がっつり深める
人工知能を用いて熱帯低気圧のタマゴを高精度に検出する
「熱帯低気圧のタマゴ」と「タマゴではない」を識別する方法
――熱帯低気圧のタマゴを、どのように検出するのでしょうか。
杉山:まず、入力した雲画像が熱帯低気圧のタマゴか、タマゴではないかを識別する識別器をつくる必要があります。識別器は、画像の特徴を抽出する「畳み込み層」と画像サイズを小さくする「プーリング層」、抽出した特徴を結合する「全結合層」から構成されるのですが、それぞれの数や順番など、いろいろなパターンが考えられます。今回は、膨大な組み合わせの中から最適なパターンを、コンピュータを用いて探索しました。

松岡:今回、識別器を10個使いました。高精度な識別器1個の結果より、精度が低い複数の識別器の結果を組み合わせた方が、最終的な識別精度は上がることが知られているからです。
――識別器ができたら、次はどうするのですか?
松岡:識別器に、「熱帯低気圧とそのタマゴの雲画像」と「それ以外の雲画像」の特徴量を学習させます。「熱帯低気圧とそのタマゴ」としているのは、熱帯低気圧になった直後と、なる前のタマゴを識別するのは、ほぼ不可能だからです。雲画像は、JAMSTECと東京大学、理化学研究所が共同で開発した全球雲解像モデルNICAMのシミュレーションデータを使いました。1979年から2008年までの30年間について、全球での大気現象を再現したもので、1個1個の雲の一生を追跡できます。
1979年から1998年までの20年分のシミュレーションデータから、熱帯低気圧とそのタマゴの雲画像を5万枚、熱帯低気圧に発達しなかった雲画像を100万枚切り出しました。

松岡:熱帯低気圧とそのタマゴの雲画像5万枚を、10台の識別器に学習させます。熱帯低気圧に発達しなかった雲画像は5万枚ずつ10セット作成し、各識別器に学習させます。これで、少しずつ性質の違う識別器ができました。
