地球深部探査船「ちきゅう」

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砂のテキストブック

砂を調べるために役立つ情報を集めました。

どうして砂を調べると私たちの暮らす地球の歴史が分かるのか、その秘密に迫ります。

砂を含めた多くの堆積粒子は、岩石が風雨にさらされて壊れた(風化作用)「かけら」からできています。一般には、はじめは大きなかけら(礫:れき)だった ものが、河川によって下流に運ばれる途中でさらに細かく砕かれ、細かいものほどより遠くまで運ばれます。つまり、上流の河原では大きな礫(れき)が多く、 中流、下流と下るにつれて、細かい礫(れき)から砂へと変化していき、最終的には海に流れ込んで堆積します。ですから、河川や海岸、あるいは海底の砂の中 に含まれる鉱物の種類や化学組成などの特徴を丹念に調べると、その砂が、元々どこの地層・岩石から来たものなのかが分かるわけです。

海で堆積した地層は、沈み込む海洋プレートに乗って海溝に引きずり込まれます。しかし、一部は陸側のプレートにはぎ取られてくっつき、再び大陸の一部になります。こうしてできた地質体を付加体と言いますが、日本列島の多くの部分はこの付加体からできているのです。

このように地層や岩石は、できては壊れ、できては壊れということを何度も繰り返しています。その一連のプロセスの中で、鉱物もまた壊れたり変質して他の鉱物になったりということを繰り返しますが、ある種類の頑丈な鉱物は壊れることも変質することもなく、このサイクルの中を何度も巡ることがあります。こうした鉱物には、今までにたどってきた地質プロセスの歴史が刻まれています。こうした情報を丹念に読み解いていくことによって、地球科学者は地球が今までにどんな変化をたどってきたのかを推定することができるのです。

地質学にはちゃんとした「砂」の定義があります。

1. 砂の分類

まず「砂」とは何かを説明しましょう。「そんなこと説明されなくても知っているよ。」と思われるかもしれませんが、地質学にはちゃんとした「砂」の定義があるのです。地質学の分類では、直径が2mmから1/16(0.0625)mmの堆積粒子を砂と呼ぶことになっています。これより粗いものは礫(れき)と呼ばれ、これより細かいものはシルトと呼ばれます。

2. 砂とは何か?

砂とは何か

砂粒は多くの場合、鉱物結晶1個(鉱物単結晶)からできています。岩石はさまざまな鉱物の集合体ですが、これが壊れて運ばれる過程で鉱物単位に分離され、 砂サイズになるとほぼ1個の鉱物から成る粒子になります。しかし中には(特にやや粗い砂には)、まだ完全に単結晶にまで分離しきれていない複合粒子もあ り、これを岩片と呼んでいます。また、原岩が非結晶質の岩石(泥岩やチャートなど)の場合にも、壊れたかけらは鉱物ではなく岩片になります。それから、鉱 物ではありませんが、火山ガラスのかけらなども同様に壊れて砂粒になることがあります。また、海岸では炭酸塩や珪酸塩の殻を持った生物の死骸(化石)が砂 として溜まっているものがあります。有名な「星砂」はこの例です。

河川、海岸、深海の砂を構成する代表的な鉱物、粒子を紹介します。

陸上で見られる砂

石英(せきえい、英:quartzクォーツ)

石英(せきえい、英:quartzクォーツ)

ほとんどの岩石に含まれる鉱物で、最も普通に見られる鉱物です。次に述べる長石と似ていますが、長石のように風化によって変質しないので、透明感があります。大きくて透明度の良いものは水晶と呼ばれます。通常無色ですが、ごく微量の不純物によって、紫や薄い茶色あるいはピンクに着色することもあります。

長石類(ちょうせき、英:feldsparフェルスパー)

長石類(ちょうせき、英:feldsparフェルスパー)

ほとんどすべての岩石に含まれ、地殻の体積で最も多い鉱物です。無色透明ですが、変質によって、ややにごった見え方をすることもあります。斜長石とカリ長石との区別は肉眼ではほぼ不可能なので、ひとまとめにして長石と呼びます。

斜方輝石(しゃほうきせき、英:orthopyroxeneオルソパイロキシン)

斜方輝石(しゃほうきせき、英:orthopyroxeneオルソパイロキシン)

火山岩起源の砂などに多く含まれる鉱物で、亜麻色/褐色で短柱状の形が特徴的です。

実体顕微鏡でのぞきながら、ようじなどを用いて結晶を回すと色が変わる様子を観察することができます。

単斜輝石(たんしゃきせき、英:clinopyroxeneクライノパイロキシン)

