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研究者コラム

「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」(2021-2030)が始まりました

記事

地球環境部門
専門部長 安藤 健太郎

国連海洋科学の10年とは

2021年の年明けは、海洋科学にとって特別な年明けでした。
コロナ禍でもあり、世の中は、どこもかしこも普通の年明けではなかったのですが、海洋科学にとってはコロナ禍に加えて、さらに特別だ、という意味です。
海洋科学の関係者はどこかで耳にしたことがあるはずですが、2021年より「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(以下、国連海洋科学の10年)」が始まっています。国連海洋科学の10年は、2030年を達成目標とする17のSDGsに合わせて、特に「海の豊かさを守ろう」という目標を持つ14番目のSDG(SDG14)の達成のため、更に海からの気候変動等々の他の多くのSDGsへの貢献も目標として開始されたものです。
国連海洋科学の10年の計画作りは、2017年より国連教育科学文化機関(UENSCO、ユネスコ)の政府間海洋学委員会(Intergovernmental Oceanographic Committee, IOC)が準備機関として加盟国に呼びかけ専門家グループを立ち上げ、議論を積み重ねてきました。最終計画案が2020年12月に国連総会で承認され、早速2021年1月より実施という運びとなっています。

国連海洋科学の10年が掲げる7つの目標

国連海洋科学の10年には、これまで多くの先人が積み上げてきた海洋科学の成果をベースとする形で、達成するべき7つの目標が掲げられています。それらは、「きれいな海」「健全で回復力のある海」「予測できる海」「生産的な海」「安全な海」「万人に開かれた海」「夢のある魅力的な海」という7つです。言い換えれば、近年の海の状況が7つの目標を達成していないということでもあります。国連海洋科学の10年は海洋科学をベースに考える計画ですので、JAMSTECなどが実施してきた海洋科学ではまだまだ足りておらず、7つの目標に合わせて活動を更に強化する必要があるわけです。

科学者と海に関わる人々との協働プロジェクト

国連海洋科学の10年の活動の中で、目標の達成のために重要とされているのが、科学者が海に関係する方々(国連海洋科学の10年には、Ocean Stakeholderとして記載があり、ここでは以降、海洋利害関係者と表現します)と協働でプロジェクトを実施するということです。「海がきれいだ、健全だ、上手く予測できて助かった、とても生産的だ、安全だ、夢がある」などと思うのは、科学者の方よりむしろ、海洋利害関係者の方だからです。そのため、次の10年は、海洋科学者は、これまでの様に科学への限りない探究心を持って研究を行うことはもちろんですが、海洋利害関係者との協働も行い、目標達成の道筋も見つけていく事も求められます。

より幅広い海洋利害関係者を意識した、より幅広い研究活動を

この協働していくべき海洋利害関係者とは一体誰なのか? 例えば、JAMSTECの研究者を例にすると、これまでの考え方では、政策決定者としての文部科学省であり、外部資金の提供者が直接の海洋の利害関係者であり、そして、広く言えば納税者の皆さん全員であったとも言えます。しかしながら、今年から始まった海洋科学の10年の時代では、今後も政策決定者や外部資金提供者は、JAMSTECの研究者にとっては重要な海洋利害関係者であり続けますが、加えて、財団や民間企業の方々、海を生業にしている方々、一般市民や教育関係者なども直接の海洋利害関係者となります。海洋利害関係者はそれぞれで実施する研究の内容によって異なると思いますが、研究者には、上記のようなより幅広い海洋利害関係者を意識したより幅広い研究活動が求められていることになります。
最後に、ご参考として、7つの目標を中心に作成した日本語のパンフレットをJAMSTECのホームページより公開しておりますので、是非、御覧ください。

写真
持続可能な開発のための国連海洋科学の10年パンフレット[PDF:2.2MB]
所内セミナー画像
所内セミナー UN Decade Cafeでの一枚