、海底にある火山岩や火山性堆積物を採取する。海底地震計等の海底機器を設置して地震波や電磁場変動をモニターする。

(左)ドレッジにより岩石が採取された様子。(右)ピストンコアを船から海底に下ろす作業。

鬼界カルデラの「現在」を調べるために、「海底地震計」や「海底電位差磁力計」を海底カルデラの内外に設置しました。数か月~数年の期間、地震や微動、電磁場の変動を収録します。

マグマの移動があるとその周りの地殻にひずみがたまり地震が発生します。海底地震計の記録から震源を解析することでマグマの位置や動きをモニターできます。また、カルデラの下を通過してきた地震の波形を解析することにより、カルデラ下の地殻やマントルの構造を知ることができます。

地殻やマントル内の電気伝導度の分布を記録する海底電位差磁力計の解析からも、マグマの位置や量を推定できます。マグマの導電性は周りの岩石よりも高いからです。

海底地震計を設置する作業。写真中央のオレンジ色の球体が海底地震計。船のクレーンで着水させ、あとは自由落下で海底に設置する。

陸上でも、周辺の島々に臨時の観測点を設置して鬼界カルデラの観測がおこなわれています。安定したデータを得るために地震計は地中に埋設されています。太陽光発電パネルの電力により、収録器のデータはモバイル回線を介して研究室に送信されます。

竹島(三島村竹島)での観測機器の設置の様子。
地震計(上段左)を埋設し(上段右)、データを収録器からモバイル回線(下段)により研究室へ送る。

2021年度には「地震波構造探査」も実施しました。これは、船から曳航するエアガンと呼ばれる人工震源を用いて音波を発生させ、あらかじめ設置した海底地震計で音波を捉えることで、海底下の地殻やマントルの構造を明らかにする手法です。

海域で船は自由に航走できるため、音波を発生させる人工震源の位置を調査の目的に合わせて自由に動かせます。そのためこの手法は、陸上火山よりも海底火山の調査で威力を発揮します。今回の調査では、鬼界カルデラを通る約170kmの直線上に約40台の海底地震計を設置し、その上をエアガンで音波を発生させながら航走して探査を行いました。このエアガンの信号は、陸上の観測点でも記録されました。

鬼界カルデラにおける地震波構造探査の模式図。「かいめい」が曳航するエアガンから発生した音波は地中を通り、直線状に配列した海底地震計で捉えることにより火山下の地殻やマントルの構造を得る。「かいめい」ではこの後海底ボーリング調査(BMS)も実施予定。

(左)大きく黒いのは浮き。その下にぶら下がっている銀色の筒がエアガン。これを4本船から200m離して曳航する。
(右)エアガンの曳航時の様子。

「かいめい」から発振されたエアガンの信号をとらえたデータ(波形プロット)。

これまでの研究航海と今後の調査予定

この鬼界カルデラ総合調査は、JAMSTECと神戸大学の共同研究として実施しています。JAMSTECでは、2019年度に「かいれい」を用いたドレッジと、「ちきゅう」を用いた掘削調査を行いました。2020年度には、「かいれい」を用いたドレッジとピストンコアによる岩石、堆積物試料の採取を行いました。さらに海底地震計と海底電位差磁力計の設置を行いました。2021年度には、「かいめい」を用いて地震波構造探査を実施しました。さらに同船を用いて、海底設置型掘削装置による海底ボーリング調査を実施する予定です。今後も、神戸大学の船舶を用いた調査と合わせて、鬼界カルデラ火山の「過去」と「現在」を明らかにしていきます。