単斜輝石(たんしゃきせき、英:clinopyroxeneクライノパイロキシン)

斜方輝石と同じく火山岩起源の砂などに多く含まれ、緑色で短柱状の形が特徴的です。

角閃石(かくせんせき、英:amphiboleアンフィボール)

角閃石(かくせんせき、英:amphiboleアンフィボール)

非常にいろいろな種類がありますが、よく産出するのは普通角閃石(英:hornblendeホルンブレンド)と呼ばれるもので、濃緑色から黒色の長柱状をしているのが特徴です。色が濃いので、不透明に見えることもよくあります。

ザクロ石(ざくろいし、英:garnetガーネット)

ザクロ石(ざくろいし、英:garnetガーネット)

宝石でおなじみのこの鉱物は、赤い色ところころした形が特徴的です。花崗岩や変成岩、砂岩などに由来します。

雲母(うんも、英:micaマイカ)

雲母(うんも、英:micaマイカ)

ペラペラと紙を重ねたような形をしています。キラキラとしたフィルムのような光沢があります。重鉱物ですが、その形状ゆえに水に浮くことがあります。主に花崗岩や変成岩に由来します。色が無色のものは白雲母で、色が濃い褐色のものは黒雲母です。

カンラン石(かんらんせき、英:olivineオリビン)

カンラン石(かんらんせき、英:olivineオリビン)

マントルの主要鉱物ですが、地殻には「まれ」な鉱物です。黄色〜黄緑色でコロコロとした形をしています。宝石級のものはペリドットと呼ばれます。

磁鉄鉱(じてっこう、英:magnetiteマグネタイト)

磁鉄鉱(じてっこう、英:magnetiteマグネタイト)

黒光りする不透明鉱物で、立方体に近い形をしています(少し角が丸くなっているものもあります)。非常に強い磁性を持っているので、普通の磁石でもよくつきます。

実際の観察では黒いそろばん玉のような形を粒子を探したり、磁石でくっつけて集めると観察が容易になります。

火山ガラス(かざんがらす、英:volcanic glassヴォルカニックグラス)

火山ガラス(かざんがらす、英:volcanic glassヴォルカニックグラス)

宝石でおなじみのこの鉱物は、赤い色ところころした形が特徴的です。花崗岩や変成岩、砂岩などに由来します。

岩片(がんぺん、英:lithic fragmentリシックフラグメント)

岩片(がんぺん、英:lithic fragmentリシックフラグメント)

色は白から灰色、黒、あるいは緑とさまざまですが、いずれもにごった不透明な感じで、形も不定です。

人工物(じんこうぶつ、英:artificial objectアーティフィシャルオブジェクト)

人工物(じんこうぶつ、英:artificial objectアーティフィシャルオブジェクト)

時として、人工の金属やプラステッィク、あるいはガラスや陶器の破片などが混入していることがあります。こういった人工物の中には自然のものと見まがうものもありますが、たいていは結晶とは異なった不定形で、不自然な色や光り方をしているなどの特徴があります。

深海で見られる粒子

有孔虫(ゆうこうちゅう、英語:Foraminiferフォラミニフェラ)

有孔虫(ゆうこうちゅう、英語:Foraminiferフォラミニフェラ) 有孔虫(ゆうこうちゅう、英語:Foraminiferフォラミニフェラ)

有孔虫には浮遊性有孔虫と底性有孔虫がいます。

浮遊性:海の表層などで棲息する有孔虫。
底性:海底で棲息する有孔虫。

主に海水に棲息する単細胞の動物。多くは炭酸カルシウムの殻を持つ。殻は多くの部屋(室または房、chamber)に分かれているものが多い。アメーバと同様に仮足と呼ばれる糸状に突出した部分を持っており、移動、着生、捕食などのために使われています。

地球史においても出現する時期が限られている種も多く、その化石の含まれる地層が堆積した地質時代を示す示準化石としても利用されます。また、炭酸カルシウムの殻に含まれる酸素を利用して、その当時の海水温の推定にも利用されます。

放散虫(ほうさんちゅう、英語:Radiolariaラジオラリア)

放散虫(ほうさんちゅう、英語:Radiolariaラジオラリア)

主として海のプランクトンとして出現する単細胞生物です。ガラスの骨格をもっています。顕微鏡下で観察すると、有孔虫より小さく透き通って見えます。

海綿骨針(かいめんこっしん、英:Sponge Spiculeスポンジスピキュール)

