更新日:2022/04/15

公募研究

温暖化する中緯度大気海洋場における台風温帯低気圧化の力学過程の解明

研究代表者 辻野智紀# (気象庁気象研究所・研究官)
研究協力者 和田章義# (気象庁気象研究所・室長)、柳瀬亘# (A01-1分担)
[学位:*海洋学,#気象学]

低緯度の海洋上で発達した台風は、中緯度に移動するとともに、温帯低気圧に構造を変化させる。この顕著な構造変化は温帯低気圧化と呼ばれ、強風域および強雨域が拡大する。温帯低気圧化は、台風のエネルギー源である海面からの水蒸気供給の減少、温帯低気圧のエネルギー源である中緯度ジェット気流によってもたらされると考えられている。一方、エネルギー源の変化に応答した低気圧構造変化の内部過程は、個々の積乱雲と低気圧渦のスケール間相互作用を伴う。したがって、低気圧構造の変化過程の理解には、積乱雲スケールの流れを捉えることが可能な数値大気モデルによる数値実験が必要となる。このような数値実験は、近年の計算機能力の向上および、精緻な数値モデルの発達により可能になっている。また数値実験は、将来温暖化した仮想的な大気海洋環境場(低気圧のエネルギー源)を計算機上で表現することも可能である。
本研究では、複数の非静力学大気モデルを用い、積乱雲を直接表現可能な高解像度の台風数値実験を実施する。実験結果を力学、熱力学方程式によって定量的に評価し、以下を解明する(図も参照):

  1. 温帯低気圧化における低気圧構造の変化過程の包括的なメカニズム(台風構造の衰退、温帯低気圧構造の強化)
  2. 温暖化した大気海洋環境場が温帯低気圧化過程の変質に与える影響

本研究は極端現象に焦点を当てるA01研究班と密接に連携をとる。