更新日:2021/04/09

計画研究紹介

A01-1 台風・爆弾低気圧の予測可能性とスケール間大気海洋相互作用

研究代表者 川村隆一#(九州大学・教授)
研究分担者 柳瀬 亘#(気象庁気象研究所・主任研究官),森本昭彦*(愛媛大学・教授),山本 勝#(九州大学・准教授),宮本佳明#(慶応義塾大学・准教授),富田裕之*(北海道大学・准教授),金田幸恵#(名古屋大学・特任助教),那須野智江#(海洋研究開発機構・グループリーダー)
PD研究員 李 肖陽#(九州大学・助教)
研究協力者 相木秀則*(A02-3分担),川合義美*(A02-5分担),飯塚 聡*(A01-2代表),杉本周作*(A03-9分担),吉田 聡#(京都大学・准教授),和田章義#(気象庁気象研究所・室長),伊藤耕介#(琉球大学・准教授),川野哲也#(九州大学・助教),趙 寧*(海洋研究開発機構・研究員),筆保弘徳#(横浜国立大学・教授),藤原圭太#(京都大学・特任助教),他1名
[学位:*海洋学,#気象学]

高解像度大気大循環モデルや領域大気海洋結合モデル等による数値実験や、アンサンブル大気再解析データ・衛星リモートセンシングデータ・海洋観測データの解析による検証を通じ、台風と爆弾低気圧の発達プロセスに果たす中緯度大気海洋相互作用の役割を定量的に解明し、両ストームの強度・進路予測の大幅な改善並びにストーム起源の局地的豪雨・豪雪・暴風等の顕著現象の予測可能性に貢献する。具体的なサブ課題(1)~(3)を以下に示す。

  1. 両ストーム及びその海洋応答の時空間分布及び変動を、流速計やアルゴフロート等現場・衛星観測データ解析とデータ同化を併用して解明すると共に、極端現象に与える影響を数値シミュレーションや地球観測衛星データによる強度推定手法を用いて定量的に評価する。
  2. 黒潮続流等の暖水渦が爆弾低気圧の内部構造に与えるインパクト、低気圧による隣接海域間の大気ブリッジ等の解明を通して、低気圧の微視的・巨視的描像の観点から黒潮・黒潮続流による低気圧活動の力学的変調を評価する。
  3. 温暖化する気候系での大気海洋環境場の変質が両ストームの強化過程・最大強度・豪雨・豪雪及び表層海洋に与える影響、及び遠隔地で発生する豪雨に与える影響を評価すると共に、その力学・熱力学過程を解明する。

上記サブ課題(1)では両ストームに対して黒潮・黒潮続流がどのように応答するのかという重要な問題であることから、縁辺海や黒潮親潮続流の海洋現場観測を主に担当するA02-3・5・6班と有機的な連携体制を確立することで、観測事実に立脚したストームと中緯度海洋とのスケール間大気海洋相互作用の仕組みについて新たな発展が期待できる。サブ課題(2)では中緯度海洋変動と大気応答を扱うA02-6・7班・A03-9班との連携を通じて、ストーム活動の力学的変調と大規模循環場とのフィードバック過程に関する新たな概念の確立が期待される。サブ課題(3)は温暖化の下でのストームの強化とその遠隔作用のプロセスについてはA02-7班・A03-9班と連携、ストーム起源の極端現象(線状降水帯等)ではA01-2班と連携することにより、温暖化の環境における両ストーム活動の変調並びにストーム起源の極端現象の将来予測についての定量的なアプローチが可能となる。

高解像度の数値シミュレーションで再現された「スーパー爆弾低気圧」に伴う雲の三次元構造。低気圧が最も急発達した時刻(協定世界時2018年1月4日6時)で描画。この低気圧に伴う暴風や大雪によって、死者20人超の人的被害や約11億ドルの経済的損失が生じた。メキシコ湾流からの熱・水蒸気供給が、低気圧中心付近の凝結熱の生成を促すことで低気圧の急発達を導いたと考えられる。

作成:立正大学地球環境科学部 平田英隆氏