海綿骨針(かいめんこっしん、英:Sponge Spiculeスポンジスピキュール) 海綿骨針(かいめんこっしん、英:Sponge Spiculeスポンジスピキュール)

無脊椎動物である海綿の骨の一部。熱帯の海を中心に世界中のあらゆる海に生息し、形は様々です。壺状、扇状、杯状など様々な形態をもつ種が存在し、同種であっても生息環境によって形状が異なる場合もある。骨格は種類によって異なり、珪質(SiO2)、石灰質(CaCO3)や柔軟性のある海綿質繊維の「スポンジ」で構成されています。

岩石は大きく分けて、堆積岩、火成岩、変成岩に分類されます。

堆積岩とは、水中で(主として海中、まれに湖や河川敷などのこともある)砂や泥などが堆積したものが、長い時間をかけて押し固められて岩石になったものです。

火成岩は、マグマが冷え固まってできた岩石で、地上もしくは比較的浅い地下で固まった火山岩と、地下深い所で固まった深成岩に大別されます。

変成岩は、もともと堆積岩や火成岩であったものが、高温や高圧などの条件にさらされて、鉱物組み合わせや組織が変化したものです。

岩石の表面は、風化による変質や汚れで見にくくなっていることがよくあるので、鑑定の際にはハンマーなどで割った新鮮な面を観察するようにすると良いでしょう。

  • ハンマーを使用する際には、周りに人がいないかよく確認しましょう。
  • 岩石用ハンマーのヘッドは片側が平らで反対側が尖っていますが、通常は平らな方の面で叩きます。
  • 岩石が割れた瞬間に小さなかけらが跳ねて飛ぶことがありますので、気をつけましょう。特に目に入ると危険なので、使用時には眼鏡をかけると良いでしょう(安全眼鏡=ゴーグルが有ればさらに良い)。また、頸動脈も同様に危険なので、首にもスカーフやタオルを巻いておくと安全です。
  • 岩石を割る際にはハンマーを持っていない方の手や足で、割ろうとする岩石を固定すると割りやすくなりますが、この時手足の指を叩かないよう、十分注意しましょう。万一叩いた時にダメージを最小限にする為に、手袋や、先端の硬い靴(安全靴など)を装着するようにしましょう。
  • 岩石を割るにはコツがあります。岩石の平らな面を上にして、その真ん中辺りにハンマーの角の部分を当てるような感じで鋭く振ると、比較的上手く割れます。

代表的な岩石

地殻を構成する岩石 堆積岩 砂岩、泥岩、礫岩、チャート石灰岩、凝灰岩
火成岩 火山岩 流紋岩、安山岩、玄武岩
深成岩 花崗岩、閃緑岩、斑れい岩
変成岩 片岩、片麻岩、角閃岩、緑色岩
マントルを構成する岩石 カンラン岩

以下に、それぞれの代表的な岩石を紹介します。なお、文中に出てくる鉱物名については「代表的な鉱物の種類」の章を参照してください。

堆積岩

砂岩(さがん、英:sandstoneサンドストーン)

砂岩(さがん、英:sandstoneサンドストーン)

砂が固まってできた岩石です。色は砂岩を構成する砂粒子の種類によって変わります。石英や長石が多い場合は白っぽく、火山岩など他の岩石の破片(岩片)が多く含まれている場合は灰色っぽくなります。

泥岩(でいがん、英:mudstoneマッドストーン)

泥が固まってできた岩石です。一般に黒っぽく、砂岩よりも緻密な組織を持っています。

礫岩(れきがん、英:conglomerateコングロメレイト)

礫(直径2 mm以上の粒子)が固まってできた岩石です。礫と礫の間は、泥や石灰質の微細粒子が充填して、接着剤の役割を果たしています。礫岩を構成する礫は、通常、角が取れて丸くなっていることが多いのですが、中には角張った礫で構成されているものもあり、これらは特に角礫岩(かくれきがん)と呼ばれます。

チャート(ちゃーと、英:chertチャート)

チャート(ちゃーと、英:chertチャート)

砂が固まってできた岩石です。色は砂岩を構成する砂粒子の種類によって変わります。石英や長石が多い場合は白っぽく、火山岩など他の岩石の破片(岩片)が多く含まれている場合は灰色っぽくなります。

石灰岩(せっかいがん、英:limestoneライムストーン)

石灰岩(せっかいがん、英:limestoneライムストーン)

