がっつり深める
新手法で、掘削データを使って岩盤強度を簡単に早く測定
掘削パラメータから岩盤強度を計算
――岩盤強度を求める新手法について聞かせてください。
掘削船では、先端にドリルビットと呼ばれる刃をつけたパイプを降ろし、ドリルビットを回転させながら海底下を掘ります。
このとき、同時にドリルビットの回転数やビットにかかる力、ビット荷重やビットの深さなどの「掘削パラメータ」(図5)が得られます。
新手法では、その掘削パラメータを変換式(図6)にあてはめて、“ドリルビットの刃にかかる力(トルク)”を、“ドリルビット1回転で何メートル進んだか”で割って、岩盤強度を求めます(図6)。掘削から岩盤強度を求めることからthe equivalent strength、EST(掘削等価強度;掘削の力から推定した強度、写真2)と呼ぶことにしました。
――掘削時にふつうに得られるデータから、岩盤強度を計算するというわけですね。
試料採取は不要、温度や圧力などの推定値はなく、掘削孔さえあけば誰でも簡単に求められます。
――とても便利ですね! どのようなきっかけで思いついたのですか?
2013年9月から2014年1月に行われた地球深部探査船「ちきゅう」(動画3)の研究航海に乗船したことがきっかけです。
航海の目的の1つは、東南海地震震源域の海溝側の端、水深1939mの海底「C0002」地点の掘削でした。掘削深度は、図7でいうとC0002地点からのびる黒線のあたりまで、海底下3000mに達します。
このとき私の役割は、掘削時のデータのクオリティをチェックするスタッフサイエンティストでした。ただ、C0002のような深い掘削は非常に困難です。私は「データは簡単には得られないだろう、何でもいいから使えるデータはないかな」という気持ちでした。そしてモニターに映し出される掘削パラメータを初めて目にして、「何かに使えるのでは」と思ったのです。
――掘削パラメータを「何かに使えるのでは」から、どのように岩盤強度へ?
掘削パラメータには、ドリルパイプを回転させる力「トルク」が含まれます。それで、頭の中で、マイナスドライバーを豆腐や鉄などに刺して回転させるわけです。ここにこういう力がかかるのだから、これを直せば強度になるな、と(図8)。ならば、変換式はこれ以外にあり得ない、と。これは寝ているときに思い付きました。神がおりてくるではありませんが。
そうして算出したESTを、過去に実験で得られた断続的な岩盤強度と比較し、ほぼ同じ値が出ることを確認しました。
そこで今度は、C0002で取得された掘削パラメータからESTを計算しました。