JAMSTEC「海の日」Special Day
海の日セミナー
計算科学で迫る黒潮の並行世界
今起きている大蛇行はひとつの可能性に過ぎない
イントロダクション Introduction ——
海をゼロから見つめ直す
海に関する社会的関心事は、水産資源、広がる汚染、新エネルギー、気象・気候への影響などでしょう。しかし、これらは社会の視点で見たものであり、個人としての私たち一人ひとりが見る海はもっと自由度の高いものです。そこで、今回は社会的課題を一旦忘れて、別の視点で海を覗いてみようと思います。私たちがビーチに出て眺める渚のずっと向こうには、巨大で躍動的な海の姿があります。その海を純粋な科学の目で描いたとき、私たちと海との間に新らしい接点が見えてくるかも知れません。
海洋研究の最先端を届ける
今回お贈りするのは、学会で発表したばかりの最新情報です。科学の専門領域が細かく枝分かれした現代では、研究者同士でも互いの研究を理解するのは簡単ではありません。まして、最新の成果を一般の人たちに説明するのは不可能にも思えます。しかし、基本的なことならインターネットでいくらでも調べられるこの時代、研究者にしかできないことは最先端を届けることです。研究者が何に興味を持っていて、何を切り拓こうとしているのか、このセミナーを通して共有したいと思います。
「感じる」ことが「学ぶ」になる
このセミナーにノートと鉛筆は必要ありません。頑張って集中する必要もありません。ただただ目の前で起きることを体験してください。このセミナーが目指すものは科学知見の説明ではなく、研究者が発見してきた世界への案内です。レクチャーではない、感じるセミナーをお届けする予定です。
講演内容 Topics ——
黒潮に潜む並行世界
“今この瞬間この場所に私はいる”と考えている「私」が実は他にもいたらどうでしょうか?そのもう一人の私はもしかしたら、自分と全く違う人生を歩んでいたら…。このような並行世界(=パラレルワールド)は、もともと量子力学で持ち出された概念ですが、今では小説や映画などでしばしば登場します。しかし、それは純粋物理学やSFの特権的世界観ではありません。並行世界という見方は、時事刻々と変化する黒潮の姿を説明するときにも実は都合が良いのです。2017年夏から続く黒潮大蛇行を、並行世界をキーワードに捉えてみます。
大規模予測実験!
天気予報の海洋版とも言える海洋数値シミュレーションは、今や海の研究にはなくてはならない道具です。現在、様々な研究機関が黒潮の予報に挑戦しています。今回の話は、海洋研究開発機構で開発した超高分解能の海洋数値シミュレーションを使った黒潮の大規模予測実験の結果に基づいています。
機械学習とのコラボレーション
ブラックボックスは魔法の杖と化します。しかし、機械学習は魔法ではありません。人工知能をはじめ機械学習が“何を行なっているか”はブラックボックスではないのです。黒潮にはどんな並行世界があるのか、機械学習を使って探ります。
スケジュール Schedule ——
スケジュール詳細は下記サイトをご覧ください。
国立研究開発法人 海洋研究開発機構
付加価値情報創生部門 アプリケーションラボ 研究員
北海道大学大学院博士課程修了。北海道大学理学研究院、同地球環境科学研究院および東京大学理学部で研究員を経て現在に至る。海の物理現象を中心とした数理科学的研究を展開する。