炭酸カルシウム(CaCO3)が浅海底で降り積もってできた岩石です。主に、炭酸カルシウムの殻を持つプランクトンの死骸が降り積もって形成されます。珊瑚礁などは石灰岩の典型です。純粋な炭酸カルシウムのみでできているものは白~象牙色(ややピンクがかることもあり)ですが、砂などの不純物がある程度混じると灰色になります。鉄より柔らかいので、ナイフや釘などの鋭利な金属片で引っかくと傷をつけることができます。また、塩酸やクエン酸(レモン汁等)をかけるとシュワシュワと二酸化炭素の泡を出しながら溶けることでも他の岩石と容易に見分けられます。

凝灰岩(ぎょうかいがん、英:tuffタフ)

凝灰岩(ぎょうかいがん、英:tuffタフ)

降り積もった火山灰が押し固められてできた岩石で、その意味では火成岩と堆積岩の中間的な性格を持つ岩石と言えます。基本的には白っぽいものが多いですが、火山灰の種類や変質によって様々な色のものができます。岩石が形成される過程で、火山灰同士の間にあった空気・ガス成分が抜けた跡である孔が多く空いていることもあります。表面がガサガサした感じで、低密度であるのが特徴です。

火成岩

火山岩と深成岩は組織で区別されます。火山岩は急冷されてできたため、細粒な基質(石基)の中に、比較的早い時期にマグマから結晶化した一部の鉱物結晶(班晶)が浮いているような組織(斑状組織)が特徴的です。石によっては、班晶が全く認められないものもあります。深成岩は、地下深い所でゆっくりと冷え固まったため、すべての鉱物が大きく成長している(等粒状組織)のが特徴です。また、火山岩、深成岩それぞれについて、化学組成(シリカの含有量)によって、酸性岩、中性岩、苦鉄質岩に分類され、この順にシリカの含有量は少なくなります。また、色はシリカの含有量が多いほど白く、少なくなると黒に近づきます。この色の変化は,色指数(しきしすう)いう数値で表すこともできます。色指数とは、岩石に含まれる有色鉱物の体積比を表したもので、黒い岩石ほど値が大きく、白い石ほど小さくなります。

火成岩のシリカの科学組成による分類

酸性岩 中性岩 苦鉄質岩
SiO2含有量 (wt%) >66 66-52 <52
色指数 <10 10-35 >35
火山岩 流紋岩 安山岩 玄武岩
深成岩 花崗岩 閃緑岩 斑れい岩
火山岩(左)と深成岩(右)の代表的な組織を示す偏光顕微鏡写真

火山岩(左)と深成岩(右)の代表的な組織を示す偏光顕微鏡写真

火成岩>火山岩

流紋岩(りゅうもんがん、英:rhyoliteライオライト)

シリカの多い火山岩で、基本的に白色~明灰色です。造岩鉱物は石英と斜長石が多く、他に角閃石などの有色鉱物が点々と認められることがあります。表面はガサガサした感じのことが多く、マグマが冷え固まる際にガスが抜けた跡である小さな穴が認められることもあります。

安山岩(あんざんがん、英:andesiteアンデサイト)

シリカが中程度に含まれる灰色の火山岩で、日本のようなプレートの沈み込み帯には最も普通に存在する火山岩です。造岩鉱物として、石英、斜長石、輝石、角閃石、黒雲母、まれにカンラン石を含みます。

玄武岩(げんぶがん、英:basaltバサルト)

玄武岩(げんぶがん、英:basaltバサルト)

シリカの少ない火山岩で、新鮮なものは黒に近い色をしていますが、風化や変質によって緑色や茶色などに変色することもあります。石英を含まず、輝石(単斜輝石もしくは単斜輝石と斜方輝石)と斜長石が主な構成鉱物で、カンラン石を含むものもあります。

火成岩>深成岩

花崗岩(かこうがん、英:graniteグラニット)

花崗岩(かこうがん、英:graniteグラニット)

石英と長石(斜長石、カリ長石、またはその両方)を主体とする深成岩で、その他に雲母(黒雲母、白雲母、またはその両方)や角閃石、磁鉄鉱などを含んでいることが多いです。みかげ石とも呼ばれ、建材や墓石などによく使われています。

閃緑岩(せんりょくがん、英:dioriteダイオライト)

花崗岩と斑れい岩の中間的な化学組成を持つ深成岩で、主に斜長石、角閃石、輝石(単斜輝石、斜方輝石)、黒雲母と少量の石英を含みます。有色鉱物は輝石よりも角閃石が多いのが特徴で、この点で斑れい岩と区別できます。比較的石英を多く含むものは、石英閃緑岩と呼ばれます。

