隕石衝突によって生成されたと推定される球状粒子(スフェルール)

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最後の生物大量絶滅の原因か?隕石衝突の痕跡を南鳥島沖で発見!

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(文・立山 晃/フォトンクリエイト)

取材協力:

野崎達生
海洋機能利用部門 海底資源センター 地質地球化学グループ グループリーダー代理

3億年前から現在までに少なくとも11回、生物が大量絶滅するイベントがあったことが知られている。最後に起きた大量絶滅は約1160万年前だ。それ以前の10回については、隕石(いんせき)衝突や火成活動、あるいは酸素の欠乏した海が広がる海洋無酸素事変など、大量絶滅の原因となった可能性のあるイベントの痕跡が発見されている。しかし最後の大量絶滅イベントだけは原因が不明だった。

そのような中、野崎さんらは北西太平洋・南鳥島沖の深海堆積物から、隕石衝突に由来する堆積物層を発見。その年代を約1100万年前と推定した。年代測定の誤差の範囲内で時期が重なることから、海洋への隕石衝突が1160万年前の大量絶滅を引き起こした可能性がある。

3億年前から現在までの生物大量絶滅イベント(Rampino and Caldeira (2017) を一部改変)
年代 生物大量絶滅の原因
約1160万年前 不明
約3600万年前 隕石衝突
約6600万年前 隕石衝突、火成活動、海洋無酸素事変?
約9420万年前 火成活動、海洋無酸素事変
約1億1600万年前 火成活動、海洋無酸素事変
約1億4500万年前 隕石衝突
約1億8270万年前 火成活動、海洋無酸素事変
約2億130万年前 火成活動、海洋無酸素事変
約2億1500万年前 隕石衝突
約2億5220万年前 火成活動、海洋無酸素事変
約2億5980万年前 火成活動、海洋無酸素事変

今回の発見は、レアアース泥と呼ばれる海底鉱物資源の調査を主目的に、2014年に海洋地球研究船「みらい」のピストンコアラーという装置で採取したコア試料からもたらされた。

「コア試料中に、オスミウムという元素が異常に濃集した特異な層を見つけました。その異常に高いオスミウム濃度と低い同位体比(187Os/188Os)は、マントルを構成するかんらん岩の混入、あるいは宇宙起源物質の混入でしか説明できません」

そう語る野崎さんらは、さらに化学組成分析や顕微鏡観察を行い、その特異層に、宇宙起源の隕石由来物質と地球表層の堆積物が混在していることを明らかにした。「隕石衝突によって生成されたと推定される球状粒子やニッケルに富むスピネル(尖(せん) 晶(しょう)石)も多数含まれていました。私たちは隕石が衝突した証拠を発見したのです」

図
隕石衝突の痕跡を発見したコア試料の採取地点

陸上では、約1100万年前に隕石が衝突した跡(クレーター)は見つかっていないため、この隕石は深海底に衝突したと考えられる。深海底に衝突した隕石の痕跡は発見が難しく、約251万年前に南氷洋(南極海)に衝突したエルタニン(Eltanin)隕石しか知られていない。今回の発見は、深海底に衝突した隕石の2例目の痕跡である可能性が高い。

イリジウムという元素は、地球表層の地殻や堆積物にはわずかにしか含まれていないが、隕石衝突によって地球表層で高濃度に検出されるケースがある。今回、南鳥島沖で発見された堆積物層のイリジウム濃度は、恐竜絶滅を引き起こした6600万年前の隕石衝突に伴う堆積物層よりやや低いものの、カナダに直径約90kmのクレーターを形成し生物大量絶滅を引き起こした、約2億1500万年前の隕石衝突による堆積物層に匹敵する高い値だった。

「約1100万年前の隕石衝突は、かなり大規模だった可能性があります。今後は、ほかの海域のコア試料についても研究を行い、衝突した隕石のサイズや衝突地点を推定して、地球環境や生物に与えた影響などを詳しく解明していきたいと思います」

 

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