がっつり深める
深海熱水系は「天然の発電所!」
生命の起源の解明や発電利用への期待
――深海熱水噴出域で発電が起きているのなら、感電が心配です。
たとえば人間が、1.5Vの乾電池のプラスとマイナスをつまんでも感電しません。深海熱水噴出域の電圧は最大でも600mVと乾電池の半分以下ほどなので、大丈夫です。
――この研究は、どういうことにつながるのですか?
生物やエネルギー分野の研究につながります。
いまのところ深海熱水噴出域の主な一次生産者は化学合成生物(写真3)と考えられています。熱水に含まれる硫化水素などの化学物質を微生物が利用して有機物を作り、その有機物を生物が摂取するという生態系です。その化学合成生物の生息範囲は、熱水の漂う範囲に限られていました。
一方で近年、電気を食べて有機物を合成する電気合成生物の存在が明らかになりつつあります。すなわち、今回、深海熱水噴出域で発電現象が起きているとわかったということは、そこに電気合成生物が生息する可能性もあるということです。発電は広範囲にわたるため、電気合成生物の量は莫大かもしれません。その電気合成生物を基盤にした生態系もあるかもしれません。深海熱水噴出域の生態系の考え方が、今回の結果によって一新される可能性が出てきました。
さらに、熱水噴出孔は地球で最初の生命の誕生した場所といわれています。その生命の誕生には電気反応が関係した可能性があり、この研究はその生命の誕生の解明を紐解く重要な手掛かりとなりえます。
――生物分野の研究にテコ入れが入るかもしれないのですね!
この研究は発電利用にもつながります。現在、自律型無人探査機(AUV)の多くは充電池で動いていて、探査を終えたら充電しなければなりません。電池の容量により探査範囲も変わります。しかし深海熱水噴出域の発電を利用して海底ステーションを構築すれば、AUVは船上に戻らず潜航したまま探査と充電を繰り返すことができるようになり、探査効率が上がります。とはいえ、その実現にはまだまだ課題が多く、まずは電力を持続的に取り出せる技術の開発が必要です。
――今後の発展が楽しみです。ところで、この研究は論文掲載雑誌の裏表紙を飾ったそうですね。
はい、編集者から「これは非常に優れた研究だから裏表紙にしよう。デザインを提供してくれないか」と打診をいただきました。同じ部署の宇野澤暢子さんに作ってもらったものが、こちらです(写真4)。
深海熱水系が「天然の発電所」であることをイメージしたもので、深海底下から湧き出る電気エネルギーを龍で表現しています。
――素敵な裏表紙ですね。表紙を飾ったお気持ちは?
うれしかったです!
――なんだか私もうれしいです。ありがとうございました。
調査全体の様子はこちらをご覧ください。