斑れい岩(はんれいがん、英:gabbroガブロ)

主に輝石(単斜輝石もしくは単斜輝石と斜方輝石)と斜長石からなる深成岩です。石英を含まないので、白色鉱物はすべて斜長石です。黒っぽい輝石類と、白っぽい斜長石がごま塩状に見えることがよくあります。その他に角閃石やカンラン石を含むものもあります。

変成岩

岩石(火成岩、堆積岩)に熱や圧力が加わることによって、構成鉱物の組合せやその鉱物化学組成が変化する現象(再結晶化)を被った岩石のことを変成岩と呼びます。 また、高温・高圧下で再結晶化を起こす現象を変成作用といいます。 大きく分けると、接触変成岩と広域変成岩に分けられ、高温のマグマが岩石中に貫入した際に、その周囲の岩石が高温を被って変成作用を受けた岩石を接触変成岩と呼び、 岩石が地殻変動により深部に埋没し、広域に高温、高圧に晒され、変成作用を受けた岩石を広域変成岩と呼びます。 広域変成岩は、再結晶化の程度により、結晶片岩、片麻岩などにさらに分類されます。

片岩(へんがん、英:schistシスト)

地下の深い所で大きな力を受けて変形を伴いながら変成されたために、ペラペラと剥がれやすいシート状の構造を持つようになった岩石のことを片岩(へんがん)と呼びます。片岩には原岩の名前を冠して、例えば原岩が砂岩であれば砂質片岩(さしつへんがん)、泥岩であれば泥質片岩(でいしつへんがん)のように呼びます。原岩が玄武岩の場合のみ、緑色片岩(りょくしょくへんがん)と呼ばれます。シート状に剥がれやすいのは、雲母や緑泥石(りょくでいせき)のようなシート状鉱物が多く含まれ、これらが面状に並んでいるためです。

片麻岩(へんまがん、英:gneissナイス)

片岩同様、強い面構造を持った岩石ですが、片岩より粗粒であるため、片岩ほど剥がれやすくはありません。片岩より高温(> 600 ℃)で変成作用を受けたため、鉱物が大きく成長しており、雲母やザクロ石などが肉眼で確認できることが多いです。

角閃岩(かくせんがん、英:amphiboliteアンフィボライト)

角閃岩(かくせんがん、英:amphiboliteアンフィボライト)

玄武岩や斑れい岩を原岩とする変成岩で、ほとんど角閃石と斜長石から構成されます。深緑色の硬い岩石で、片岩や片麻岩のような構造を持たないのが特徴です。

緑色岩(りょくしょくがん、英:greenstoneグリーンストン)

緑色岩(りょくしょくがん、英:greenstoneグリーンストン)

緑色片岩に似ていますが、面構造を持たないものを緑色岩と呼びます。緑レン石(りょくれんせき)の黄緑色と、緑泥石の深緑色の織りなす斑模様が特徴的です。

その他

カンラン岩(かんらんがん、英:peridotiteペリドタイト)

上に挙げた岩石はすべて地殻の岩石ですが、カンラン岩はマントルを構成する主要な岩石です。そのため地表に露出することは稀で、特殊な地域にしか分布しません。カンラン岩、主にカンラン石と輝石が構成しており、斜長石やスピネルを含んでいることもあります。色はカンラン石の色を反映した明るい緑色をしています。粗粒であるために、一つ一つの鉱物がはっきり肉眼で確認できることが多いです。カンラン石は変質に弱く、変質すると蛇紋石(じゃもんせき)という鉱物になります。カンラン岩が変質した結果できた、ほぼ蛇紋石だけからなる岩石を蛇紋岩(じゃもんがん)と呼びます。

地表における岩石の分布を色分けした地図を地質図といいます。

地質図の見方

地図の上に、地表における岩石の分布(植生や土壌を取り除いた直下の岩石)を色分けして描いた図を地質図と呼びます。小縮尺の地質図では岩相(岩石の種類)ごとに分けるなどして表すことが多いのですが、大縮尺のものになるといくつかの岩相を時代などによってひとまとめにした「層群」や、さらに大きな単位である「累層」ごとに色分けすることが多いです。 それぞれの岩相に用いられる色は、ある程度慣習的に決まっており、花崗岩や閃緑岩などの深成岩は赤系、砂岩や泥岩などの堆積岩は黄~茶系、玄武岩及び玄武岩起源の変成岩(緑色岩、緑色片岩、角閃岩など)は緑系、カンラン岩は紫系、が多いようです(ただし例外もあり)。これにより、地質図をぱっと見ただけでその地域にどのような岩石が分布しているかがだいたい分かります。

地質年代区分

地質年代区分と地球史上の重要イベント

地層や岩石は、地球の歴史を通じてゆっくりと形成されてきたものです。地質学では、地球ができてからの歴史をいくつかの時代に区分しています。「ジュラ紀」や「白亜紀」などは、みなさんも耳にしたことがあるでしょう。正確な年代が分かる場合には「○○万年前の地層」というように呼んでも良いのですが(実際そういう言い方も使います)、地質時代区分は地質学上の大きな変化(例えばある生物群の絶滅など)を境目にしていることが多いので、例えば「ジュラ紀の地層」のように呼んだ方が、その地質学的な意味が分かりやすいこともあります。人間の歴史でも「西暦1630年頃」という代わりに「江戸時代の初期」と言った方が分かりやすい場合があるのと同様です。

(注)第四紀と更新世に関連する地質時代・年代層序については、2009年の国際地質科学連合(IUGS)による新定義勧告により、第四紀・第四系と更新世・更新統の下限の定義について変更になりました。 (日本地質学会による報告別ウィンドウ

野外における砂採集実習の方法について紹介します。

砂の採取

地質学では、直径が2 mmから1/16 mm(0.0625 mm)までの堆積物を砂と呼びます。世間一般にはもっと粗いものも砂と呼んでしまっていますが、これは地質学では礫(れき)に分類されますので、「ちょっと細かいかな?」と思うくらいのものを選んでちょうど良いと思います。逆に細かい方はあまり気にする必要はありません。指で挟んでこすり合わせた時にざらざらとした感触のあるくらいのものであればだいたい大丈夫です。

砂の採取方法

実習では2種類の砂試料を採集します。

1つは砂全体に含まれる鉱物比を調べるための試料(バルク試料)で、これはスコップ等でザクっと採ったものを、そのまま試料袋に入れればオーケー。

もう1つは砂の中に含まれる重鉱物だけを濃集させて採った試料です。なぜ重鉱物だけを集めるのかというと、一般に石英や長石といった軽鉱物よりも、輝石や角閃石、あるいはジルコンといった重鉱物の方が多くの情報を与えてくれるからです。

砂全体に含まれる鉱物比を調べるための試料(バルク試料)の採取方法

  1. スコップ等でザクっと砂を採る。
  2. 2mm径位のふるい(台所のザル程度)でふるって、木の根や葉、粗い礫などを取り除いておく
  3. そのまま試料袋に入れるだけ。

重鉱物の集め方

野外で重鉱物を濃集させて採るための方法として「椀かけ」という方法を使います。これは鉱物の比重(密度)の違いを利用する方法で、水中で砂を入れた盆を傾けつつ回転させて、比較的軽い鉱物を飛ばし、後に残った重い鉱物を回収します。

砂の中に含まれる重鉱物だけを濃集させる採取方法(椀かけ)

砂の中に含まれる重鉱物だけを濃集させる採取方法(椀かけ)
  1. 盆にスコップ(移植ゴテ)1杯分くらいの砂を入れる。
  2. 水面下ギリギリのところで盆を傾けながら回転させる。すると、比重の軽い砂から碗の外に出ていく。
    <コツ!>盆の中央部が常に水面下にあり、縁部は盆を揺らすたびに水面から出たり入ったりする感じ。
  3. 盆の中の砂が最初の量の1%以下になるまで減らす。
  4. 盆に残った砂の色が黒っぽくなってきたら成功。ルーペなどで重鉱物を確認すること。

初めは上手くできなくて、盆の中の砂を全部流してしまったりするかもしれませんが、慣れるとかなり効率良く重鉱物だけを濃集させることができるようになります。重鉱物はもともと量が少ないので、何度も碗かけを行い、重鉱物を集めるようにしてみましょう。

鉱物の種類を調べるにはさまざまな方法がありますが、ここでは野外で手軽にできる鑑定方法を紹介します。また、鉱物ではありませんが、火山ガラスと岩片についてもあわせて説明します。

磁性による分類

鉄(二価鉄:Fe2+)を含む鉱物は磁性を示します。鉄の含有量が多いほど、強い磁性を示すので、ここでは2種類の磁石を使った分類方法を紹介します。

普通の磁石(フェライト磁石)につく鉱物(強磁性鉱物) 磁鉄鉱
強力磁石(サマリウム磁石、ネオジム磁石)につく鉱物(弱磁性鉱物) ザクロ石、斜方輝石、単斜輝石、角閃石など

*鉄の含有量(鉄/マグネシウム比)によってはつかないこともある。

  • 鉱物に直に磁石を近づけると、あとで取り除くのが大変なので、ビニール袋越しに磁石を当てるなどの工夫をすると良いでしょう。
  • 強力磁石は、キャッシュカード等の磁気カードや携帯電話等の誤作動を引き起こす事がありますので、使用時、携行時にはこれらに近づけないよう注意しましょう。特に、心臓ペースメーカー等の医療機器を使用している方は充分ご注意ください。

形状による分類

ここからは肉眼観察による分類ですが、数倍から5倍程度のルーペがあると良いでしょう。いわゆる虫眼鏡でも良いのですが、鉱物・宝石鑑定用のルーペがあればなお良いです。

形状 鉱物
長柱状
(一方向に長く伸びた形)
石英、角閃石、斜長石、緑レン石など
短柱状
(縦横比の小さい直方体)
斜方輝石、単斜輝石など
平板状
(ペラペラとした平べったい形)
白雲母、黒雲母、緑泥石、蛇紋石など
球状および立方体
(ころころとした形)
ザクロ石、カンラン石、磁鉄鉱、黄鉄鉱など
不定形
(角の尖った物が多い)
火山ガラス、岩片など

運搬・堆積の過程で割れるなどして、鉱物本来の形を失っているものもあるので、あくまで鉱物同定の目安と考えてください。

色による分類

一般に軽鉱物は無色、重鉱物は色がついています。大半の鉱物は透明ですが、重鉱物の中には不透明なものもあり、これらは不透明鉱物と呼ばれます。

無色 石英、長石、火山ガラス、白雲母(火山ガラスの中には褐色のものもある)
褐色 斜方輝石
緑色 単斜輝石、カンラン石
ザクロ石
黄緑色 緑レン石(エピドート)
濃緑色から黒 角閃石(一部に青色もある)
緑色 緑泥石
黒(不透明) 磁鉄鉱
金色 黄鉄鉱(不透明で、金属光沢あり)
不透明(にごった感じ) 岩片

色の観察をするポイント

  1. 同じ鉱物でも、化学組成の違いによって色が異なることがある。一般に重鉱物では鉄/マグネシウム比が大きくなるほど、色が濃くなる傾向がある。
  2. 岩鉱物に限らず、色彩学の一般的特徴として、量が多いほど色が濃く見えるという特徴がある(マス効果)。つまり同じ鉱物でも1粒の時はほとんど無色に見えたものが、たくさん集まるとはっきりした色を呈する、ということがある。
  3. 形状同様、色も鉱物同定における1つの目安と考えてください。

岩石は大きく分けて、堆積岩、火成岩、変成岩に分類されます。

試料準備

野外授業で採集した砂試料は、実験室でより詳しい分析を行います。まずバルク試料をふるいにかけて、250 μm(マイクロメートル)よりも粗いものを取り除きます(1マイクロメートルは1/1000ミリメートル)。粗いものには岩片などが多く、単結晶の鉱物に分離されていないものが多いからです。その後、ふるいにかけた試料と椀かけで濃縮した重鉱物の2種類の砂試料のそれぞれについて、薄片と呼ばれる試料に加工します。

薄片製作

岩石や鉱物をスライドガラスに貼り付けて薄く削ったものを薄片と言います。不透明鉱物を除く鉱物は非常に薄くすると光を透過するようになり、顕微鏡で観察することが可能になります。

採取した砂試料の観察準備

  • 野外で採集したバルクの砂試料をふるいにかけて、250 μm(マイクロメートル)よりも粗いものを取り除く
  • 濃集させた重鉱物の試料は、重液と呼ばれる比重の大きい液体で、さらに純度良く重鉱物を濃集させる(重液分離)
  • 砂試料は、そのままではバラバラになってしまうため、エポキシ系接着剤と混ぜてペースト状にし、スライドガラスに貼り付けて固定する。
  • 完全に固化したら、グラインダーなどで削って観察できる厚さまで薄くする。

* 重液分離とは?

水よりも比重(密度)の大きい液体を重液と言います。軽鉱物の密度は2.6から2.7 g/cm3くらいなので、これよりも比重の大きな液体の中では軽鉱物は浮きます。一方、重鉱物の密度はおおむね3.0 g/cm3以上なので、液の密度をこの間に調整してやれば、軽鉱物は浮き、重鉱物は沈みます。このようにして鉱物を分離する作業を重液分離と言い、鉱物分離の手法の一つとしてよく使われています。

電子顕微鏡による観察と科学組成分析

顕微鏡

鉱物の中には通常の顕微鏡観察だけでは見分けのつきにくいものもあります。そういった鉱物は、電子顕微鏡で化学組成を測定することによって判別します。また、鉱物の中には同じ種類であっても化学組成が微妙に異なるものがあります。たとえば、斜方輝石の化学式は(Fe, Mg)2Si2O6で表されますが、この最初の項「(Fe, Mg)2」 は、鉄(Fe)とマグネシウム(Mg)を足して2になる、という意味です。 つまり同じ斜方輝石であっても、Fe : Mg = 1 : 1のものもあれば、Fe : Mg = 0.5 : 1.5のものもあるということです。電子顕微鏡を用いた化学測定ではこういった化学組成の違いを明らかにすることができ、それによって、それぞれの鉱物の起源などを推定することができる場合があります。

年代測定

ジルコンやモナズ石といった鉱物は、ごく微量の放射性元素(ウランやトリウムなど)を含んでいます(もちろん微量なので、人体には無害です)。これらの元素は鉱物ができた時に取り込まれ、その後、徐々に崩壊して他の元素に変わっていきます(放射壊変)。この崩壊は一定の速度で起こるので、今残っている放射性元素の量と、それが崩壊して新しくできた元素の量の比をとれば、今から何年前(実際には何万年、何億年という単位ですが)に、この鉱物ができたのかを知ることができます。これらの鉱物は、あたかも鉱物ができた時にタイマーのスイッチを入れたかのように正確に時を刻んでおり、これは鉱物の起源を知る非常に有力な手がかりとなります。

各自で野外実習を行っていただくためのマニュアルです。

野外授業では、近くの河川敷などの野外へ出て、砂の採集と鑑定を行います。様々な種類の鉱物の分類や砂中の重鉱物の採集と分離方法についても学ぶことができます。授業で作成した鑑定記述や、持ち帰ったサンプルを実習後に研究所に持ち込み、詳細分析した砂データをウェブサイトに登録していきます。また、実習の成果について、参加者による発表の場を設けることを予定しています。

授業構成案
  • 自己紹介
  • 「Sand for Students」、「IODPコアとの関連」の説明
  • 岩石の観察と分類
  • 河川礫を見ながら周辺及び上流の地質の概説(後背地に関する解説)
  • 砂の採集(一般的な砂と椀かけによる重鉱物の採集)
  • (実習後)重鉱物の分析(モード組成及び鉱物組成分析)

など

実習コンテンツ

安全に実習を行うために

河川などフィールドで安全に砂を採取・分析するために必須の知識です。

はじめに

河川など野外で安全に砂を採取・分析するためには、事前に十分な知識をもち、周到に準備することが必要です。また、必ず学校の先生など大人と一緒に行うことが必要です。以下のウェブサイトに、安全に河川で活動するための大切な情報が掲載されています。野外授業参加者は必読です。

野外実習に適した服装
  • 長袖の上着・長ズボン(Gパンなど)
  • 動きやすい靴(運動靴やトレッキング用の靴など。サンダル・ハイヒールは厳禁です)
  • ウィンドブレーカーなどの上着(天候によっては肌寒い場合があります)
  • 小雨時のために上下レインウェアを持参(傘は両手が空かないため危険です)
  • 日差しが強い場合には帽子があれば便利
  • 手ぬぐいやハンドタオルは必須
  • 野外での活動のため、汚れても構わないものを着用
ファーストエイド・キット、救命用具の準備

どんなに気をつけていても、自然には思わぬ危険が潜んでいるものです。野外活動時には、虫に刺されたりケガなどをしたりすることもありますので、例えば、以下のようなものを用意しておくと応急処置が取れます。

ファーストエイド・キットの例
  • 消毒液
  • 日焼け止めクリーム
  • 虫除けスプレー
  • 滅菌ガーゼ
  • 救急絆創膏
  • 使い捨てカイロ
  • 瞬間冷却剤
  • 伸縮包帯
  • 三角巾
  • 毛抜き又は刺抜き
  • 綿棒
  • マスク
  • ビニール手袋
  • 風邪薬
  • 胃腸薬
  • 頭痛薬
  • 救命用ロープ
など

野外実習マニュアル

各自で野外実習を行っていただくためのマニュアルです。

野外活動後の事後学習の手引書としてご利用ください

事後学習の手引きをPDFファイルにまとめましたのでご利用ください。

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